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第106話『迫る敵影』

 マーダータイガーの奇襲をうけたベルガーズの救援に向かうウルフクラウン。


「早いな、アクセルグリープを全開にして、前衛はさらに突撃ブースターまで使ってるな」


 レーダーに映るウルフクラウンの反応がとてつもない速さで移動している。グループが二つに別れたのでウルフバンカーF型がブースターを使って先行したんだろう。


「これならすぐに救援に駆けつけられる、信じられんが」


 マーダータイガー二十匹、ウルフクラウンなら討伐可能な戦力。

 しかし、ガーキマイラはいったいどこにいるんだ。


「マスター、蒼天に近づく魔力反応があります。魔物の群れと推測」

「どんな魔物かわかるか」

「距離があり魔力パターンが読み取れないため識別不能です」


 蒼天はここから一キロほど離れた場所にいる。

 魔物の群れはそんな蒼天へまっすぐ接近してきていた。これはもう戦闘になる。そう思ったんだけど。


「蒼天の連中はどうして反応しないんだ」


 レーダー上に映っている点だけで判断しているので正確にはわからないけど、蒼天と魔物の群れとの距離は二十メートルをきっている。見えていてもおかしくない距離だと言うのに、蒼天の動きはいまだにゆっくりと前に進んでいるだけ、まったく魔物に気が付いていないように見える。


 距離が十メートル、八メートル、五メートルと接近すれど蒼天の動きは変わらない。


「蒼天チームと魔物の群れの位置が重なりました」


 距離がゼロメートル、それでも動きが変わらない、戦闘になれば地図上の魔力反応は激しく動き回るはずだ。


「魔物の群れ、蒼天チームを通過。魔物の群れは進路を南門へ変えました。こちらへ向かってきます」

「なにやってるんだよ、どうして気が付かない、もしかして飛行型の魔物か」


 ガーキマイラの配下には四足鳥ガバドンがいたはず。だが俺の推理はすぐさまファーに否定された。


「それは違うと思うは二代目マスター、ガバドンにしては動きが遅い、それに空を飛んでいればここからでも確認できるはず」


 肉眼では見えなくてもアクティブのバイザーには望遠機能がある。遮蔽物のない一キロ先の空なら十分確認できるはず。


「飛行型魔物、確認できません」


 飛翔ユニットを使って飛び上がったムギが探すが、見つけることはできなかった。


「群れはなおも接近、距離は五百メートル」

「各班に知らせろ、バリスタ最終確認、迎撃用意!!」


 ベテルドさんが警戒を呼びかける。元々このような事態のために用意されていた迎撃網だ。すぐに各班が臨戦態勢に入った。

 いち早く察知していた俺たちは先頭に位置取り待ち構える。


「なおも接近、距離二百メートル」


 移動速度は一定のまま、まるで障害物などないように一直線に向かってきている。

 距離はさらに縮まっていく、百メートル、五十メートル。

 MMライフルを構えスコープをのぞき込む、木々が邪魔で確認できないけど間違いなく近づいてきている。何度も魔物と遭遇してきたからか魔物が発する気配のようなモノを肌で感じられるようになってきた。


 間違いなく何かがやってきてると確信できる。それはベテルドさん率いる守備隊もムギたちベルノヴァも同じで、全員の緊張感も上がっていく。


 この気配に蒼天は気が付かなかったのか。


「シルヴィア識別は、魔物の正体はわかったか」

「申し訳ありませんマスター、ノイズが酷く魔力パターンが上手く読み取れません」


 索敵にノイズだと、もしかして妨害系の能力を持っている魔物なのか。

 シルヴィアがいつでもグライダーナイフを発射できる態勢を取りショットガンを構え、ファーはMMライフルと魔導キャノンの銃口を前方へ向ける。


「いる、何かいる」

「ムギ、あそこに運んで」

「わかったわ」


 ミケは二本のアウルソードを抜き放ち、ムギは運んでくれと頼むクロエを抱えると飛翔ユニットを使い城壁の上へ跳躍、城壁へあがったクロエはスナイパーライフルを構え狙撃体勢を取り、ムギはウィンドスカイシールドと飛翔ユニットを合体させ空へと飛び上がり上空からの警戒にあたる。


 これで迎撃態勢は万全だ、ガーキマイラが来たとしても瞬殺できる布陣なはずだけど、正体が不明なのがわずかな恐怖を与えてくる。


 距離は二十メートル、十メートル、もう姿が見えてもいいはずだ。



「魔物、姿は見えません!!」


 上空のムギの報告で、魔物が空を飛んできていないことが確定した。


「距離は五メートル、三メートル、二、一、ゼロ」


 レーダー上では俺たちの位置と魔物の群れが重なった。だが姿は見えない。レーダーの反応も安定しない、目前を指したり、上空を指したりといないとわかっている場所を示してくる。


 一番前にいたミケのヘッドギアの隙間から伸びた耳がピクリと動いた。


「下だ!!」


 ミケの警告と同時に土が盛り上がり、赤銅色の長い物体が飛び出してくる。とっさに構えた盾とぶつかり、チェーンソーで切り付けられたような火花と衝撃、さらに足に何かがしがみ付いてきた。


 ここでようやく、襲ってきた魔物の姿を捕らえられた。相手は長い顎鋏を持つムカデのような魔物、体長は二メートル近くあり、ホバーブーツをその顎鋏で締め付けていた。コーティングが剥がれ装甲にも亀裂が入っていく。


「このやろッ!」


 俺は足のムカデ魔物を盾で殴り飛ばしMMライフルをフルオートで叩きこむ。


「こいつら」


 倒すことはできたけど照準をずらされた。ロックオンができなかった。逃げ場のないほど銃弾を撃ち込んだからなんとかなったけど、これではすぐに弾切れを起こしてしまう。


「姿からの画像検索にヒット、討伐レベル81鋏百足ニドルワーム、隠形スキルを持っています」


 シルヴィアが戦闘しながら検索結果を伝えてくれる。

 隠形スキル、身を隠す系のスキルか、レーダーにうまく映らなかったり照準がずらされたりするのは、これが原因だな。

 万全の迎撃体制だと思っていたけど、大混乱になってしまった。


 長時間噛みつかれなければアクティブは耐えられるけど、支給品である革鎧を装備している警備隊はそうはいかない。ファーやムギは接近戦で警備隊への援護をしているけどニドルワームの数が多い、いったい何匹いるんだ。


 乱戦になってしまい誤射が怖くて銃が使えない。城壁にいるクロエも照準が定まらず、離れた場所に出現したニドルワームを狙っているが命中精度が低くい、このままではまずい、何か打開策は、レーダーに映る影と実物の場所が合わない、これならレーダー系を全部切って肉眼で見た方が良く見える。


「まてよ、透明で見えないんじゃなくて、能力で照準をずらされているなら、能力で対抗すればいいじゃないか」

「マスター乗ってください」


 俺が打開策を思い付き、作業する場所と時間が欲しいと願ったらシルヴィアがすかさずスカイシールドをこちらに飛ばしてくれた。


「最高だシルヴィア」

「光栄です」


 相手は地面の下から来る。だったら飛び上がってしまえば被害は受けない。守備隊に負傷者が出ているので時間はかけられない、すぐに作業をおわらせないと、俺は上級魔結晶を取りだした。


「『付加・看破』」


 良く見えないなら、良く見えるようにすればいい。相手が隠形するならこっちは看破だ。完成した看破の魔結晶をサーチバイザーにセットすると、今まで正確に捉えられなかったニドルワームの位置がしっかりとわかるようになった。


「シルバーファクトリーおよびベルノヴァ全機にデータリンク」


 全機に看破の魔結晶をセットする必要はない。俺のレーダーを全ての機体に送ってあげれば看破はいきわたる。


「さぁ反撃開始だ」


 構えたMMライフルのスコープにははっきりとロックオンの文字が表示された。

評価やブックマーク、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 劇場版パトレイバー2か! 蒼天さんは噛ませ犬にしかなれないなんて。
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