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「第十一章」「日菜乃は本当に走りたい?(2)」


こんなにも責任が必要で、こんなにも技術が必要で、手間暇もお金もかかる世界。

そんな中の真っ只中に居た叶恋が、あんなに側いにた日菜乃ですら、何もその大変さを解っていなかった。


ネットには無責任で無謀で、テンションと目立ちたさと勢いで、何も考えずにバイクに乗っている人たちの動画も沢山あった。

そんな人達の顔には「自分は大丈夫」という何の根拠のない自信だけが張り付いていた。




叶恋は違う。



彼女がバイクに憧れたのは小学校に入る前からだ。

小学、中学を経過する中で、バイクがどれだけ危険で危ないものかは、十分に調べていただろう。


だからこそ、こまめなメンテナンスと、防具と、保険に貴重なお金と時間をつぎ込んでいたのだ。

模範ライダーのような走り方もそのためだろう。


事故を起こせば全ての日常が狂ってしまう世界。

車両を免許を持って運転するというのは、非常にリスクの高い行動だ。

多くの人間が、その当事者になるまで夢の中を歩いているように、無関心で無知で、自分に関わりの無い世界のように錯覚した夢を見ているだけだ。



叶恋は、そんな連中とは違う。



わたしもそんな人間にはなりたくない。




叶恋とは運動神経も反射神経も判断力も、比べるべくもない自分が、バイクになど乗ろうという行為自体が「罪」なのではないか。


心の何処かで罪悪感にも似た葛藤が、日菜乃の中では渦巻いていた。

自分の体重を含めると200キロを超えるような重さのものを、自分に扱えるわけがない。




(きっと無理だ。断ればすむことだ。精神的にも金銭的にも私ではとても持ち堪えることは出来ないだろう。)




すべての障害が何事もなく排除されて、乗ることになったとしても、一体どれだけ乗ると言うのだろう。

維持費を考えるなら、たまにしか出かけない日菜乃にしてみれば、電車やバスを使ったほうが数倍楽で安上がりだろう。


結局は、ろくに乗らずにアールさんは埃を被ってしまうのではないか。





そんな考えしか浮かばなかった。




「どうあってもバイクに乗りたい。」

そんな断固たる決意も固まりそうにない自分が、両親の説得などできる訳もない。

叶恋が被害者とは言え、バイク事故で命を失ったばかりのこんな時期に。







「ごめんなさい・・・・おばあさん。・・・・・私にはやっぱり無理です。」





日菜乃は窓辺で崩れ落ちるように座り込んだ。







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