「第十二章」「貴方が乗らないなら私が乗るわ」
日菜乃が、自分の判断を叶恋のおばあさんに泣きながら伝えたのは、叶恋が亡くなってから49日目。
遺骨のお墓への納骨が行われるのに参列した朝のことだった。
「そう決めたなら、それでええんよ。」
やさしくおばあさんは日菜乃を抱きしめた。
「悪かったね。色んな責任を押してつけて。」
「本当に・・・ごめんなさい。」
今にも泣きそうな声で日菜乃は答えた。
「ええんよ。あんたの顔見たら、どんだけ真剣に悩み抜いてくれたかようわかる。無理なこと言ってすまんかったのう。あんたは何も悪くない。悪くないんや。謝ったらあかんで。」
抱擁をとかれて、日菜乃は少し涙を拭った。
「アールさんはどうなるんでしょうか・・・・・・・。」
消えそうな声で日菜乃は訪ねた。
断った自分に。逃げた自分に。聞ける質問ではなかったからだ。
「いろいろ考えたんやけど、おいとくとな、思い出すんや叶恋のこと。それで余計に寂しくなってしまう。わたしも、それにあんたもな。そやから処分することにしたわ。」
それを聞いて日菜乃は更にうつむいてしまった。
「そんな話は聞いていないし、まったくもって許容できないわ。」
突然、まだ、まばらにしか集まっていない参列者の中から、周囲に響き渡るほどの凛とした声が響いた。
その声に驚いた日菜乃とおばあさんと、その他の参列者が声の主を凝視した。
人をかき分けて、一人の少女が現れる。
長身で長い黒髪。切れ長の鋭い目。端正なお世辞抜きに美人の顔立ち。
周囲の県下で、最も有名なお嬢様学校である私立桜花女子高等学校の制服。
まとっている雰囲気は、日菜乃の学校の生徒会長以上だった。
「貴方が、成瀬日菜乃さんかしら。」
1メートルも離れていない距離まで近寄った少女が聞いた。
「そ、そうです。」
親の仇を見るような視線に、日菜乃はどもってしまった。
その視線は、日菜乃からおばあさんに移された。
「叶恋のおばあさま。以前にあのバイクをお譲り頂けませんか、とお伺いしたときに、叶恋の幼いときからの大親友が乗ることになるかも知れないから、譲るならその子に渡す。というお話しでしたよね。」
おばあさんは困ったように答えた。
「そのとおりや。」
「その当人が、それを断ったということは、バイクの行き先は未定になった。という理解でよろしいでしょうか。」
「そういうことやな。」
「日菜乃さん。確認いたしますが、貴方は本気でこのバイクに乗る気がないんですか。」
そう言って、少女はカバーを被ったアールさんを指さした。
日菜乃はなにも答えられなかった。
「わかりましたわ。日菜乃さん。」
さらに大きく厳しい声で少女は言い放った。
「貴方が乗らないと仰るなら、このバイクには私が乗るわ。」




