① 18歳の彼
アノ時(第15巻の⑲)以来、18歳になったサン・ジェルマンは、いよいよ精力的にタイムトラベルに取り組んでいた。
また、彼はたった1年で、1800年のアレッサンドロ・ボルタの発明品を改造し、持ち運び可能な、大容量の蓄電池を考案した。もちろん、歴史の流れに配慮して、その技術は一切公開しなかった。
彼はそんな調子で、化学や物理の知識を総動員し、本来彼の生きている時代にそぐわない、オーバーテクノロジーを、まるで何かに取り憑かれたように、次々に生み出していった。それはまるで、あの"真田雪子"の面影を、必死に振り払おうとしているかのようにも見えた。
その日も彼は、スペイン国内のどこか、とある屋敷の自室の中で、自分の興味を引く人物と場所を選んで、タイムトラベルの準備をしていた。しかし突然、その部屋に異変が起こったのだ。
なんと、目の前に忽然と、黄色いワンピースの衣装を着た、見たことも無い人物が現れたのだ!それは、黒い髪を肩より上で切りそろえた、東洋人の若い女だった。歳は自分と同じか、少し上だろうか?東洋人は若く見えるから、定かではない。
「こんにちは(ブエナスタルデス)。」
その女は同時翻訳機を使って、スペイン語で話し始めた。
しかし彼は、かつて雪子から、日本語を学んでいたので、すぐに日本語でそれに応じた。
「大丈夫ですよ、日本語で。ひょっとしてアナタは、雪子さんのお友だちですか?」
コレには、その女も驚いたようだった。
そして「流石は私のサン・ジェルマンね。」と言って笑った。
「私の名は京子。雪子の……仲間よ。」
(うん、ウソでは無いわよね?)京子は自問自答しながら答えた。
「こんにちは、キョウコさん。今日はどんなご用件でいらしたのですか?」
サン・ジェルマン青年は、ジェントルな態度で尋ねた。
「雪子に、その後のアナタの様子を見て来るように、頼まれたのよ。」
(うん、コレは、真っ赤なウソだわ。)京子は内心、苦笑する。
「……そうなんですね。」
18歳のサン・ジェルマンは、素直に納得する。
何しろ彼は、雪子の熱烈な信者なのだ。
「ところでアナタ、今からどこかへ、出かけるところだったのかしら?何やら地図を広げて、旅の準備中に見えたけど……。」
「ええ、そうなんです。以前、雪子さんからお勧めされた、歴史的な注目座標が、この地図に記入されいるんですよ。今それを、選択したところでした。」




