⑫エピローグ
◆ 《白翼の影》
——ショッカープロトタイプとの戦いから、二週間後。
花屋 《Bloody Flower》 は、今日も営業していた。
割れた窓は修理され、戦闘で壊れた棚も新調された。ただし妹が勝手に追加した、
「元・秘密組織関係者も安心! 防弾仕様フラワーショップ!」
というPOPだけは、どうしても外せなかった。
兄「風評被害って言葉知ってるか?」妹「差別良くない」兄「方向性がおかしいんだよ」
店の奥では、澪が静かに花を整えている。以前より、よく笑うようになった。
花に水をやる仕草も、客と話す時の目も、もう「黒翼」ではない。
——少なくとも、表向きは。
◆ だが、“戦い”は終わっていなかった
その日の閉店後。
澪は店の照明を落としながら、ふと足を止めた。
……静かすぎる。
彼女の感覚が警鐘を鳴らす。
澪「……誰?」
返事はない。
だが次の瞬間——
カラン……
閉店したはずの入口ベルが、静かに鳴った。
そこに立っていたのは、白いコートの人物。
月明かりを背に、ゆっくりと店へ入ってくる。
白い手袋。白いブーツ。そして——
“白い翼”。
◆ 新たな幹部 —《白翼》
その女は、澪を見るなり、静かに微笑んだ。
「久しぶりね。“失敗作”」
空気が凍る。
澪の瞳から、一瞬で温度が消えた。
澪「……《白翼》」
奥で伝票整理をしていた兄が、即座に立ち上がる。
兄「知り合いか」
白翼は、兄を見る。その視線は、まるで解剖対象を見る研究者のようだった。
「ええ。——正確には、“蜂女以前の完成体”よ」
妹、奥から顔を出す。
妹「また翼増えたああああああああ!?」
◆ 白翼の正体
白翼は、ショッカーの“感情制御計画”の最高傑作。
感情を持ちながら、完全に制御できる存在。
怒りも悲しみも愛情も、すべてを「任務遂行のための道具」として扱える。
つまり——
“感情を得て変わった澪”とは、正反対の存在。
◆ 白翼、澪へ告げる
白翼「あなたは間違えた。感情を“生きる理由”にした。本来それは、“利用するもの”なのに」
澪は静かに兄の前へ立つ。
澪「……違う。感情は、誰かと一緒に生きるためのものだよ」
白翼は、ほんの少しだけ目を細めた。
「……やはり危険ね。“恋”なんてバグに感染した個体は」
妹「恋をウイルス扱いすんなあああああ!!!」
◆ 不穏な宣告
白翼は店内を見回す。
花。光。笑い声。
そして、最後に——澪を見る。
「近いうちに、“回収部隊”が来るわ。今度はショッカーとは違う。本部直属の、《天使級》」
兄「……天使級?」
白翼は静かに扉へ向かう。
「その時、あなたは選ぶことになる。“花屋”として生きるか——それとも、“蜂女”として誰かを守るか」
そして去り際、白翼は振り返らずに呟いた。
「……でも少しだけ、羨ましかったわ。あなたのその“笑い方”」
カラン——
ベルが鳴り、白翼は夜へ消えた。
◆ 店内・静寂
妹「……えーっと、まとめます」
指を折りながら言う。
「白い翼のヤバい女が来たショッカー本部まだ健在次は“天使級”とかいうもっとヤバいの来るあと彼女さん、ちょっとモテてる」
兄「最後いらねぇだろ」
澪は静かに窓の外を見る。
その横顔は、花屋の店員のものだった。
だけど——風が吹いた瞬間だけ、その背に“黒い翼の影”が揺れた。




