第38話 休憩時間
まずはデミオーク1体を、シャルの風刃魔法とクリスの氷弾魔法で倒して、死骸を収納。
そこで俺は、まだ説明していなかった事に気付いた。
「そういえばデミオークは、食材として活用出来る。だから倒す際は、出来るだけ頭を狙ってくれ。風刃魔法なら首を狙うのも効果的だ」
魔法は飛んでいく位置を強く意識すれば、そのとおりの場所へ飛ぶ。
だから相手が急な動きで避けたりしない限り、まず命中する。
そして第六階層くらいまでは、魔法を避けるような敵は出ない。
「わかりました」
「わかった。なら今倒した魔物は、売れない?」
「これでも、使えない部位は少ない。特に背中側や両脚の肉と皮は無傷だ。そこそこいい値段で買い取って貰えるだろう。
普通に倒した場合はデミオークの胴体に、槍や剣で幾つも穴が空いている。戦士が魔法を使わず倒す場合は、よほどの腕がない限り、攻撃が当たりやすい胴体を狙うから。それにくらべれば、数段いい状態だ」
今回のデミオークは首から左腕付け根まで、シャルの風刃による切傷がついて、首部分から大量出血。
更にクリスの氷弾魔法によって、心臓まで穴が空いている。
死因は怪我によるショックと、出血による失血というところだろう。
あとクリス、最年長だからか魔法に慣れていて魔力もあるためか、狙いと威力が初心者の域を超えている。
今回も実は、クリスの氷弾魔法だけで倒せただろう。
シャルの訓練を兼ねているから、クリスだけで倒せとはしないけれど。
「良かった」
「それじゃ先へと向かう」
歩くこと概ね5分程度で、次に討伐を行う袋小路の入口に到着だ。
「討伐をする際は、ここの分岐にさっきのデミオークの死骸を置いて、通路のこの先で魔物が近づくのを待つ。でもまずはこの通路の奥まで行って、安全かどうかを確認しよう。奥まで行ったら、アンジェ以外はこの分岐が見える場所に陣取って、討伐開始だ。アンジュは奥から俺達を追い越さない範囲で、薬草採取を頼む」
実は俺の遠見魔法で、魔物がいないことは確認出来ている。
だからすぐそこに陣取って、狩りを始めることも可能だ。
ただこういった場所での行動は、基本通りにやった方がいい。
冒険者として初心者の、クリスやシャル、アンジェに基本を身につけて貰うためにも。
「わかりました」
「わかった」
「わかったのですよ」
皆さん了解した様なので。
「それでは奥へ進もう」
俺は歩き出す。
◇◇◇
2つめの袋小路の薬草を採取し終わって撤収した後。
3つめの袋小路まで行って、奥まで確認した後、分岐が見えるところまで戻って。
「多少暗くて環境が良くないが、ここで休憩する。分岐の左右は俺が魔法で警戒するから、心配はいらない」
ここから分岐まで50m以上ある。
遠見魔法で分岐の左右を警戒して、魔物を発見してから魔法を準備しても、デミオーク程度なら充分間に合う。
今の俺なら、氷弾魔法の連射でデミオークを倒せる。
今日、2つめの袋小路で10匹ほど倒して確認したから、間違いない。
休憩ということで、テーブルと椅子を出す。
テーブルはサタナテスを襲撃した際、クリスやシャルごと収納してしまったものだ。
捨てるのはもったいない気がしたので収納に入れたままだが、こういう時は便利でいい。
なんて思ったところで、アンジェがため息をついた。
「何か問題があったか?」
「問題は何もないのです。ただ私が話に聞いている迷宮での魔物討伐と、あまりに違いすぎて調子が狂うのです」
なるほど。
「確かにテーブルと椅子を持ち歩くのは、普通ではないかもしれない。でもこれは、俺が収納魔法を使えるからだ。それ以上の意味は特にない」
アンジェ、またため息をつきやがった。
「それもまあ、あるのですが……。まあ、取りあえずは休憩して飯を食べるのが優先なのですよ」
何だろう。
そう思いつつも、取りあえずケバブサンドを1人2個ずつ、あとコップに魔法で水と氷を入れて、テーブル上に並べて、食事開始。
全員ガシガシとがっついた後。
「うむうむ、やっぱりこのケバブサンドは、リッチな味がするのです。野菜の多さが肉を引き立てていて、美味いのです」
「確かに美味しいですし、ボリュームがありますね。あと野菜が美味しいです」
「同感」
物そのものはクレープくらいの薄焼きの、でも気泡が入ったパンで、肉と野菜を挟み、ソースをかけたものだ。
肉は焼いた物を削ぎ切りしたもの。
つまりは細切れの更に小さいのという感じ。
ただこれが、確かに美味しい。
野菜は生野菜の他、揚げたものや炒めたものも入っている。
これが肉と、やや辛めのソースとよくあうのだ。
「確かに美味いな、これ」
「美味いけれど、ちょっと高いのが難点なのです。だから貧乏冒険者は常食出来ないのです」
次いで、もう一つの『生野菜、フレッシュチーズ』の方へ。
食べてみて、理解した。
あっちがボリューム系なら、こっちはさっぱり系だ。
もちろん肉そのものは同じだから、それなりのボリュームはある。
しかし生野菜とフレッシュチーズのおかげで、爽やかさと軽い酸味がくわわって、全体としてはさっぱり系。
確かに最初のを2個食べると、少々脂や油が強すぎるだろう。
「こっちはさっぱり系なんですね。組み合わせとして、ちょうどいいです」
クリスの言う通りだ。
「ああ。アンジェのお勧め通りにして正解だった」
「これについては、冒険者の評判そのままなのですよ。実際に食べて比べるほど、私の懐は豊かではなかったですから」
アンジェはそう言って、そして俺の方を見る。
「さて、さっきの続きなのです。フォルティの魔物討伐は、冒険者らしくないというか、違和感を覚えるのです。これはきっと、私の気のせいではないのです」




