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俺は魔人であいつは勇者で  作者: ほず
第一章 発端編
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第7話 そいつは勇者で小さくて

「シャルー!!」


 そう叫びながら部屋に飛び込んできたは、深い青色のショートカットの髪と同じ色の瞳を持った少女で、シャルと比べて胸はちいさ……もとい、控えめである。

 服装は上の服の丈が妙に短くへそが出ていて、下もかなり短いズボンをはいている。


「エ、エルザ!?」


 おそらく知り合いなのだろうが、なぜだろうこのエルザという少女泣いている、泣いて喜ぶほど久しぶりの再会だったのだろうか?

 エルザは泣き顔でそのままシャルに抱き着くが、身長差がすごいな俺が175くらいでシャルと15センチくらいの差で今エルザとシャルの差が20センチくらいだから……140!? 


「エルザ? どうして泣いてるの?」

「だって、シャルが魔王を倒しに行ったって聞いて……」

「うん、行ってきたよ?」

「魔物にやられちゃったんじゃないかって……」

「そ、そこら辺の魔物なんかにやれれるわけないじゃない」

「だって……シャル弱いから……」


 ああ、確かにこんなのが魔王倒しに行ったって聞いたら、死ぬんじゃないかって思うよな。しかも帰りが遅かったんだろうなきっと。

 シャルも苦笑いしかできないって感じだな。

 それからしばらくは、シャルがエルザを泣き止ませようと必死だった。


 なんとかエルザは泣き止み、周りを見て状況が理解できたのかジャイルさんに頭を下げる。


「す、すみませんジャイルさん」

「気にするな、シャルのことを心配してくれてたのだろう?」


 次に俺たちの方を向くが、首をかしげる。

 しょうがない、自己紹介ぐらいはしておこう。


「旅の道中でそこのシャルと出会いましたのでここまで一緒をしたもので、自分がカイン、こちらの者がソルドです」


 それを聞いてエルザは何かを理解したようだ。


「じゃあ、あなたたちのおかげでシャルは……」


 その続きを言おうとした時シャルがエルザの口を塞ぐ。

 たぶん続きは『生きて帰ってこれた』とかだろうが、そんなことを言われたら命の恩人として、もてなされてしまう。もっとも、シャルは単に自分の情けない話を、親に聞かれたくなかっただけだろうが、ナイス判断だ。

 ちょうどよく話もそれた、今なら逃げれる。


「では、我々はこのあたりで」


 今だとばかりに俺たちは歩き出そうとするが、前に進まない、いや正確には前に進めない、エルザが俺のマントをつかみやがったせいで、フードが脱げそうである。俺は必至でフードを押さえるが、このままではマントが破ける、この小娘、小さいなりしてなんて力だ。


「エルザさん、離していただけないかな?」

「せっかくなんだから、うちに泊まってきなよ」


 こいつもか、こいつも俺たちをこの死地にとどまらせようとするのか。


「いえ、迷惑でしょうしいいですよ」

「大丈夫、家は宿屋だから部屋はたくさんあるよ」


 そっちが大丈夫でも、こっちが大丈夫じゃないんだよ。

 あ、ソルドが逃げようとしてる。


「ソルド、お前」

「カインお前のことは忘れない」


 そう言って、扉を開けようとしたソルドの腕をジャイルさんが掴む。


「何も、そう急ぐことはないではないですか」


 ざまぁみろ、お前だけ逃げれると思うなよ。


 結局俺たちは逃げることなどできる訳もなく、エルザの宿に厄介になることになった。


 そして今俺たちの前を元気に歩く小娘の後ろを、うなだれながら歩く。


「それで、なんでシャルまでいるんだ?」


 うなだれている俺たち二人の横を何とも気まずそうな顔でシャルが歩く。


「あんたたちの正体がばれたら、私もタダじゃすまないのよ」


 なるほど、俺が死ぬときはこいつも道連れなわけだな。というかソルドがさっきから無口だとおもったらなんか死んだ魚みたいな目してるよ。


「それであの小娘はなんなんだよ」

「私の親友よ」

「親友にしては随分、歳が離れてるんだな」

「何言ってるの?エルザは私と同い年よ」


 俺が驚きの表情を向けると、あきれたような顔でシャルがため息を吐く。


「エルザは、背はちいさいけど、実力は私なんかと比べ物にならないくらいに強いわよ」

「嘘だろ?」

「本当よ」


 あの、ちびっ子がそんなに強いのか? 確かにさっきの力はすごかったが。


「ほら、三人とも早くー」


 笑いながら手を振るエルザは、とてもそんな風には見えなかった。


 街の一番下の段まで下りてきた俺たち、下に降りてきたほうが街は活気があり、店も多いようだ。

 俺たちの前を歩いていたエルザが立ち止まり、こちらに振り向く。


「ここが私の家だよ、少し待っててね、お母さんに話して来るから」


 そういって、店の中にエルザが消えて行った。

 どうやら一階は酒場になっているようで、まだ昼間だというのに騒がしい。


 雰囲気はシャルの家に比べれば豪華さはないが、俺たちにとってはこれぐらいのほうが気楽で、ちょうどいい。


「入ってきていいよー」


 そういいながら、エルザは勢いよく扉を開け、店から飛び出してきて俺たちのことを店へと入るように促すように、後ろから押してくる。

 俺たちはエルザに背中を押されながら、店の中へと入った。


 店の中には、酒を片手に騒いでいる人々の声が響きわたっている。普段ならば俺もその輪に加わり酒を飲むところだが、敵の中で酒を飲めるほど俺の精神は太くはない。取り合えず酒場は無視して、エルザの先導に従い二階へ上がる。


「カインとソルドはこの部屋を使って」

「わかった」


 俺たちがそう返事をすると、今度はシャルの方を向く


「シャルは私の部屋でいいよね?」

「うん、それじゃあ二人ともまたね」

「ああ」


 そう言って部屋から出ていく二人を確認して俺たちは、ベッドに倒れこむ。


「なあ、ソルド、俺もう疲れたよ」

「もう、帰りたい……」


 実際のところ、そんな簡単にばれるとは思っていないが、それでも敵地にとどまるなんてしたくない。

 とりあえず、風呂にでも入ろうと思いマントを外し放り投げた時、扉が勢いよく開き、エルザが飛び込んでくる。


「言い忘れてたけど、晩御飯は6時からだよー」

「お、おおそうか」

「ねえ、なんでそんな格好してるの?」


 今、俺は頭から布団にもぐりこみ、体だけがベッドの外に飛び出している状況である、何とも情けない格好だがマントは、もう手の届くところにはないのでこのまま動くわけにはいかない。


「そう言えば、ずっとフードで顔隠してたよねー」

「す、少し見られたくないからな」

「ふーん、気になるなー」


 やばい、こういう反応をした子供は大抵……


「えいっ!」

「ちょっと、やめろ」


 エルザは、布団を剥ぎ取ろうとしてくるが、事前に予想し備えていたのでなんとか耐える。


「いいじゃない、隠し事はいけないよー」


 やばい、エルザって本当に力強い、このままじゃ……

 『もう、無理だ』そう思ったその時、突如として爆音が響き渡った。

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