第76話 王都に出発 01
おまたせしてすいません。
まだ調子が悪く、短いですがとりあえずここまでを投稿します。
ヴィシ・ブイヨン子爵が伯爵へ昇爵するため、王都へ向かう日がやって来た。
当初、公都へ同行する予定なのは、ブイヨン子爵、ケン、バルガス、ブイヨン子爵の妻であるアクア、そして冒険者ギルドで募った護衛パーティーだ。
サオリとリナは、まだパクとモグが人族の言葉を覚えている途中ということもあり、コトコト村で留守番をすることになっていた。
『ケン、いってらっしゃい!』
『パパ、お土産忘れないでね!』
『サオリ、皆のことを頼んだぞ。リナはコトコト村の防衛な!』
『ケンさん、行ってらっしゃいませ』
『パパ、いってらっしゃ~い!』
『パクもモグも、人族の言葉が大分上手くなったな。帰ってくる頃にはペラペラになってるかもな』
三好家で別れの挨拶を済ませたケンは、ブイヨン子爵邸へと向かった。
子爵邸の前には豪華な馬車が並び、すでにブイヨン子爵たちが出発の準備を進めている。
『すいませ~ん! ……子爵様、遅くなりました』
『やあ、ケンさん。まだ馬車の準備に少し時間がかかるから、もう少し待ってくれるかい』
『はい、分かりました』
『そうだ、まだ紹介していなかったね。彼女は僕の妻、アクアだよ』
『アクア様ですね。俺は魔道具師をしているケンといいます。以後、お見知りおきを』
『あら~♡ あなたがケン? 私はアクアよ。うふっ、なかなか若くていい男じゃない。これから、よ・ろ・し・く♡』
『……子爵様?』
『ああ、アクアはいつもこんな感じだから気にしなくていいよ。アクア、ケンさんはこう見えても僕の一つ年上で、バルガスと同い年なんだ』
『えっ? えぇ~! マジで年齢詐欺でしょ! この顔で、あのむさ苦しいバルガスと同じ年?』
『おい! 誰がむさ苦しい顔だよ!』
『あら、来たのね。むさ苦しい顔なんて、あなた以外にいないでしょ。バ・ル・ガ・ス♡』
『くぁ~! いちいち腹立つな! おいケン、アクアの言ってること気にしてたらキリがないぞ!』
『ハハハ。二人とも仲がいいねぇ』
『『全然よくない!』』
険悪になりそうな空気を察し、ケンは話題を変えることにした。
『バルガスさん! 皆さんお知り合いなんですか?』
『ああ。俺とヴィシが昔、冒険者パーティーだったって話はしただろ?』
『ええ、聞いてます』
『俺が盾役で、ヴィシがアタッカー。後衛の魔術師がアクアだったんだ』
『僕の剣とアクアの氷結魔法は、中々いいコンビネーションだったんだよ』
『ってことは、三人パーティーだったんですか?』
『いや、僕たちは四人パーティーだったよ。もう一人がカミラさんだ』
『へぇ、夫婦二組でパーティーだったんですね』
『違うわよ。結成した時は、私たちまだ付き合ってすらいなかったのよ。バルガス達は結婚してたけど♡』
『師匠たちのパーティーが解散することになったから、俺がカミラにプロポーズして結婚したんだ。でも、まだカミラが冒険者を続けたいって言うから師匠に頼んで、息子のヴィシと、A級パーティーだったがリーダーの怪我で解散したアクアをスカウトして、新しくパーティーを組んだんだ』
『それから四人で活動していたけど、カミラさんが妊娠したのをきっかけにパーティーを解散して、僕はアクアと結婚したんだよ』
この世界における冒険者パーティーという職業は、解散率も引退率も非常に高い。
五体満足のまま引退、あるいは解散できる者はごく一部と言われるほど、常に危険と隣り合わせの仕事なのだ。
それでも冒険者が人気職業である理由は、ブイヨン子爵家のようなサクセスストーリーに憧れる者が多いからなのだろう。
そういう意味では、ブイヨン子爵のパーティーが全員無事に引退できたというのは、極めて稀有な例と言える。
ちなみに、ヴィシ・ブイヨン子爵の父である前ブイヨン子爵の名前が、ソワーズ・ブイヨンだということを、ケンはこの時初めて知ったのだった。
『そう言えば、護衛の冒険者パーティーってまだですか?』
出発予定時刻が近付いているにもかかわらず、一向に姿を見せない護衛パーティーをケンは辺りを見回しながら探した。
『そうだねぇ。もうそろそろ来るんじゃないかな?』
『あの子、帰って来たばかりだから疲れてるのよ』
しばらくすると、子爵邸の中から一人の少年が駆けてきた。
その後ろには護衛らしき四人の男女が続いて走ってくる。
少年は鮮やかな赤髪で、まだ幼さの残る顔立ちをしていた。
年齢はリナと同じくらいだろうか。
しかし、その服装は年齢に似合わない黒いスーツ姿で、手には身の丈ほどもある大きな鎌を携えている。
そのあまりにも特異な出で立ちに、ケンは思わず目を奪われたのだった。




