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美容師パパは魔道具担当、料理人ママは飯担当、娘は赤点担当の勇者です  ~異世界の隅っこで、家族スローライフ始めました~   作者: antomopapa


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第24話 聖なる魔力と、常識破りのローストビーフ



訓練場では、リナとブイヨン子爵が木剣を交える音が響いている。

その傍らで、ケンとバルガス、そしてカミラは腰を下ろし、三好家の「秘密」について話し合っていた。

「えっ、じゃあブイヨン子爵とカミラさんが、昔同じ冒険者パーティーを組んでたんですか?」

ケンが驚きに目を見開くと、バルガスが鼻をこすりながら自慢げに頷いた。

「おうよ。

それで俺が師匠ブイヨンに弟子入りしてから、当時パーティーメンバーだったカミラに一目惚れしてな。

必死に口説き落として、ようやく結婚にこぎつけたわけよ。

今は息子も二人いて、公都で冒険者をやってるぜ」

「へぇ……。バルガスさん、意外と情熱的なんですね。人に歴史あり、か」

ケンが感心していると、バルガスがふと表情を引き締めて問いかけてきた。

「そんな昔話より、お前らの方だ。

ケン、ぶっちゃけた話……神様から他にも何かしてもらってるのか?

リナのあの出鱈目な魔力といい、ケンの工作スピードといい、ただの異世界人じゃあ説明がつかねえ」

ケンはサオリと視線を交わし、意を決して口を開いた。

「……わかりました。この際、バルガスさんには全部話します。

俺たち三人に共通して与えられたスキルは、『身体強化』『魔力強化』『言語理解』、そして『鑑定』です」

「……そりゃあ、言語理解はわかる。あっちの世界と言葉が違うだろうからな。

しかし、鑑定までセットで貰ってるとは……。

普通、鑑定士なんて一生かけてなれるかどうかの希少職だぞ」

「知らない世界ですからね。

サオリなんて料理人ですから、鑑定がないと知らない食材ばかりで毒があるかもわからない。

生きていくために神様がつけてくれたんだと思います」

「そりゃそうか。確かに異世界から来た者にとっちゃ、命綱みたいなスキルだな」

「ええ。あとは個別のスキルとして、俺が『精密工作』、サオリが『浄化』、リナが……『聖魔力』ですね」

その瞬間、バルガスが飲んでいた水を「ブーーーッ!」と盛大に吹き出した。

「聖魔力だぁ!!?」

カミラも隣で目を丸くしている。

リナの修行を見守っていたブイヨン子爵までもが、ピクリと耳を動かした。

「えっ、なんかすごいことなんですか?」

「すごいも何も、どえらいことだぞ!

聖魔力ってのはな、言わば神の使いの証明みたいなもんだ。

アンデッドの浄化や呪いの解除、それに聖なる属性を纏った攻撃……。

この世界を見渡しても十人もいない超レアスキルだ。

それをあのお転婆娘が持ってるだと?」

「なんか、すごいことになってますね……」

ケンの引きつった笑顔に、バルガスは天を仰いだ。

「まったくだ。お前ら一家を野放しにしてたら、この国の勢力図が書き換わっちまうぞ」

そんな深刻(?)な話をしていると、訓練場から朗らかな声が響いた。

「よし、今日はここまでじゃ。リナよ、体の使い方がだいぶ素直になってきたのう」

「ふぉぉ……終わった~! ママ、お腹すいたよ~!」

リナが駆け寄ってくると、待機していたサオリが笑顔で立ち上がった。

「はいはい、お疲れ様。じゃあ、皆さんでお昼にしましょうか」

サオリは訓練場横の大きな石造りの机に、持ってきたバスケットから「ローストビーフサンド」を次々と並べていった。

こんがり焼けた自家製パンの間に、昨日のプレデターブルの肉が贅沢に挟まっている。

その肉は、中心が鮮やかなバラ色に輝いていた。

「わー! 美味しそう! いただきまーす!」

リナが真っ先に手を伸ばすが、バルガスがその手を止めた。

「おい、ちょっと待て!

サオリさん、これ……生肉じゃないか!

お前らの世界じゃどうだか知らんが、こっちで生肉なんて食ったら一発で腹を壊すぞ!」

カミラもブイヨン子爵も、その「赤い肉」を前にして慎重な面持ちだ。

この世界では、肉は完全に火を通すのが常識なのだ。

「あら、私たちのいた世界でも生肉は危ないですよ。

だからこれは、ちゃんと低温でじっくり火を通してあるんです。

『ローストビーフ』っていう料理なんですよ。本当よ?」

「ホントだろうな……?」

バルガスは疑わしげにサンドイッチを掴んだ。

しかし、リナがすでに勢いよく頬張っている。

「もぐもぐ……ふふ、美味しー!

やっぱりママの味が世界で一番好き!」

幸せそうに食べるリナの姿に毒気を抜かれたのか、バルガスたちが恐る恐る一口噛み締めた。

その瞬間、沈黙が訪れる。

「……なんじゃこりゃ、滅茶苦茶うめぇ!!」

バルガスが叫んだ。

「お、お肉が口の中でとろける……!

それにこのソース、さっぱりしてるのにコクがあって、パンに凄く合うわね」

カミラも驚きに目を輝かせている。

「ふぉふぉふぉ……。これは美味じゃのう。

肉の旨味が逃げずに閉じ込められておる。

サオリ殿、お主は魔法使いではなく、食の魔術師かのう」

ブイヨン子爵の言葉に、サオリはホッと胸を撫で下ろした。

「皆さんに喜んでいただけて良かったです。素材が良かったので、助けられました」

しかし、一通り食べ終えたカミラが、真剣な表情でサオリの手を握った。

「ねぇサオリさん、これ……コレの作り方、教えてくれないかしら?

この『ソース』の秘密も!」

「えっ、私でよければ」

「ふぉふぉ、儂の屋敷の料理人にもぜひ教えてやってほしい。

この味を知ってしまったら、今までの食卓が寂しくなってしまうわい」

サオリは顔を赤らめながらも、料理人としての血が騒いだようだった。

「ええ、いいですよ。

もしよろしければ、今から少し厨房をお借りしてもいいかしら?

調味料の使い方のコツをお伝えしますわ」

サオリはエプロンの紐を締め直し、ケンとリナの方を振り返った。

「ケン、リナ、私はもう少しお邪魔していくから、先に帰ってていいわよ。

晩御飯までには戻るから」

「わかったよ。……カミラさん、サオリは料理のことになると熱が入るから、よろしくお願いしますね」

こうして、三好家の料理担当・サオリは、子爵家の厨房へと連行(?)されていった。

異世界の最高権力者たちをも胃袋で掴んでしまうサオリの腕前。

三好家の「スローライフ」は、どうやら美食の追求という方向でも加速しそうだった。



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