2章 6話 採用試験
東京都港区六本木
現在護は黒塗りの高級車に乗せて貰っていた。
そして隣には氷雨が座っている。
氷雨は何故かいつもの冷酷な顔をしているが…
少しだけ笑みが漏れている……気がした。
「いきなり明鏡止水のクランに行くなんて…
俺…まじで胃が痛くなってきたんだけど、
何でいきなり……今日なんだよ……」
護は大手クランに自分が入れるなど夢にも思っていなかった為にガチガチに緊張してしまったのだ
「う…うるさいわね、あなた強引にでも連れて行かないと行くの止めそうじゃない!
まったく、そんなんじゃ私が特別推薦枠まで使って
入団戦闘試験受けさせてあげた意味無くなるわよ
緊張なんかしてたら死ぬわよ、まったく」
「お嬢様どうぞお気をつけて」
先程の氷雨をからかっていた表情は一切無く
氷雨の運転手の業務を全うしていた
「ありがとう中村さん、今日はこのままクランに泊まるから帰りは大丈夫よ
って……ほらっ早く降りなさい護!
ちょっと試験で戦うだけでウジウジ言ってないで
早く行くわよ」
氷雨は護を置いて先に行ってしまった
その時護に中村さんが突然話を始めた
「進道様……お嬢様の心からの御友人になって頂き
本当に…ありがとうございます
お嬢様はあの年齢でA+と言う強さ、そして大財閥の孫娘様です、5年前の能力が現れる前から…
幼少期から人々に恐れられ、大人達からは媚びへつらわれ…そして力を付けられた今は更に風当りが強くなっております…
進道様……お願い致します、お嬢様を御守りしてあげてください……この通りです」
中村さんは氷雨の安全や心の支えの為に今日会ったばかりの若者…護に頭を下げた
その言葉には自分の孫の為なら何でもする様な
氷雨の為の優しさや願いなどが詰まっていた
「…………くそっ……俺の馬鹿野郎!」
いきなり護は自分の顔を殴った
「しっ!進道様っ!」
中村さんは何が起きたのか慌てて護に近寄る
「大丈夫です中村さん…俺…覚悟が決めました
俺は約束したんです…氷雨よりも…
そして誰よりも強くなるって!
中村さんありがとうございます
お陰で目が覚めました、行ってきます!」
そして護は前を向き氷雨を追い歩き始めた
「進道、護様…ですか…
覚悟を決めた男の表情になってましたね
……まもる……良い名前ですね……
護様、お嬢様を宜しくお願いします」
中村さんは去り行く護に1人頭を下げ見送った
***
護は氷雨の後を追いかけ
大きなガラスの自動ドアを開け中に入る
護は明鏡止水クランの建物に入り…言葉を失った
そこは高級ホテルかの様に広く建物内なのに水が流れ木が植えられ花が咲き誇る
幻想的な美しいエントランスだった
5フロア以上はある開放的な吹き抜け
多くの調度品などが飾られており贅の限りを尽くして造られたエントランスだった
「なっ……なんだここっ!
異世界にでも来たのか俺!?」
「そんな訳ないでしょ
って護あなた口元少し切れて…
いや………なんでもないわ……
さてと護はちょっとそこらへんで待ってて」
驚いている護に氷雨は冷たく答えた
そして護に待ってる様に伝えて歩いて行った
「どこ行ったんだあいつ
まぁいっか、座って待ってるか」
そう言い護は近くにあった椅子に座り
スマホを弄り時間を潰していた
***
「待たせたわね護、さぁ行きましょ」
「おっ戻ってきたな…わかったよ、いく………か」
護の言葉が止まった
そこには青と白を基調とした
軍服とカジュアルスーツを足して金のラインの刺繍を入れた様な服に氷雨は着替えていたのだ
「な…何よ、これは明鏡止水の戦闘服なのよ
何?何か喋りなさいよ護」
氷雨は喋らない護を見て文句を言った
「いや……そのコスプレみたいだなって……
いや…でも…その、白いワンピースも良かったけど
その服も…似合ってると思う」
護はあまりの可憐さに声もたじたじになりながらも
必死に氷雨を褒める
「そ…そう?ふふっ♪そう…なのね
って……こほんっ、さ…さて行きましょうか」
氷雨は護に褒められ満更でもない笑みを浮かべ…
わざとらしく咳をし
そして踵を返しまた歩き始めた
「あっあぁ、分かった」
護は返事をして氷雨の後ろに着いていく
その時に目に入るのは多くのスーツ姿の人達や
ラフな格好だが戦闘に向いている様な服を着ている人達が氷雨の存在に気付き皆挨拶をし頭を下げる
(これが氷雨の言う実力で黙らせる…か…
あいつやっぱり凄いやつなんだな…
大クランのマスターか……流石に凄いな)
18歳の少女に同世代の若者達や
大の大人達までもが丁寧に挨拶をし頭を垂れているその異常な光景に護はまたも驚いていた
そして少し歩くと左右に弧を描く先が見えない廊下があり正面にはまた大きな自動ドアがある
スーツを着ている人達は左右に行き
戦闘服を着ている人達、ソルジャーと思わしき人達は正面の自動ドアの方に行く
護は氷雨に着いて行き正面のドアを通った
そして護そのあまりの光景に息を呑んだ
そこは野球場より広いドームの様な場所に出たのだ
「なっ…………これがスマホで見た……
戦闘施設……アクアベールドーム……凄いな!」
アクアベールドーム
それは巨大なドーム型の建物の空間中に魔結晶使用し薄い膜の様な結界が張られている最先端技術で作られた演習場の様な物だ
その結界内から攻撃を外に向け放つと被害を最小限にする事が出来るのだ
氷雨は結界を見下ろせる位置にある高台に移動しそこに置いてあるマイクを使い号令をかけた
「はい、明鏡止水クランメンバー集合」
その瞬間、明鏡止水の現在演習をしていたメンバー
総勢50人が氷雨がいる真下に集合した
「凄い…これが明鏡止水のクランメンバー達…
どのメンバーもかなり強そうだな…」
護はどのメンバーもかなり強そうに見えた
何故そう見えたかと言うと、権能の力は放つ光が強ければ強いほど権能値が高くなる傾向があるからだ
そしてどのメンバー達もかなりの光を放っていた
「え~いきなりだけど、私の特別推薦枠を使い新しいメンバーの採用試験をするわ」
氷雨はいきなりメンバーに話を伝えた
特別推薦枠とは、基本的にクランの採用は
書類選考から始まり、一次試験、二次試験
最終試験と受けて最終試験をクリアした者だけが採用されるとんでもなく狭き門だ
だが特別推薦枠は違う
クランマスターは1人だけを特別に推薦出来る
その推薦された人はいきなり最終試験だけをクリア
したらメンバーになる事が出来る権限だ
氷雨はその貴重な権限を護に使用した
「「「えっ?」」」
「あの人…水狼牙の配信に出てたGランクじゃない」
「Gランク!?マスターおかしくなったのか?」
「いや……流石にGは…死んじゃいますよマスター」
など多くのメンバーが
Gランクの護に不満の声を漏らしていたのだった
「まぁ、その気持ちは分かるわよ
私もそうだったからね、でもこの進道護は凄い力を持っているわ…私をも越える力をね」
氷雨は護の説明をしその力の強さを伝えた
だが…そこで1人の男性のメンバーが声をあげた
「へ~水神さんを越える力を持ってるんですね
じゃあ最終試験は俺が担当しますよ」
声をあげたのは燃える炎の様なオレンジ色の髪
その仕草格好は何故かキザったらしく感じてしまう男性だった
「藤堂、あなたが担当するのね
いいでしょう、では進道護の試験を始めます
他メンバーは結界内から退避
試験管を勤める藤堂のみ残りなさい」
氷雨はメンバーに命令した
そして後ろにいた護に振り向き小さく声をかけた
「さぁ護、そこの階段から結界の中に入れるから
相手はBプラスのソルジャーよ
油断しないで戦いなさい、気をつけてね…」
氷雨は護に少しの情報を伝えた
何故かあのキザったらしいBプラスの強者と戦う事になっていたが護は文句を言わなかった
「あぁ分かったよ、ここまで連れてきてくれたんだ…
死ぬ気で合格してみせる…
中村さんにも約束したからな」
護は意思を固め結界内に歩き始めた
「えっ?中村さんさっき何か変な事言ったの!?
ちょっと護!待ちなさいよ!護っ!」
氷雨の話は集中していた護には聞こえなかった
そして護は結界の中に入り藤堂と相対したのだった




