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35.レムスペース

 たくさんの魔物が色々な研究をしている、白くて、どこまでも続いている大ホールが広がっていた。

 ある場所では、ハムスターのカラカラのような装置の中に、獣風の魔物が乗り、走っていたり、違う場所では、そこの床は池になっているのか、釣りのようなことをしている集団がいる。

 あたしの常識や知識じゃ説明できない空間がそこにはあった。


「あの辺なら、誰も文句言わんやろ」


 あたしを案内するミラちゃんは、その位置まで移動すると、小さなカプセルのような物を投げた。すると、そこに秘密の研究所が現れる。え? 何これ? ドラゴンプールのホイホイカプセル? 凄すぎない? あたしの明智アーマーなんて、しょぼ過ぎでしょっ!


「びっくりしとるな。うちも最初はびっくりしたで。ここはな、レムスペースっちゅー、旦那の頭の中なんや」

「へ?」

「だから、旦那の許可が下りた物はこないなカプセルでそのまま再現できるっちゅー訳や」


 訳や、じゃなぁぁぁぁぁぁいっ! それこそ、イミフなんですけどっ! 納得できる要素ゼロなんですけどっ! てか、人間、とんでもない相手に、戦いを挑んでるじゃんっ!


 エレーナ様…… 可哀想過ぎる。報われないよ。あんなに民思いで、国を守ろうとしているのに、実は戦力差があり過ぎてそもそも無理ゲーとか。


「とりあえず、今案内できるのは、これだけや。それから、くれぐれも制服の着用だけは忘れんようにな」


◇◇◇


 ミラちゃんと別れてから、1人、研究所で考えていた。

 どうやって、秘密の研究所を持って来たの? それに、これだけ広いスペースに、たくさんの魔物研究員。違和感だらけで、何だか解せなかった。それこそ、エネルギーの行方が見当もつかなかった。


「お主がミラの弟子かね?」


 突然の声かけに思わずビクッとする。恐る恐る振り返ると、どっしりとした亀のような姿の魔物がそこには立っていた。


「あなたは?」

「ああ、すまんすまん。わしはミリオネルじゃ。人間風に言えば、魔物の錬金術師かの」


 ミリオネルは馴れ馴れしく、勝手に向かいに腰を下ろす。


「直列、並列によくぞ辿り着いたの。わしが辿り着くのには、軽く3万年はかかっていたぞい」

「……え。既出の技術だったんですか?」

「残念じゃが、その通りじゃ。ただ、知っているのはわしとレムレス、他に幹部のごく一部じゃ。ミラはその事実を知らぬ」

「……もしかして、魔石の粉末化も?」

「それもごく一部しか知らない秘匿事項じゃよ。人間のもとでは…… わしの作った魔力測定具、あれが粉末化技術の典型じゃな」


 あれの製作者、ミリオネルだったんだ。それにしても、あたしはかなり浮かれていたね。冷静に考えれば、既出という可能性もあり得る話だった。

 前の世界でも、すでに論文が発表されているのを、それを見つけられずに最新だと発表してしまう、なんてことも現実にあったのだから。


「明智、魔導砲だったかの? あれは見事じゃ。わしらの中でも誰も真似できん」

「魔石粉末を直列、並列と複雑ですけど、組み合わせただけですよ?」

「普段は鎧の形状を保ち、攻撃時に細かく部品の移動指示を行うのかの? 近いところまでは寄せられるじゃろうが、着用者の技術にも依存する点で、発射は不可能じゃろう」


 観月、魔物と比較されても勝てるんだ、すご。でも、確かに作っているのがあたしだから構造が理解できていて、コンソールパネルの操作もイメージできる。だけど、作ってない人にとっては、イメージが難しく、かなり訓練しないと操作すらまともにできないかもね。


「だから、レムレスはお主を勧誘したんじゃよ。唯一無二の兵器使いじゃからの」

「なるほど。てことは、あたしも戦闘に参加するんですか?」

「もちろんじゃ。何ならお主は幹部候補じゃよ」

「へ?」


 ミラちゃんが言ってた内容と違いすぎるんだけど。この人、信じていいの? てか、人なの? 何て言えばいいの?


「間もなく、出撃命令が出るじゃろ。期待しているぞよ、異世界人」


 そう告げ、ミリオネルは姿を消した。てか、ミリオネルって、もしかしてミラちゃんの師匠?


「あとで聞いてみよう」


 何だか頭がいっぱいで疲れたから、部屋に戻ろうとレムスペースを出る。


「いたいた新米。あんたがぴかりんだったのね。行くわよ」

「え?」


 少し前に廊下ですれ違って、確か…… シルフズメイク。何で彼女が待ってたの? 行くってどこに?


「何、ぼさっとしてんだい? ノロマは嫌いなんだよ、早くしな」

「は、はいっ!」


◇◇◇


 ここって――


「ここで死守するぞぉぉぉぉっ! 我に続けぇぇぇぇぇっ!」


 戦場。しかも、今までとは逆の立場。え…… あれは、護衛兵団? てことは――


「いた……」


 いないで欲しかったのに、いちゃった…… 何でここにいるんですか、エレーナ様……


「あんたの技は、一撃だけで必殺らしいわね。だから、しばらく見てればいいわ」

「……はい」


 どうしよう。明智魔導砲なら、確実にエレーナ様を殺せちゃう。指示が来たら、やらなきゃならないよね、きっと……

 わざと外す? 駄目だ、そんなのバレたら、裏切り者扱いされるに決まってる。


「誤魔化しようがない…… でも、何とかしなきゃ」

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