45 おっぱい陣営:ライタ
「おっぱい好き=巨乳好きだなんて甘い考えはクソよ! ライタにも劣るクソ!」
「ちょっとあの美崎さん、落ち着いて、冷静になっ――」
「貧乳こそが正義! 貧乳こそが王者! そこに巨乳が入り込む隙間なんてどこにもないのよっ! 分かったかしら!?」
「美崎さぁん!? お願いだから黙って!?」
とんでもないスピーチを始めた美崎を羽交い絞めにするが……
こ、こいつ……なんて馬鹿力だ。無理やり下げようと思っても抵抗しやがる。
「離しなさいこのゲボ! 私は伝えなきゃいけない事があるのよ!」
「伝えるのはおっぱいの魅力だろ!? なに貧乳愛好家限定のスピーチ垂れ流してんだよ! おっぱい全体の良さについて語ってくれ!」
「私にとっては貧乳がおっぱいの全てよ!」
「取りつく島もねぇ!」
だ、ダメだこいつ。何があっても貧乳講習会をやめないぞ。
だがそれじゃダメなんだ。こちとら毎月金欠気味。意地でもこの対決に勝って、家賃を下げてもらわなきゃならん。
発想を逆にするんだ。美崎を止められないなら、むしろ――
と、俺は大きく息を吐いてから……美崎を羽交い絞めにしていた腕をぱっと離した。
「分かったよ。じゃあ、好きに話せばいい。ただ、お前が話し終えたら俺も始めるからな」
「やっと私の覇道を手伝う気になったのね。それでこそ私の下僕だわ」
下僕じゃねえよ! と突っ込みたかったが、そこでまた突っかかったら面倒な事になりそうだったので、ぐっとこらえる。
「それじゃあ続けるわよ」そう美崎は置いてから、再び話を始めた。
「――人間、とりわけ男は、巨乳を好きになる輩ばかりだわ。それは人類の本能において、子を育てるためにそちらを選んでしまいがちだから。でもね、こう考えてみることはない?」
そこで一息入れてから、美崎は続けた。
「――もしかしたら貧乳の方がエロいんじゃない? って」
お前は何を言ってるんだ。
「そう! 貧乳はエロいのよ! 『隣の芝生は青い』と言うように、人間は違う物に魅力を感じる物。そう、違う物とは貧乳の事だわ! 以上よ!」
「え!? 終わり!? そこで!?」
まだ全然話す内容を決めてなかった俺は、唐突なスピーチ終了に慄いてしまう。
どどどどーする!? このままだと殆ど何も言えずに終わっちまうぞ!?
そうこうしている内に、何故かドヤ顔の美崎が俺に近づいて来て……ポン。と肩に手を乗せてきた。
「私はやりきったわ。さぁライタ。無乳の良さを伝えてくるのよ」
伝えないから! そんなの伝えたら敗北決定だから!
まずい、まずい……そんな事ばかり考えながら、俺は部屋を見渡す。
う……彰がよく分からない顔をして俺の事見てるぞ。俺の事を厳しく見据えるような、早く俺の話を聞きたそうな、変な顔だ。お前そんな器用な表情出来たのかよ。
「それじゃあ、らいたくんのスピーチを始めてほしいのだ!」
「……」
やらなきゃいけないのだ。それなら、やるしかないのだ。
大丈夫のはずだ。何故ならたった今、思いついた作戦がある。逆境をチャンスへと変える、逆転の一手をな。
「ライタ、頼むぜ」
ふと、そんな声が聞こえたような気がしたが、俺はそちらを見ずに……
自らの話を始めるのだった。
「――いいか? おっぱいというものはな……巨乳にしか価値は無いのだ!」
俺の言葉に管理人が、美崎が、彰が――目を見開いた。
「――――」
目には目を、歯には歯を――美崎には美崎を!
これが俺の……逆転の一手だ!




