15 寮一番のおっぱいの持ち主
――俺は休日が好きだ。何故なら、あまり頭を使わずに済むからだ。
俺はあまり頭がいい方ではないし、使えば使うほど疲れてしまう。だから、あまり頭を使わずに済む休日が好きなのだ。
――俺は休日が好きだ。何故なら、一人でいられるから。
一人は気楽だし、何をやっても誰かに見られることも無い。そんな状態ならストレスが溜まる場面だってそんなにないだろう。
――俺は休日が好きだ。何故なら、静かだからだ。
聞こえるのは木々の擦れる音くらい。余計な音が俺に届くことも無く、俺も快適でいられる。
――そう。俺は休日が大好きなのだ。
――それなのに。
「――ライタ! オレやっぱりさ、おっぱいの感触を知った方がいいと思うんだが!」
「なんの話だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――ッッ!!」
――俺の休日は、大体コイツに潰されてしまうのだ。
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「で、部屋のドアを開けると共にわけ分からない大魔王な事を言い出してきたんだが、これはどういうことなんだよ彰」
俺は顔に手を付きながら、くせっ毛で悪ガキっぽい顔、緊張感のない表情をしている彰にそう言った。
――休日を満喫していた俺の部屋の扉を、勢いよく開けて言い出した言葉がさっきのアレだ。まぁ俺の部屋って事は彰の部屋でもあるんだけどさ。
「いやなライタ、まぁどういうことかって聞かれたら、部屋のドアを開けると共にわけ分からない勇者な事を俺が言ったわけだよ」
「それさっき俺が言ったよね!? なんだまた同じ事言ったの!?」
大魔王と勇者にどんな違いがあるかじゃ知らんが、彰がこういう登場をする時は大体嫌な予感がする。嫌な予感指数はFカップってとこだな。
――あの疑似おっぱい探しの一日から一か月。その間、彰は割と静かだったんだが……おそらくまたクソみたいな。改めおっぱいみたいな考えを持ってしまったのだろう。気が追いやられることこの上ない。
関係ないが、俺の髪が数センチ伸びた。当たり前だけど。
「――そんでもって戯言はさておき、ライタ。オレやっぱり、おっぱいの感触を知った方がいいと思うんだよ」
「お前さ、よく話を自分本位で進めすぎるって周りに言われるだろ」
「そんなはずねぇよ。的外れだ的外れ」
「お前さ、よくおっぱいが好きだって周りに言われるだろ」
「そんなはずねぇよ。的外れだ的外れ」
「嘘つけッ!」
手をパタパタと振って拒否する彰だが、間違いなく嘘である。
でもこいつおっぱい好きが周りにバレてないって、そう思ってる節があるからな……よく今まで生きてこられたよな。そしてこれから生きていけんのかな。多分無理だな。
「それで、おっぱいの感触を知った方がいいって、何をどう思ってそんな話が出たのか聞かせてもらえる?」
どうせろくでもない事だろ。と思いつつ、俺は彰にその事を聞いておく。これを聞いておかないと話が全く通じないしな。
「ふむ。いいかライタ。話は一週間前――オレとライタが疑似おっぱい探しをした日まで遡るんだがな」
一か月前である。
「いま待て彰。何で一か月前の話が一週間前になってるんだよ」
「はぁ? 何言ってんだよ。昨日はおっぱいみたいな形の石を見つけて、一昨日はおっぱいに似た言葉を聞いて、その前の日はおっぱいを夢で見た日だろ。それで、四日前がおっぱいを大きくする方法をチラシで見て、五日前がブラジャー専門誌を見て、六日前がおっぱいおっぱいで、七日前がオマエとオレで疑似おっぱい探しの日だろ? ――ほら、やっぱり一週間前じゃねえか」
「さてはお前おっぱいに関する事しか記憶してないな!?」
指を折りながら何気ない顔で言う彰は、おそらくおっぱいに関する事象があった日しか覚えてないのだろう。逆にそれらが無かった日は存在しない日にちだと扱われるのである。
なんておっぱいに関して都合のいい脳みそをしているんだ。おっぱいに対してはマジでZカップだなこいつ。
衝撃の……やっぱり別に衝撃的でもない発言をした後、彰は俺に向き直って話を続けた。
「で、あれだけおっぱいの感触に近い物を探しただろ、オレ達」
「俺は別に探したつもりはないんだけどな。まぁいいから続けて」
「でもさ、オレたちやっぱり本物のおっぱいの感触は知らないわけじゃねぇか。それなら、幾ら疑似おっぱいを探そうと、意味がねぇんじゃねえかって……そう思うんだよ」
彰は拳をぎゅっと握りしめて、俺にそう訴えかける。
「……それで?」
「――だから! オレは本物のおっぱいの感触を確かめようと思うんだ! だから手伝ってくれるよな! オレの友達ことライタ!」
「断る!」
「友情はどこにいったんだ!?」
友情? ナニソレ。食えんの? おっぱい? ナニソレ。揉めんの?
「断るに決まってんだろ! ていうかお前さ、この前も似たような事やって散々拒否られてただろ! そろそろセクハラで社会的に死ぬからやめろって!」
そろそろやめろと、彰を止めようとする俺だが……俺の瞳に写ったライタは、意外な表情をしていた。
――笑っていたのだ。
まるで、『オレを舐めるなよ』とでも言いたげに、自信に満ち溢れている笑みを浮かべる彰は、その表情のまま口を開く。
「ライタ。今回のオレは違うぜ。秘策があるんだ。全国のおっぱいが揺れてしまうような、とんでもない秘策がな!」
「ひ……さく?」
――まさかこいつ、合法的におっぱいを揉む方法を思いついたのか? はっきり言って俺にはいかがわしい店くらいしか思いつかないんだが。ていうかそれだったらどうしよう。
動揺の色を示す俺に対し、彰は――指を天に向かって伸ばして――その秘策を、披露した。
「今回は……この寮の住人! 寮一番のおっぱいの持ち主、七瀬玲奈におっぱいを揉ませてくれるよう頼むのだ!」
「尚更セクハラじゃねえかぁぁぁぁ――ッッ!!」
ちなみに七瀬とは一年下の後輩である。セクハラは免れない。




