14 オレはおっぱいを揉みたいんだ
「闇雲に探すしかない。でも、それなら俺たち二人だけじゃなくて、誰か助っ人を呼べば効率が増す。普通の人では俺たちを助けてくれるわけないだろうけど……一人、食べ物を対価に俺たちを助ける男がいた」
「その男こそ、我らがデブ勇者、有泉というわけだな」
四方八方に走り回る有泉君を見て、俺たちはそんな事を話す。
――それにしても、コンビニで買ったチキン十枚で有泉君を味方に付けるとは……悪知恵が働くというか、安上がりというか……
「ていうか、あれだけ働いてくれるなら有泉君一人でソフィア見つかるんじゃないの」
チキンを食べながら走り回るという、器用な芸当を見せてくれる有泉君。放っておいても多分ソフィアちゃん見つかる。
「おいおい。さすがにそれはよくねぇだろ。いやオレも必要ねえと思うけどよ」
横で一応辺りを見回している彰も、形だけという感じだ。
有泉君の性能が高すぎてもはや俺たちの存在が形無し。
「しっかし有泉っていい奴だな」
「そうだな。彰の五十倍くらいはいい人だな」
「お、おいおい……さすがに俺もう一杯分くらいだろ。いや待てよ? やっぱうっぱいくらい? それともえっぱいくらいか? いやいや、本当は――」
「マジでくだらないからその先は言わないでくれる!?」
指を折りながらアホな事を言い出す、彰の口を俺は塞ぐ。
こ、こいつ……小学生低学年のような事を言い出しやがって。一度引っ掛かった思い出があるから尚更腹が立つ。
「おぉーい。彰たちぃ。見つかったぞぉ」
彰に手を噛まれたりして一通り騒いだ後、遠くから有泉君の言葉が聞こえてきた。
「見つかったって……マジかよ!?」
「おおっ。さすが有泉。やっぱ仕事はええな」
俺と彰は大急ぎで有泉君の所へ向かう。
土と草でボロボロになっている有泉君は、それでもチキンを存分に食べられた喜びからか笑顔だ。
「有泉、見つけるとはやるじゃねえか。で、どこにあったんだ?」
「あそこだぞぉ」
ピシっ。と有泉君が指した先には……
えーと……公園の端にある倉庫の壁と、トイレの壁の……間?
その辺りに目を凝らしてみると……あった。緑色の服を着ていて、翼を持った十センチのソフィア――そのキャラクターのフィギュアが。
「って、なんであんな所に落としたんだ!?」
「アレだろ。トイレで思いっきりいきんだ時の衝撃で吹っ飛んだんだろ」
「意味が分からんぞぉ」
ほんとに意味が分からない。あの豊島君は何をするつもりだったのか。
「それで、オラじゃあそこに入れないから、どっちか中に入ってほしいぞぉ」
「俺でもちょっとキツイな。よし、ガリガリ大魔王ことライタに行ってもらおう」
「ガリガリ大魔王って誰だよ!」
彰の発言にツッコんだ後、俺は溜息をついてから、
「……分かったよ。じゃ、行ってくる」
そう言って、狭いトイレの壁と倉庫の壁の間に入り込んでいく。近くにはトイレの窓が開いており、確かにここからソフィアを落としてもおかしくはないのだが……はっきり言って落としようが無いだろう。
ずんずんと俺は奥に入り込み、ようやく――ソフィア。フィギュアの所まで辿り着いた。
それを拾い上げると――軽い。持っていることを忘れそうな程。
――まるで、俺と彰の関係のように。
「……ほんとに、なんでこんなにあっさりと仲直り出来るもんかね……」
誰かと一緒にいる時なら、恥ずかしさで絶対に言えないであろうことを呟く。
俺はもう一度溜息をついて――回れ右して、戻る事にした。
草の感覚と共に――俺は彰たちの元に帰る。
「おけえり。で、ちゃんと拾えたか?」
「当たり前だろ」
ほい。と戦利品のようにフィギュアを掲げる。すると有泉君は納得した様子で、
「それなら良かったぞぉ。それなら、オラは腹減ったから帰るぞぉ」
と、満足げな様子で帰っていった。
…………え?
「今から飯食うの!? チキンあれだけ食った後に!?」
俺はそう叫んだが、有泉君は既に全速力で寮に向かって走っていった。
な、なんて奴だ……食べ物への執着心が強すぎる。
「あー……有泉はともかく、これでミッションクリアだな」
「あ、ああ。そうだな」
すべすべした感触のフィギュアを、俺はギュッと握りしめた。
「……そう、だな」
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「み、見つかったんですか!?」
「おお見つかったよ。ほら」
有泉君同様に、いや、それ以上に汚れまくった豊島君と再開した俺たちは、フィギュアを豊島君に渡す。すると彼は、とても愛おしそうにソフィアを抱きしめた。
「ああ、ソフィア。ソフィア……! ごめんよ。一人にして、寂しかったろう。もう二度と一人にはしないからね」
などと愛の言葉を囁いている。
その様子に言葉を失った俺が彰の方をみると、彰も俺を見て、笑いながら肩をすくめた。
「喜んでもらえたなら何よりだよ。じゃ、オレとライタはこれで――」
「あ、あのっ!」
何故か足早に去ろうとする彰を、豊島君が引き留めた。
「その、探してくれてありがとうございました! で、でも。一つ聞きたいことがあるんですけど……あなた、誰ですか?」
不思議で仕方ない。という感じの豊島君の視線は――彰に向いている。
「誰って……彰だよ。豊島君って頼んだんじゃないのか。この彰と、俺に」
「い、いえ。ボクが頼んだのはあなた――ライタさんだけですよ」
――え?
豊島君のまさかの言葉に、俺は口を開けたまま彰を見る。
すると彰は、困ったように頭に手を当てていた。
「お、おい彰。どういうことだよ。お前、頼まれたからああやって探してたんじゃないのか?」
「あー……んいや、オレは頼まれてねぇんだよ。ただ、そこのぽっちゃり君が困っていたから助けようと思っただけだ」
「はああああああああ!?」
今度は彰が衝撃の発言。
――そんな。こいつ、それだけのために池の柵を乗り越えたりしたのかよ。
「え、えっと……それなら、ありがとうございます。って事でいいんですよね……」
「別に礼なんていらねぇよ。ただ……」
先ほどの彰の話に、未だ俺が固まっている中……彰は改めて豊島君に近づいていって、
「オマエが、一番おっぱいの感触に近いと思ってるものを触らせてくれないか」
そう、言った。
…………あ、これを頼むためにあれだけ頑張ってたのか。納得した。
「お、おっぱい……ですか?」
「ああ。なんでもいい。オマエが近いと思ってるものを選んでくれ」
「そ、それなら……」
豊島君は覚悟を決めたように喉を鳴らした。
フィギュアであるソフィアを溺愛する彼、豊島君。そんな彼が、最もおっぱいの感触に近いと思ったものは――
「ボクの――」
豊島君は唐突に服をまくり、その丸っこい腹部を見せつけてきた。
――そうか、これは――
「ボクのお腹を触らせてあげます!」
――
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「もうやったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!!!!!」
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ガチャ。と部屋の扉が開かれる。
「あーやっと帰ってこれた。ほんとに疲れた。てか腹減った」
「そういやそうだな。うし。今から作るわ」
「おお作れ作れ。俺はダラダラする」
俺はベッドにダイブし、一日分の疲れをベッドに移す様にダラダラする。
本当に……疲れた。
「……ありがとな」
「え? 彰、なんか言ったか?」
「なんでもねぇよ。すぐ作るから待ってろ」
何故か顔を赤くした彰が、キッチンへと消えていく。
それにしても、さっきはなんて言ったんだろう。まぁいいや。十中八九おっぱいって言ったんだろ。
「……変な奴」
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あまり広いとは言えないが、その部屋は中々居心地が良さそうに見える。奥に見える二つのベッドはシーツが綺麗に広げられていて、手前にある整理された学習机は鮮やかな黄土色を放っている。部屋の中には一つもゴミが落ちておらず、部屋の持ち主の管理がしっかりしていることが分かる。部屋のど真ん中に置かれた卓袱台も同様に黄土色をしているが、その卓袱台の上には、穂杖をつく人間の肘が置かれていた。
「飯、まだか?」
そんな部屋に響き渡る、男の声。その声は淀みがなく、通りやすい澄んだ声をしていた。
その男の前髪は目元まで伸びており、髪の間から少し目つきの悪い双眸がギラリと光を放っていた。
「オマエは親父か。もうちょい待てよ」
その言葉に返された――これも男の声――は、悪い言い方をすれば荒々しく、少し悪ガキっぽい雰囲気を持っていただろうか。口調も、品があるものとは到底言えないだろう。
「――よしっ、出来たぜ!」
その会話からどれほど経っただろうか。また悪ガキっぽい声が響き、部屋の手前側の奥――キッチンから、その声の主が皿を抱えて卓袱台に近づいてきた。
その男はくせっ毛をそのままの形で放置しているが、顔の形自体は整っている男だった。
そんな様子を見たもう一方の男は肘を卓袱台から離して、皿が来るのを今か今かと待ち望む。
悪ガキっぽい声の男は、皿の中身がこぼれないようにそーっと卓袱台に置いて、これまた悪ガキのような笑みを浮べて、こう言うのであった。
「山盛りの米に、梅干しが頂点に一つ――おっぱいライスの完成だ!」
「食べ物で遊ぶんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――っ!」
という事で、第一章、これにて終了となります!
いやー特に構想もなく「おっぱいぃぃぃぃぃぃ!!!!」的な感じで書き始めた今作。ここまで続けられたことすら奇跡なんじゃないんだろうか()
第二章も特に考えてないけど、すぐ更新すると思う。多分。
期待に胸を膨らませながら待っていて欲しいぞ~
では、また!




