今さらながらのお知らせです
【大型アップデートのお知らせ】
平素より当ダンジョンをご利用いただき、誠にありがとうございます。
当ダンジョンでは、攻略環境の改善を目的として、一部階層で難易度調整を試験的に実施しておりました。事前のお知らせなく実施したことをお詫び申し上げます。
試験結果を踏まえ、明日より以下の変更を全階層へ適用します。
■主な変更点
・攻略記録に応じて、階層ごとの難易度が自動調整されます。
・魔物の出現数と配置を見直し、異なる種別間の連携行動を追加します。
・一部の地形、移動経路および発生イベントが変化するようになります。
・難易度の上昇に応じて、ドロップ報酬の品質と希少度を調整します。
なお、今回の更新は第一段階です。
今後も新たな機能、規則および挑戦要素を順次追加する予定です。
より充実した攻略体験を提供できるよう、継続的な改善を行ってまいります。
今後とも、当ダンジョンをよろしくお願いいたします。
ーーーー
三十三層に赴いて配信を開始した直後、虚空に突然、ウィンドウが表示されてこの内容が記載されておりました。
〝長いな〟
〝産業で頼む〟
〝「こっそり難易度調整してたけど明日から正式に実装するやで続きもあるよ!」〟
〝一行でまとめる猛者現る〟
てかこんなことは初めてなので、コメント欄も相当ざわついている。
ちなみにこのアナウンスはここだけのものではなかった。
俺は各所に設置してある監視用結界の映像からいくつかをピックアップ。
ダンジョンのあちこちで、同じアナウンス文面を表示した巨大ウィンドウが出現している。
そのどれもが、ちょうどその場に居合わせた探究者たちに見えるように配置されていた。
反応はだいたい同じで、困惑と不安、そして恐怖だ。
戦闘中なのに帰り支度を始めているパーティーもあった。
一方シャルちゃんたちはと言えば。
ぽけ〜っとアナウンス文を眺めていた(可愛い)シャルちゃんは、
「つまり、もっと面白くなるということですね!」
きらっきらに目を輝かせる。
「こう言ってはなんだけど、これまでがヌルすぎたものね。ま、楽しめるのなら大歓迎よ」
ユリヤもにっこにこである。
〝見た目に騙されるけどこの子らってわりと頭バーサーカーよな〟(即削除)
〝だがそれがいい〟
〝むしろそれがいい〟
〝すぐ消されとるwww〟
〝公式の中の人は過保護だからな〟
うちの可愛い妹をディスるやつは許さんよ。
とまあ、魔法少女的にはとくに変わり映えするものはなく、むしろ明日の本格運用が待ち遠しくてウキウキだったわけですが。
世の中はまあ、大騒ぎになっておりました――。
明日に備えて先を急がず、魔物との追いかけっこ配信に切り替えた。
そうして配信を終えたその夜。
ダンジョン管理局の緊急会見が行われた。
ソファーでくつろぎながらテレビを眺める。
『今回のアナウンスの発信元については、現状なにもわかっていません』
『もちろん我々が発信したものではありません』
『たしかになにかしらの意思を感じられますが、対話可能な何者かによるものかも、今のところ判断できません』
『そもそもダンジョンの存在自体が謎に包まれていて、推測するための情報も乏しい状況です』
記者からの質問にも「わかりません」「知りません」「判断しかねます」としか返せない状況のようだ。
見ていてクッソつまらん。
半分寝ながら聞いていたが、そのうち妙なことを言い出しやがった。
『管理局はここに、ダンジョン内の危険レベルを最大限に引き上げ、全探究者に対して当面の間〝活動の自粛〟を強く要請します』
一瞬『活動の禁止』かと思ったけど、なんだ『自粛』ならべつに無視して問題ないよな。
そう、思っていたのだけど。
会見が終わると、うちの事務所の所長さん兼アパートの管理人さんが部屋に駆けこんできた。
どうやらただ自粛をお願いするのではなく、探究者事務所そのものに圧力をかけてきたそうな。
「――と、言うわけでして、この期間にダンジョンに入って何かあっても、公的な保証はなにも受けられなくなるんです」
ダンジョンは危険でいっぱい。基本的には自己責任だけど、その貢献度に応じてダンジョン管理局から「なにかあったときの保証」というものがあった。ケガをしたときの手厚いサポートや、死んでも家族や仲間にお金が入る、とかね。
「そもそも期待しちゃいませんですし」
難易度のが多少上がったとしても、シャルたちが傷つくのも俺は許さないよ?
「ぇ、えっと、ドロップアイテムの買取なども停止するみたいですけど……」
「俺たちの目的はあくまで攻略ですからね。お金はべつで稼げてますし」
目的は攻略っていうより最深部にある〝孔〟に到達して元の世界に帰ることだけどね。
あと、ぶっちゃけお金は稼ぐ必要がないほど貯まってもいる。
「それは、その……つまり?」
おそるおそる問う柊さんに答える前に、シャルに目線を移す。
シャルは大きくうなずくと、
「はい! 何人たりとも、わたくしたちの進撃を阻むことはできないのです!」
元気よく答えるのだった――。
次の日。
ダンジョン管理局の受付には、俺たち以外は誰もいなかった。
当然か。
昨日の緊急記者会見後、多くの探究者系配信者は自粛を受け入れたと発表し、中には引退を仄めかす者たちもいたほどだ。
多くの職員が俺たちの登場に驚き、困惑する中。
受付係のお姉さんは驚いた様子もなく、いつものように淡々と入場手続きを進めている。ときおりこめかみを押さえ、眉間にしわを作っていた。
「大丈夫ですか?」
シャルが心配そうに覗きこむも、
「問題ありません」
やはり淡々と応じるのみ。けれど――
「いってらっしゃい。気をつけて」
これまで一度も口にしなかった激励とも取れる言葉を寄越した。
でもその瞳には、なんとも言い難いほど哀しい色が、宿っているように感じた――。
本日コミック21巻が発売でーす♪
よろしくね。
お知らせでした。




