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実は俺、最強でした?  作者: すみもりさい
第十章:バズっちゃいましたか

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陰謀は会議室で起きている


 数日が流れ。

 シャルロッテたちが三十層で特別企画を配信した、その夜――。


 都内の湾岸地区にある『メリディアン・アーク』社の会議室。

 壁いっぱいを埋める窓の外では夕闇が下り始め、それを隠すようにカーテンが引かれていく。


 壁面の大型モニターを前にして、眼光鋭い中年男性が深く椅子に腰かけていた。表向きは同社のとある開発部門の部長である。

 その実、海外の政府が非公式に組織したトウキョウ=ダンジョンの攻略部隊、その責任者であった。


『ずいぶんと苦戦しているようだな』


 モニターの向こうの男が薄く笑う。顔の上半分が暗く、容貌は定かでない。


「面目次第もございません。一昨日、大事な戦力を欠く事態となってしまいました」


『ああ、三十層のエリアボスを目前にしながら、以前は倒した巨大な魔物に惨敗したとか。どういうことかね?』


 詳細な報告は受けているはずなのに、わざわざ尋ねる意図を理解する。

 下手な弁明は命取り。自らの口で嘘偽りなく語る以外なかった。


「前回と比して明らかに魔物側の実力が上がっていました。思いもよらぬ攻撃で二名が戦闘不能となり、あとはなし崩し的に――」


 全滅、と言ってよいほどの大打撃を被った。

 最強の騎士団と持てはやされていた彼らは、治療系スキルを駆使しても回復には至らず、半数以上がいまだ入院中だ。


『そして次善の策であるはずの――なんだったかな? 探究者の四人組も解散してしまった、と』


 責任者の男は映らないところでこぶしを握り締める。


「『オリオン・プロダクション』はあくまで日本政府の目をこちらから逸らすことを主目的とした部隊です。我らとつながっていたのは事務所の所長とリーダーのみ。しかも関係を探られないよう間接的に、です。そもそもあの程度の戦力では騎士団の代わりにはなり得ません」


『代わりになるならないの話ではないよ。けっきょくのところ、プランは大幅に練り直さなければならないのだろう?』


 反論を試みようとするも、先んじて画面の男が続ける。


『勘違いしないでくれ。私は君を高く評価している。後発でありながら日本政府直属の部隊に迫るほどの攻略速度を実現していたのだからね。今回は不幸な事故が重なったに過ぎない』


 どこか諭すように告げると、


『君のことだ、このイレギュラーな事態にも対応する策を、用意してあるのだろう?』


 今度は()めつけるように視線を刺してきた。

 切り出すならここか、と責任者の男は、巨大モニターの脇に座る若い社員に目配せした。

 社員は淡々と手元のキーボードを叩く。


 巨大モニターの画面が切り替わった。

 雲ひとつない青空の下、狼のような姿をした巨大な魔物が佇んでいる。


『これは……先ほどの生配信の映像かね』


「はい。ご存知かと思いますが、彼女らが『魔法』という未知なる力を操る者たちです」


 巨大獣に対峙するは、愛らしい二人の少女。

 だが不思議にも彼女らは浮いていて、信じがたいことに巨大獣をまさしく瞬殺してみせたのだ。


『君の騎士団を壊滅させたあの魔物を、か。まさかとは思うが、彼女たちをこちらに引き込むのかね?』


「交渉でそれが叶えば言うことはありません。ただ……」


 男は言葉を濁す。

 調べれば調べるほど、あの少女たちが何者なのかがわからなくなっていた。


「出自を探った限りでは偽造されたものと見て間違いありません。となれば我らと同じく日本国以外の勢力が送りこんだと考えるのが妥当なところですが……」


 あらゆるルートを通じて調査しても、どの勢力ともつながりが見出せないどころか微かな接点すらつかめなかった。


「まるであのダンジョンのように、急にこの世界に現れたかのごとく……いや、失礼。現実的な話をしませんとな」


 男はふっと息をつく。


「気になるのは日本政府の動向です。連中を囲っているかはさておき、例の重要人物(・・・・・・)と同じアパートメントで暮らしているとの報告を受けています」


『重要人物……ああ、たしかダンジョン内で(・・・・・・・)保護された女性(・・・・・・・)、だったか』


「彼女の素性もいまだつかめません。日本政府が把握したとの情報も、です。となればあの『魔法』を操る少女たちもまた、ダンジョンになにかしら関係する者たちなのかもしれません」


 そしてそのいずれもが、日本政府の体制下にあるのだ。


『さらに言えば、事務所の所長は日本政府と強いコネクションがある、だったな。前所長はダンジョン出現初期からの探究者で、政府系の事務所メンバーとの交流があったとか。にしては凋落著しいとの話だが』


 さすがによく知っているな、と男はうなずく。


「所属する事務所には計八名の出自不明の男女がおります。配信で表立って行動しているのは例の二人の少女ですが、他に四名があり得ない速度でダンジョンを攻略しています。そちらもまた、『魔法』を操る者たちだとか」


『配信で多くの目を向けさせ、その実は四名の主力部隊でダンジョン攻略を進めているというわけか。残る二人も気になるが、しかし、どうにも意図が見えないな……』


「時間がありません。ダンジョンの終着が情報局の推定よりも浅いにせよ深いにせよ、すでに我らを抜き去ったのは事実。これ以上、引き離されれば挽回は難しくなります」


 男は前のめりに続ける。


「他の勢力も連中を狙っているでしょう。ダンジョンのルールを捻じ曲げる技術の数々を、日本政府はもとより、他国が手に入れるのは絶対に避けねばならないのです」


『つまり、なにが言いたいのかね?』


 声に重みが乗る。

 男は一瞬だけ怯むも、腹から声を絞り出した。


「部隊投入の許可をいただきたい。できれば一個中隊を展開させてもらえないでしょうか」


 沈黙が降りてくる。両肩を押さえつけられているような重圧を感じた。


『日本国内で、かね? しかもいちおうは日本国籍を有する者が複数人消えるとなれば、確実に外交問題になるが?』


「大いに結構。もとより身元の不確かな連中です。日本政府が不当に我が国民(・・・・・・・)を拉致していた(・・・・・・・)と言い張れば、逆手に取れましょう」


『日本国内で銃火器は使えんぞ?』


「やり様はあります。もっとも、使うつもりは毛頭ありませんがね。連中の『魔法」とやらも、しょせんはダンジョン内であればこそ」


『だとすれば、やはり中隊規模の部隊を展開するのは大袈裟ではないかね?』


「あくまで保険です。日本政府の邪魔が入らないよう細心の注意は払いますが、それゆえに他国の勢力には察知される危険がありますからね」


『ふむ。実行に当たり日本政府に気づかれては元も子もない。当然、目立たぬ算段はつけているのだろうな?』


 もちろんです、と男は口角を持ち上げる。


「メリディアン社の日本法人が所有するテーマパークに誘いこみます。夜間に園の奥であれば、誰にも気づかれずに連中の身柄確保は可能でしょう」


 ああ、あそこか、と画面越しの人物は思い出したように言う。


『だが来るかね? 唐突な招待では不審がられてしまうと思うが?』


「彼らが先日、園を訪れているのは確認済みです。来場者を対象にした抽選に当たった、とでもしておけばよいでしょう。配信を担当している二人の少女の嗜好も分析しており、少なくともあの二人が釣れれば成功も同然です」


 再びの沈黙。

 しかし先ほどとは違い、重苦しい雰囲気は薄まっていた。


『いいだろう。やりたまえ。結局のところ我らは、結果を出しさえしてくれればいいのだからね』


 裏を返せば、結果が出なければ覚悟を決めろとの脅しに違いない。

 だが、男は確信を持って告げた。


「吉報をお待ちください」


 通信が終わり、大きく息をついた。

 やることをやるしかない。

 絶対に成功させねばならないと、決意を新たにした。


 だがこのとき。


 ふっ、と音もなく。

 部屋の片隅で〝なにか〟が消えたのを、その場にいる誰も、知ることはなかった――。



昼くらいに『(´・ω・`)最強勇者はお払い箱→魔王になったらずっと俺の無双ターン』( https://ncode.syosetu.com/n0955el/ )の連載を再開します。

長々と間を空けてごめんなさい。

完結までは定期に連載する予定です。

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アニメ化したよーん
詳しくはアニメ公式サイトをチェックですよ!

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義妹に害意を持つだけで罪
なんで押しちゃいけないボタンを人は押したがるのか…
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