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ズレてるドラゴンスレイヤーと不幸な亜人  作者: 色々大佐
竜の娘

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EX話 ジーナちゃん③

 ロビンさんから依頼されたもの、それは街に蔓延る麻薬をなんとかしてほしいというものでした。エルフとの戦い、天龍、師匠と様々な災厄に見舞われたネストの街では住人の不安が増大。それに比例して麻薬が蔓延る様になってきたらしいのです。


 私個人としても薬というものは好きではありません。人の幸せと健康を願う私としては、人生と身体を壊す麻薬というものは好きになれないのです。


 ですので、私は一生懸命対応策を考えて解決策を考えてきました。この方法なら行ける!! 絶対に皆を助けられる!! その秘策を思いついた私は早速行動に移します。リーキスやカゲの力も借りて行動を開始すると、ネストの街に蔓延る麻薬は次々に消失していきました。


 これにはロビンさんや街の衛兵達もびっくり、ジーナちゃんとその愉快な仲間達の力にマジ心の底から驚愕。これでボーナス確定、ロビンさんからの特別ボーナスに私も期待で胸が膨らみます。


 しかし、そう頑張っていた矢先に裏切りの刃が私に降り注ぎます。ロビンさんが衛兵を伴って私を拘束。部下であるカゲやリーキスも司法取引やらなんちゃらとロビンさんの元に下りました。そして哀れにも囚われの身となってしまった私はと言うと……




 街道を走る馬車の中からネストの街を懐かしく思います。この馬車の中には特性の魔法陣によって身動きを封じられた悲しいエルフが一人。ロビンさんの裏切りによって、指一本動かせなくなってしまった私だけです。


 街から麻薬という害悪をなくした相手にしていい対応ではありません。結局私はいいように使われただけなのです。お調子者のエルフをよいしょして、都合よく使った後はポイと捨てる。これがロビンさんの言うボーナスですか、完全に私は切り捨てられました。


 信頼していた相手に裏切られた事に悲しんでいると、馬車が止まりました。休憩か目的地についたのかはわかりませんが、私にとってはどうでもいいことです。もう気力も尽きました。


 もう人生に絶望してやけっぱち状態の私。なんかもう馬車の床を張ってたちょい大きめの蜘蛛が私の頭によじ登ってきて、顎と胸の間を行き来して糸で巣を作り始めていますが、そんなことはどうでもいいです。おっ、でもこの蜘蛛めちゃ器用じゃん、私の顎と両胸にマジ大きめな蜘蛛の巣作ってやがるぞ。


 蜘蛛の巣に蛾が捕まってもがいている有様を暇つぶしがてらに見ていると、馬車のドアが開いて二人の男がやってきました。それはロビンさんと私の腹心であるカゲの二人です。


「ジーナさん気分はどうですか」

「最悪ですよ」


 ロビンさんからの挨拶に直で返すと、ロビンさんが満足げにうなずきました。


「それは残念ですね、これでも最高級の馬車を用意したんですよ。封印空間を内蔵した馬車なので、見た目より内部が拡張されている上に空調や室温等も快適なはずなんですが、なにか不満でもありましたか」

「自分の人を見る目のなさに不満がありますね。ロビンさんに裏切られるとは思ってもいませんでした」

「ほう」


 この世界で人に裏切る裏切られるなんてのは普通のことです。しかし私はロビンさんが裏切りをする側の人間だと思っていなかったのです。そんな未熟過ぎる人物眼を持っていた自分自身に腹が立っています。


「ジーナさん、そんなに私を信頼していたんですか?」

「はい」

「人間の中では英雄と呼ばれていて、エルフ達に対して拷問まがいのことをしている私を本当に信頼していたんですか?」

「それでも信頼はしてましたよ」


 でも考えてみればこいつに信頼できるところなんて全くありません。推理小説であれば登場人物紹介の時点でこいつ犯人以外ねえだろってキャラがロビンさんでした。経歴、性癖、胡散臭さと三拍子揃った存在、それがロビンさんです。


「ところでなぜこんな事になってしまったのか、それについてはジーナさん御自身で理解していますか?」

「はい、もう完璧に理解しております」


 そうです、私がこうなった理由について心当たりがありました。


「私がこうなった理由は一言で言えば私が邪魔だからです」

「ほう」


 私自身わかっていました。自分の行ったことがあまりに凄すぎるということに……


「たかだか一エルフが、肩書きだけが誇りの街のお偉いさん達が解決できなかった問題を華麗に解決、エルフ人気うなぎのぼりで私に嫉妬したからです。人間が持つ醜い感情のせいでこのような理不尽な待遇を私が受けることになったのです」


 人間とエルフはやはり相容れない。エルフの持つ高潔な魂と人間が持つドゲロな魂では相容れないのです。知能どころか精神の高潔さでもエルフは人の遥か高みにあるのでした。


「そうですか、嫉妬ですかー、んー……ジーナさんよく聞いて下さい」

「はい」

「完全に間違ってます」


 ロビンの奴がそう言い切りました。


「いやもう完全に間違ってます、別に誰もジーナさんに嫉妬していません。ていうか、ジーナさんの見立て通り、ジーナさんがちゃんとやっていたら私はボーナスでもなんでも出していましたよ? 裏切るつもりなんてまったくなかったですし、ジーナさんの人を見る目が正しかったというわけですね、その目は大事にして下さい」


 何という適当な言葉なのでしょうか。よくもこうも嘘偽りを並べ立てることができます。厚顔無恥の極みとも言える人間の心の黒さに私は恐怖を覚えます。人とは、ここまで醜いものなのでしょうか。


「見損ないましたよロビンさん、そんな嘘を言うなんて。貴方はたとえ自分がどれだけ悪くてもそれを受け止める事ができる人だと思っていたのに……」


「それはありがとうございます。では最初から状況を整理しましょうか、まず私がジーナさんに街に蔓延る麻薬をなんとかして欲しいと言ったところからですね」


 もう話を聞きたくない、私は言い訳しか言わないこの男の言葉にうんざりしていました。しかし身動きのできない私に対してロビンさんは容赦なく言葉を続けます。


「ジーナさんはこの薬を作り上げて麻薬の中毒者達に飲ませていた、それはいいですよね」


 ロビンさんがそう言って取り出したのは小さな約錠の薬でした。その薬こそ私が作り上げたキワムシスペシャルです。

 私に取り付いているキワムシの妖精さん達が作り上げた薬で、キワムシの健康効果を残しつつ味の不味さをなくした究極の健康薬。ただ、一度摂取すると毎日薬を飲み続ける必要がある上に、薬を飲み忘れたら禁断症状が出てくると言う問題もありますが、そんなことは些細なことです。


「はい間違っていません。その薬を飲ませて沢山の人間を救いました」

「あのですねジーナさん、私は麻薬をなんとかして欲しいと言ったのに、なんで新しい麻薬を作ってそれを売り捌いていたんですか。さっき私を裏切り者と言いましたが、ぶっちゃけジーナさんの方がこれでもかってくらい裏切りましたよ」


 麻薬? 今なんといいました? 私が麻薬を作って売り捌いていたですって?


「ロビンさんそれはどういうことですか、むしろ私は麻薬に苦しむ人間を救ってあげていたんですよ」

「いえ、ジーナさんの作り出したこれ、どう考えても性質の悪い麻薬でしたよ」


 何ということでしょう、ロビンさんの気が狂ってしまわれました。


「どう見たら私の薬が麻薬になるのでしょうか。むしろ私の薬は麻薬に蝕まれていた体を治した上に、社会復帰までさせているんですよ」

「いやもうそこについては純粋に凄いと思いますよ」


 ロビンさんも今認めたように、私の薬は素晴らしい治療薬なのです。一体どこをどうみたら危ないお薬になるのでしょうか? これほど不当な言いがかりは受けたことがありません。


「でもなんですかこの依存性は。たった一錠飲んだだけで薬が切れたら一ヶ月以上狂い続けるとかなんの薬ですかこれ、おかげで前よりも遥かに問題が深刻になりましたよ。しかも薬が切れている最中でも身体だけは健康過ぎるから、どれだけ狂い続けても身体が壊れない、気絶する事もできない、暴れ続けても一切体力の切れる事がないとか悪魔の薬ですかこれ?」


 どうやらロビンさんは健康というものが気に入らない様子。これは人として間違った道に進んでいます。


「健康なんだからそれは当然ですよ。死にかけのおじいちゃんでも一錠飲んだら全盛期の体力と筋力と軟骨を取り戻せる奇跡の薬ですからね」


「いやだから、おかげで人手がいくらあっても足りません。薬が切れた人達が普通に暴行や障害事件を起こすし、暴れまわるから治療のための施設に入れることも難しいしで大変なことになっているんです。もうぶっちぎりでアウトですよジーナさん」


 ロビンさんと話が合いません。彼は人の心を失ってしまったのでしょうか? この世界で一番大切な物は何か、それは健康です。健康こそが人生にとって一番の財産なのです。


 だからこそ、病気や怪我で苦しんでいる人を私は救いたい。麻薬で蝕まれた身体に苦しむ全てのネストの街の人間達に愛の手を差し伸べたい。そんな私の思いと妖精さん達の愛が詰まったのがこの薬なんです。

 そう考えてみれば薬が切れたら多少暴れてしまうなんてのはかわいいものですよね。


「それとジーナさんは、この薬を売ってましたよね」

「それがなにか?」

「どれくらい儲けました?」


 やれやれ、今度は金銭の話ですか。


「それは当然儲けましたよ、私が労働の対価を貰うことはそんなに悪いことですか?」

「対価を貰うのはいいのですが、どれくらい儲けました?」


 金銭の額がどうしたというのでしょうか。そんなことは大きな問題ではないはずです。


「カゲさんあれを」

「はい」


 ロビンさんの傍らにいたカゲがそっとロビンさんに手帳を渡します。あれは!!


「これはジーナさんの店の帳簿ですね。まあそれで見てみますと、初週の売上はともかく……なんで二週三周目と週を跨ぐごとに売上が30倍ずつ膨れ上がり続けているんですか」


「それは私の薬がそれだけ人気だからですよ、流行が来れば店の売上が上がる、当然の事ですよね」


 需要と供給が噛み合った、それだけの話しです。ブームに合わせて商店が大きくなるのは当然の話しでして、それを咎めるのは理不尽の度合いが過ぎていると思います。


「依存性のあるリピーターの強い薬の販売でですか?」

「そうです」

「それは麻薬では?」

「私の薬は人を幸せにする物ですよ。例えば美味しい料理を味わったり、楽しい娯楽施設で一時楽しむのと何が違うんですか。むしろ、身体は健康になりますから麻薬とは対極にある物です!!」


 ついつい語気が荒くなってしまいましたが、それは仕方ありません。他人を助けるために頑張ってきたのにこの仕打はありません。私に取り付いている妖精達もいつの間にか現れてメソメソ泣いています。なんて可愛そうなんでしょうか……


 私の言葉に特に感銘受けてないロビンさんが手元のメモ帳を開いて話し始めました。

「例えばですが、とある未亡人が亡き夫のくれた指輪を後生大事に身に着けていたそうです。どんな困窮でも、自身が麻薬に侵されて代金が足りなかったときでもです」


 それは随分愛の深い女性です。きっとですが、薬でどれだけ精神が錯乱しても愛だけは忘れなかったのでしょう。人の美しさが垣間見えます。


「で、その女性なんですがジーナさんの薬を摂取して、それが切れたらその指輪を即売っぱらって金に変えたらしいです。いやもうどう考えてもこっちのほうが依存性高いでしょ、何を作ってるんですかジーナさん」


 そんな大事な指輪を売ってまでも私の作った薬を欲しがる、この女性はまさに健康の尊さに目覚めたお方です。どんな愛なんかよりもスクワットやマラソンを軽くこなせる肉体の力のほうが大事だ。その真理に到達しています。


「とても美しいお話ですね、私のやったことが間違ってなかったとわかります」


 キワムシの妖精さん達も喜んでいる中で、私も素の言葉が出てきました。腹の中からすっと出てきた、間髪入れる必要のない言葉です。


「いや美しさは微塵もありません。というか、そこまで言うのならジーナさんは自身が作り上げた薬を摂取できるので」


 やれやれそんな事ですか。そんなことは決まってます。


「こんなクソみたいな薬を飲むわけがありません。大体、薬に依存している時点で全く健康じゃありませんからね。人生の長さも忘れて一瞬一瞬を楽しむなんて性質は私にはないんですよ」

「ほう」


 当たり前です。飲んだら力溢れて一日摂取しないだけで見境なく暴れるとかバーサーカーでも誕生させたいのかって話です。知性あふれるエルフがこんなもん体内に入れるわけないんですよ。


「ですが知っての通り私の脳細胞と人様の脳細胞は違います。私にとって害悪極まりないドブのような薬でも人によってはダイヤモンドになります。埋まらない人生観の差を金銭で補っていたと言うだけの話ですね。その金銭の差額は当然私の懐に入ります」


 私の言葉に妖精さん達がショックを受けていました。ちなみに私が売っていた薬は全部コイツラが作っていたもので、開発、制作、その他諸々コイツラが頑張っていたというわけですね。ですので、私が摂取するわけがありません。飲ませるとしたら赤の他人に限ります。


 私の完璧ディベートに流石のロビンさんも、たじたじのようです。私の言い分全部聞いて黙ってしまいました。


「……よしっわかりました。ではこのまま私の上司のところにまで連れて行ってそこで処遇を決めましょうか」

「待って下さい!! 逃げるんですかロビンさん、言葉で勝てないから力でなんとかする、そういうわけですか」

「そうですよ、もう特に言うこともないので力でなんとかします」


 何ということでしょう、この男、言うこともないと白旗を上げたくせに自身の敗北を認めていません。しかも力でなんとかすると認めています。つまりこれは私の理屈が正しいけど、それを力で覆すということです。


 私の正しさが証明された、されたのですが、力が足りません。やはり正しさを貫くには力が必要なのです。


「それと、ジーナさんのお師匠さんが戻ってきたら今回ジーナさんがやったことを告げ口するつもりです。まあ反省しているのなら別ですが」

「すいませんでした、どうかそれだけは許して下さい。出来心だったんです」


 秒で私は謝ります。だってどう見ても、こんなもん麻薬でしかありませんからね。大体、この妖精共が作り上げた薬ですよ? そんなもん健康になるだけで済ませられるわけがないって話です。そら極悪な麻薬の一つや二つにもなります。


「私も最初は真面目にやろうとしたんです。でもふとできてしまったんですよこの薬が。そんなのどう考えても薬として売って金儲けするに決まってるじゃないですか。しかも肉体だけは健康になれるから、ちょっと詭弁言えば合法になれるかも知れないんですよ」


「いやどう詭弁を言っても駄目だったと思いますけどね。ではとりあえず私の上司のところまで行きましょうか。私の上司ですから、まあ話せばわかってくれますよ。最悪殺されるかも知れませんが、それだけなら私達から見れば幸せの範囲です」


 そうでしたロビンさんの上司、つまりロビンさんと太郎とジョンの上司です。どんな化け物が待っているかわかりません。おしゃべりしてる暇なんてなかった、全力で逃げる場面でした。しかし、どれだけ力を振り絞っても身体は動きません。拘束しているこの魔法が完璧すぎるのか四肢がピクリとも動きませんでした。


「では行きましょうか、私の上司がいる王都まで」


 抵抗虚しく、そのまま馬車が王都に向けて移動をはじめました。


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