EX話 ジーナちゃん①
師匠が旅立ってから二週間、もうそろそろエルフの国も滅亡してんじゃねえのかなと思い始めてる今日この頃。私はそんなもんに思い煩うより、自身の調子を復活させる事を最優先にしていました。
クソ天竜との戦いは私にとんでもない心の傷を与えていたのです。元気いっぱい天真爛漫なジーナちゃんまだ完全復活できていません。そして、それはあるものが足りないからです、そのあるものとはずばり――
「アイドルパワーが足りませんねえ……」
そう、皆さん知っての通りアイドルパワー、それが足りないのです。
美少女が人生を生き抜くために必須とも言えるこの力がないとあっては、ジーナちゃんが世界に羽ばたくのも無理なのは当然と言えることでしょう。
「なんですかその力は、私は聞いたこともありませんが」
私にそう話しかけてくる人間がいました。その男は人類が誇るド変態の一人、英雄ロビンさんです。見た目は良い年した紳士面の男性なのですが、死体をこよなく愛する彼は、人間が持つ負の部分の一角を体現した存在と言っても過言ではありません。そんな彼は、なぜか私の周りをこうしてうろついています。本当にやめてほしいですね。
「アイドルパワーというのはですね、美少女が自身の美を自覚した時に目覚める正義の力の事です。世界の人々に夢と優しさを振りまこうという意思が、神のミラクルエネルギーとなって自身の体からあふれてくる。その力をアイドルパワーと呼ぶのです」
「ジーナさんはいつもどおり精神の均衡が危ういですね」
やれやれ、ロビンさんにこの力はわかりませんか。それもそうか、この力は美少女に生まれた者にしか自覚できない力です。ロビンさんはおっさんですから、わからないのも無理はありませんね。
「でも元気そうで安心しましたよ。私は個人的にジーナさんのファンですからね」
私のどこが元気そうなのでしょうか。今日も私は朝食腹八分目、十時のおやつは腹四分目、昼食ガッツリお肉の定食と胃腸に負担を掛けた生活をしているというのに。こんな私が元気とか、私の大腸さんの蠕動力を少々評価し過ぎではないでしょうか。
見当外れのロビンさんに少々の憤りを覚えていると、ロビンさんが話しを続けてきます。
「そこまで元気なら、私の仕事を手伝ってくれませんか? ジョンと太郎が死んでしまったので、人手が足りないんですよ」
そう、実は愛するジョンと太郎は死んでしまいました。師匠とフィーネさんの戦いに巻き込まれてしまったらしいのです。
筋肉と覆面とリョナをこよなく愛していた彼らは、私の身体にも大変な興味を持っていました。変態拷問紳士ロビンさんの助手にふさわしい性癖を私に対して向けていたわけですね。
師匠のやつ良く殺ってくれたと褒めたい所です。あいつが私のために役立ったなんて、これが初めてじゃねえかな。
それはともかく、私はロビンさんからの誘いを丁重に断ることにします。
「ロビンさん、私では貴方の役に立てそうもありません。またおかしな仲間達でも見つけてエルフの剥製でも死体でも集めていて下さい」
「ああいえ、そっちの仕事ではなくて普通の治安活動です。現在、この街では街の大部分が崩壊したり、騎士団や自警団が壊滅状態になっていたりと、治安に手が回らないんですよ。そこでジーナさんの手を借りようかなとおもいまして」
どうやらロビンさんの趣味ではなくて、普通の治安維持をしましょうと誘ってきてるみたいです。まあこれの何割が本当なのかはしりませんが、さてどうしましょうかね。
「リハビリがてらでも良いので手伝ってくれませんか。当然メリットもありますよ、手伝った分だけジーナさんの評価が上がります。そうすれば国から目を付けられる事も少なくなりますね」
そうでした、エルフの国からの破壊工作員だとかなんとかの疑いで私は目を付けられているのでした。私にそんな嫌疑がかけられるなんて、理不尽というのは世の中にあふれている物なのですね。
「私個人としてはジーナさんにちょっかいを掛ける気はないのですが、上から強く言われたら動くしかないんですよ。でもそこで、ジーナさんが人間社会にこれだけ役に立ちましたって実績があれば、少しは抵抗できるんです」
まあ、天竜と戦ったり竜人と戦ったり師匠と半径3メートル以内に一緒にいたりとか、そういう命の危機と比べれば楽そうなのは確かです。
それに、私は闇系の仕事ばかりしていたので、まっとうな仕事というのにもちょっと憧れる気持ちがなくもないです。
「わかりました良いでしょう、不肖このジーナ、街の治安維持の為に一肌脱いでやりましょう」
「良かった、ではこれから少しの間、よろしくおねがいしますねジーナさん」
街のアイドル改め、街の婦警さんとしてジーナちゃんは全力で動くとしますか。




