表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/120

120 アイシテル

 映画館の灯りのように目まぐるしく瞳を過ぎるハイウェイのライト。

 平行をたどる視線。

 吸い込まれるほどにまっすぐに伸びた中央線。


 夕の終わりが迫っている。

 灯りはもう微か、西の空に茜が残るだけ。

 宵闇が、やがて二人の背中に手を伸ばすだろう。


 彼は自分の弱さを知っている。

 けれど、できれば強くありたいと願っている。

 だから、どうしても呼んでしまう。

 自分を強くする、その名を。

 何度でも、何度でも。


「トワ……」

「……ん?」

「……いや、なんでもない」


 彼女は、運転席の彼を横目でちらと仰ぐ。

 その瞳の感情に気づかれないように。

 こらえきれなくて、全てを吐き出してしまいたい衝動に刺し貫かれる。

 本当は崩れそうな、泣き出しそうな頬を、長い髪で隠す。

 そして、やがて、唇がつぶやく。

 そっと、静かに。


「モトキ……」

「なに?」

「……ううん……」


 彼は知り、彼女も知っている。


 宵闇までの時間は、もう残り少ない。

 けれど、まだ、言葉に出来ない。


 だから、視線は平行線を保ったまま、彼らは別々に思う。


(やっぱり、僕は、君を、)

(それでも、私は、あなたを、)


 その先を知るまでには、まだ、少しだけ、時間がかかる。                                                                                                                                                                                                         

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
http://nnr2.netnovel.org/rank01/ranklink.cgi?id=koguro
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ