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113/120

113 そして、きっと、また出会う

 三年間にわたって私は彼女を捜し、殺そうとしてきた。いつだってそのことばかり考えてきた。

 兄の復讐。お兄ちゃんが、このトウキョウでどうして独り銃弾に倒れたのか。

 でも、

 でも、彼女はただひとり、こうして三年ひっそりと悔いてきたのだ。シンヤに支えられながら、兄のような深い静けさをたたえて。

 そして、兄は……、

 兄の気持ちは、あの告発文書の中にあった。

 その中にトワの記述かないことが、兄の気持ち。

 文書を読んで、そして、私にはすぐに分かった。自分の、暗い情熱を持った三年間が虚しくて泣いたけれど、だけど、決して不快ではなかった。

 私は人知れず微笑む。

 ううん、むしろ、

 多分、

 私は……


「『あの島』ってね、香港のことだったのよ。普通でしょ? なんでもないことなんだけど……でも、一度だけ、一度っきりだけど、あなたのお兄さんと旅行に行ったことがあったから」

「じゃぁ、シンヤは……」

「彼は捕まったりはしない。そして、また会える」

 そこだけ自信を持ってトワは言った。


 車の外がまた騒がしくなった。

 津久田が帰ってきたようだ。彼は一言二言君国と話をすると、助手席に乗り込んできてこちらをふり返った。

「拳銃は見つかったんですが、武石シンヤは見つかりません。どこか、思い当たるところはありますか?」

 津久田は困惑した顔でトワを見ている。


 ね? という顔でトワは私を見た。

 私は何だか思いきり笑いたくなって、下を向いて笑みをもらした。

 何故だか目尻に熱いものが込み上げてきて、静かで透明なものが頬をこぼれた。


                                                                                           

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