113 そして、きっと、また出会う
三年間にわたって私は彼女を捜し、殺そうとしてきた。いつだってそのことばかり考えてきた。
兄の復讐。お兄ちゃんが、このトウキョウでどうして独り銃弾に倒れたのか。
でも、
でも、彼女はただひとり、こうして三年ひっそりと悔いてきたのだ。シンヤに支えられながら、兄のような深い静けさをたたえて。
そして、兄は……、
兄の気持ちは、あの告発文書の中にあった。
その中にトワの記述かないことが、兄の気持ち。
文書を読んで、そして、私にはすぐに分かった。自分の、暗い情熱を持った三年間が虚しくて泣いたけれど、だけど、決して不快ではなかった。
私は人知れず微笑む。
ううん、むしろ、
多分、
私は……
「『あの島』ってね、香港のことだったのよ。普通でしょ? なんでもないことなんだけど……でも、一度だけ、一度っきりだけど、あなたのお兄さんと旅行に行ったことがあったから」
「じゃぁ、シンヤは……」
「彼は捕まったりはしない。そして、また会える」
そこだけ自信を持ってトワは言った。
車の外がまた騒がしくなった。
津久田が帰ってきたようだ。彼は一言二言君国と話をすると、助手席に乗り込んできてこちらをふり返った。
「拳銃は見つかったんですが、武石シンヤは見つかりません。どこか、思い当たるところはありますか?」
津久田は困惑した顔でトワを見ている。
ね? という顔でトワは私を見た。
私は何だか思いきり笑いたくなって、下を向いて笑みをもらした。
何故だか目尻に熱いものが込み上げてきて、静かで透明なものが頬をこぼれた。