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108/120

108 だって、仕方ないじゃない。私は……

 朝日が地平線から顔をだした。待ちくたびれるほど待ちこがれた朝が、やっと私達の足元を照らしはじめた。公園の草の一筋一筋までをも、光のはけは余すところなく照らしつける。

「ファイルを読んだわ。ホテルの貸し金庫に預けてあったわね」

「……」

「藤堂さんもモトキも、シンヤ、あなたが……」

「トワ、黙りなさい」

 シンヤの拳銃が私から逸れた。腕を持ち上げ、それが静かに動いてトワのほうを向いた。

 彼女は広場の隅に立ち止まって、黙った。

 波の音。

 ゴクリ、シンヤが息を飲む音が聞こえた。

 彼の表情に初めて人間的なものが混じった。それは、あの明るく快活な「彼」の表情だった。困惑、悲壮、そんな言葉では表せない。彼がこの三年間隠し続けてきた表情だった。

 車が近付いてくる。どこか、近く。

「あんたがあの時、モトキを殺すという任務をいつまでも渋っていたから……武石は私に彼を殺させた。だって、仕方ないじゃない。私は……」

 彼は言葉を詰まらせた。

 車の音が近付いてくる。

 パトカーのサイレンも近付いてくる。どこか近く。世界の座標の中で自分の位置は分からないけれど、私の近くだということは分かる。それで良かった。多分それがこの世界での私のすべてだ。

 朝日が昇る。今日を告げる。人を起こす。そうして、刻がまわりはじめる。


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