黒き天使(ブラック・エンジェル) 第二期 第34話
いつも『黒き天使』を読んでくださり、ありがとうございます。
第34話では、大きな戦いの前に、それぞれの「心の戦い」が描かれます。
ララは母との関係に悩み、レオンは守ることの意味を考え、リーは誰にも頼らず罪を背負い続けています。
愛する者を守るために、人は時に優しくなり、時に冷酷にもなります。
この物語では「戦い」は剣や力だけではありません。
赦すこと、信じること、待つこと――それもまた戦いです。
それでは、第34話「愛と戦争の重さ」をお楽しみください。
「愛と戦争の重さ」
宇宙船アルファの食堂は、いつもより静かだった。
柔らかな白い光の下、ララはテーブルに座ったまま俯いていた。
頬を伝う涙が止まらない。
「……もう無理です、リウ先生」
彼女は小さな声で言った。
「お母さんは、神様が何をしているのか全然見ようとしない……地位と権力のことしか考えてない……」
向かいに座るリウは、落ち着いた表情のまま聞いていた。
「そんなふうに言ってはいけない、ララ。君のお母さんも苦しんでいる。リーは、君たちを巻き込まないように一人で背負おうとしているだけだ」
ララは拳を握る。
「分かってます……でも……私はダリアムとは結婚しません。お母さんは、リーが死ぬのを怖がってるだけなんです……」
リウは静かに答えた。
「それでも、君を愛していることに変わりはない」
その時だった。
「……また喧嘩したのか?」
声がして、二人は顔を上げた。
訓練を終えたレオンが立っていた。汗で濡れた髪をタオルで拭いている。
彼はゆっくり歩み寄る。
「ララ、覚えてるか? 俺たちが話した“自制心”のこと」
ララは涙を拭いながら頷く。
「俺も毎日、自分の中の何かと戦ってる。でもそれは俺だけじゃない」
レオンは穏やかに続けた。
「イエスは言ったんだ。この世界には苦しみがある。でも勇気を持てって。もう彼は勝っているから」
ララの表情が少しだけ柔らぐ。
「それから……父と母を敬え、とも言った」
彼は微笑む。
「だから俺は、君の“守護者”として命令する。お母さんを抱きしめてこい」
「……え?」
「心からな。体だけじゃなく」
ララは静かに息を吸い、小さく笑った。
その少し離れた通路の影――
そこには、ラウラが立っていた。
すべて聞いていたのだった。
「俺たちはリーを止める」
レオンはリウの腕を掴んだ。
「俺とララで、アレスと戦う前にリーを倒す」
リウは苦笑する。
「私は賛成ではない……だが、もし彼が倒れたら、私が立つ」
その言葉を聞き、通路の影でラウラは口元を押さえた。
そして誰にも気づかれず、静かにテレポートして消えた。
一方その頃――
赤い空の下、リーは山の頂に立っていた。
「……また一つ」
黒い炎が剣を包む。
彼は要塞へと歩き出す。
次の瞬間、警報が鳴り響いた。
そして――
虐殺が始まった。
剣が閃き、兵士が倒れる。
血が石壁に飛び散る。
だが彼は止まらない。
「未来に残す“敵”は……ここで終わらせる」
爆発。
炎。
崩壊。
だが檻の奥から、震える声がした。
リーは剣を下ろし、静かに鎖を断ち切る。
解放された捕虜たちは、涙を流して彼を見た。
リーは何も言わず、背を向けた。
その報告は、すぐに王へ届いた。
クリザンド王宮――
「また基地が破壊されました、陛下。リーが……同じ言葉を残しています」
玉座から、ゆっくりと立ち上がる影。
アレスの目が赤く光る。
「……全軍を集めろ」
重い声が響いた。
「誰一人、欠けるな」
その夜――
ラウラの指揮室。
ララは何も言わず近づき、母を抱きしめた。
「……ごめんなさい」
ラウラは目を閉じる。
そして――
静かに抱き返した。
翌日。
訓練室の中央で、レオンは瞑想していた。
扉が開く。
オメガ組織の長が入ってくる。
「君がララの相手か。トーナメントに出るそうだな」
レオンは目を開く。
「ええ」
「なら――今、試そう」
周囲の戦士たちがざわめく。
遠くでダリアムが笑う。
(どこまでやれるか、見てやる……)
レオンは立ち上がり、構えた。
空気が張り詰める。
二人が向かい合う。
――戦いが始まろうとしていた。
(続く)
第34話を読んでいただき、ありがとうございます!
今回はアクションよりも、人間関係に焦点を当てた回になりました。
ララとラウラの和解、レオンの言葉、そして裏で進むリーの孤独な戦い。
同じ「守りたい」という想いでも、三人の選んだ道は大きく異なっています。
レオンは人を救うために強くなろうとする。
リーは人を守るために悪役を引き受けている。
そしてアレスは、秩序によって平和を作ろうとしている。
誰も完全な悪ではありません。
だからこそ、この物語の衝突は止まりません。
作者ページでは
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ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
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