第二期 第33話「選択の重さ」
いつも『黒き天使』を読んでくださり、ありがとうございます。
今回は戦闘よりも「心」を中心にした回になります。
リーの行動、レオンの焦り、ララとラウラの衝突――それぞれが正しいと思って選んだ道が、少しずつ未来を変え始めています。
正義とは何なのか。
守るとはどういうことなのか。
そして、愛する者を守るために、人はどこまで踏み込めるのか。
この物語の大きな軸が、ここから少しずつ見え始めます。
それでは、第33話をお楽しみください。
荒廃した惑星の空は、灰色の雲に覆われていた。
かつて文明が存在したその星は、戦争によって完全に破壊され、都市は瓦礫の山へと変わっていた。
その大地に、数えきれないほどの難民たちが集まっていた。
傷を負い、疲れ果て、それでも彼らは一人の男を見つめていた。
リーは、血のついた剣を握りしめたまま、ゆっくりと前へ出た。
彼の目には涙が滲んでいた。
「……俺は近いうちに、クリザードの王になる。」
ざわめきが広がる。
「そのために、俺は……道を塞ぐ者を排除している。」
一瞬、言葉を飲み込むように沈黙する。
「混乱が起きていることも分かっている。だが覚えていてくれ。平和の代価は……安くない。」
難民たちは静かに彼の言葉を聞いていた。
リーは空を見上げた。
「アレスのように、お前たちを政治の道具にするつもりはない。」
拳を強く握る。
「悪が勝つのは……善が沈黙した時だ。」
彼は震える声で続けた。
「俺は、愛する者のために命を懸ける。そして……創造主が、この世界を見限る前に止めたい。」
人々の中から涙があふれる。
「リー! リー! リー!」
歓声と嗚咽が混ざった声が広がった。
「クリザードの王となった後、俺はすべての種族を解放する。だがそのためには……俺の前から去ってもらう者も出る。」
彼は目を閉じた。
「だから……誰も巻き込まない。これは俺一人でやる。」
その言葉に、多くの者が膝をついた。
一方、アルファ組織の訓練室。
レオンはホログラムの敵に向かって拳を叩き込んでいた。
何度も、何度も、倒しては立ち上がる。
息が荒い。
(置いていかれるわけにはいかない……)
拳から血がにじんでいた。
(リー……待っててくれ。俺は、もっと強くなる)
彼はさらに強く拳を握った。
同時刻――クリザードの王座の間。
青い炎が灯る巨大な玉座に、アレスが座っていた。
その前に、スピルリアンのホログラムが浮かんでいる。
「お前の落とし子は、自分を王だと思っているようだな」
アレスは冷たい視線を向けた。
「王座を望む者は、クリザードでは珍しくない。」
「だがリーは違う。彼はこの地で生まれていない。さらに……我らの同胞を多く殺した。」
スピルリアンは笑った。
「同盟さえ続けばいい。続かなければ、我々が彼を殺すだけだ」
アレスは立ち上がった。
「……狩りはやめろ。」
静かな声だったが、空気が凍る。
「もし我が軍が止められぬなら、神々の戦士を名乗る資格はない。」
ゆっくりと歩きながら言う。
「これは、我らの戦いだ。」
彼は闇を見つめた。
「もし私がリーに敗れたなら……その時は好きにするがいい。」
その頃、組織の艦内――ララの部屋。
母・ラウラがベッドに座り、ララを睨んでいた。
「ララ、正直に言いなさい。リーは何か言っていた?」
「……いいえ。」
ララは目を逸らさなかった。
「でも、今の兄なら……反対勢力を消して、クリザードを揺さぶってるはず。」
ラウラは息をつく。
「全部終わったら、あなたはダリアムと結婚しなさい。」
ララの表情が凍る。
「……は?」
「あなたとレオン、付き合ってるの?」
「違う……でも、私はレオンが好き。」
ラウラの目が鋭くなる。
「あなたはまだ分かっていない。あの子は危険よ。」
ララは震えながら言った。
「私はイエスを受け入れたの。」
沈黙。
「……正気?」
ラウラの声が震える。
「あなたは伝統を捨てるの?」
「伝統より大事なものがある!」
ララの目に涙が浮かぶ。
「私は、兄を止めたいの!」
次の瞬間――
パァン!
ラウラの手がララの頬を打った。
ララは涙を流しながら部屋を飛び出した。
残されたラウラの手が震えていた。
廊下で、ララは壁にもたれ泣いた。
遠くで、レオンはひたすら訓練を続けている。
瓦礫の中を歩くリー。
玉座で静かに笑うアレス。
そして暗い部屋で泣き崩れるラウラ。
それぞれの選択が、未来へとつながっていく。
人は、選択から逃げることができない。
そして――
その重さを、いずれ必ず知ることになる。
(第33話・完)
第33話を読んでいただき、本当にありがとうございます。
この回は、アクションではなく「選択」の物語でした。
リー、レオン、そしてアレス――三人はそれぞれ違う「正義」を持っています。
・レオンは「救い」を信じている。
・リーは「争いを終わらせるための戦い」を選んだ。
・アレスは「力による秩序こそ平和」と考えています。
誰が正しいのかは、まだ分かりません。
ですが、この三つの思想の衝突こそが『アンジョ・ネグロ』の物語の核心になります。
また、作者ページには
・キャラクタープロフィール
・世界観設定
・楽曲(Anjo Negroのテーマ)
・外伝
も公開していますので、よければそちらもご覧ください。
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ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました!
次回もよろしくお願いします。




