黒き天使 — 第232話 『約束と影の狭間で』
ここまで『黒き天使(Anjo Negro)』を読んでいただき、本当にありがとうございます。
激しい戦いのあと、物語は少しだけ静かな時間に入ります。
しかしその静けさの中でこそ、キャラクターたちの「本音」や「選択」が浮き彫りになります。
今回は戦闘よりも、人間関係や過去、そしてそれぞれの想いに焦点を当てたエピソードです。
物語の土台が大きく動き始めていますので、ぜひ最後までご覧ください。
黒き天使 — 第232話
『約束と影の狭間で』
組織内の休息エリア。
外の混乱とは対照的に――
ここには静けさがあった。
ジーラ、レニ、ナンド、ジュン。
全員が座り込み、疲労を隠さない。
沈黙を破ったのはレニだった。
「……ヴァロンって、本当は何者なんだ?」
短い静寂。
ジーラは息を吐く。
「彼は、XPの最高司令官だった」
全員が反応する。
「アレスに“殺された”の」
「ラウラ長官との関係がバレた時に」
ナンドが眉をひそめる。
「じゃあ、全部それが原因か?」
ジーラは首を振る。
「違う」
「それは表面だけ」
空気が重くなる。
「ヴァロンは――リーを育てた」
全員の視線が集まる。
「クリザードの王にするために」
「そしてXPを、再び宇宙の頂点に戻すために」
沈黙。
「でも今は……」
彼女は視線を落とす。
「もう何のために戦ってるのか、分からない」
レニが腕を組む。
「つまり――両方を利用してたってことか」
ジーラは即答する。
「彼は、常に全員と駆け引きしてた」
空気がさらに重くなる。
――
ジュンが静かに口を開く。
「この話……」
「私はドリア長官が気の毒」
全員が彼女を見る。
「ラウラにプロポーズしてたのに……」
沈黙。
視線が交差する。
誰も言葉にしない。
だが全員が理解していた。
――
場面転換。
回復室。
穏やかな空間。
ララは座っている。
ラウラが隣にいる。
レオンは立ち上がる。
「ちょっと外、行ってくる」
彼はララの額にキスをする。
そのまま出ようとする――
だが。
ラウラが彼を引き寄せる。
強く。
必死に。
「あなたを失ったと思った……」
声が震える。
「もう……やめて」
目を閉じる。
「ごめんなさい」
「武器のこと……隠してて」
沈黙。
「もう二度と隠さない」
レオンは彼女を見る。
穏やかに。
責めることなく。
「大丈夫だよ」
彼は彼女の手を取り――
軽く口づける。
「人は、学ぶから」
微笑む。
そして――部屋を出る。
――
静寂。
ララが母を見る。
真剣な目。
「お母さん」
ラウラが振り向く。
「話がある」
空気が変わる。
「レオンから聞いた」
「ヴァロンのこと」
ラウラは理解する。
だが黙る。
ララは続ける。
「今度は私が言う番」
緊張が走る。
「ドリア長官と結婚して」
ラウラの目が揺れる。
「ララ……」
ララは逸らさない。
「彼はいい人」
「私は、あなたに諦めてほしくない」
声に強さがある。
「もう兄を失った」
「これ以上――誰も傷つくのを見たくない」
ラウラは視線を落とす。
「私は結婚できない」
沈黙。
「あなたのお父さんが言ったでしょ」
「もしドリアに何かあったら……」
声が震える。
「私は耐えられない」
ララの目が鋭くなる。
「それは言い訳だよ」
沈黙が突き刺さる。
ラウラは視線を逸らす。
「話題を変えましょう」
「ヴァロンとはもう関わらない」
「私はそんな人間じゃない」
――
その瞬間。
ドアが開く。
ヴァロンが入ってくる。
ラウラの体が固まる。
顔が赤くなる。
「元気そうだな、ララ」
誇らしげな眼差し。
「聞いたよ」
「新しい力も」
ララは微笑む。
「戻ってきてくれてよかった」
ヴァロンはラウラを見る。
少し柔らかい表情で。
「今夜、食事でもどうだ」
静寂。
「俺の家で」
「話したいことがある」
ラウラは一瞬ララを見る。
そして答える。
「今日は予定があるの」
「ララとレオンと」
自然を装う。
「また今度にしましょう」
ヴァロンは少し見つめ――
やがて微笑む。
「分かった」
一歩下がる。
「会いたかった、ラウラ」
ラウラは答えない。
ただ――
目を伏せる。
――
場面転換。
クリザード宮殿。
王座。
カエロンが座っている。
冷たい威圧感。
部下がひざまずく。
「惑星中を捜索しましたが――」
「見つかりません」
カエロンは目を閉じる。
一瞬。
そして開く。
「探し続けろ」
冷たい声。
「遠くへは行けない」
――
場面転換。
組織の廊下。
ダリアンがドリアの前に立つ。
ニヤリと笑う。
「父さん」
「ライバルが戻ってきたな」
沈黙。
近づく。
「また負けるのか?」
冷たい言葉。
「その“正しさ”に何の意味がある?」
一歩近づく。
「その家族……本当にあんたのものか?」
沈黙。
ダリアンは笑う。
そして去る。
――
ドリアはその場に立ち尽くす。
頭を下げたまま。
言葉もなく。
ただ――
重さだけが残る。
続く――
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
今回は戦闘ではなく、「人間関係」と「選択」に焦点を当てたエピソードでした。
ヴァロンの過去と立ち位置、ラウラの葛藤、そしてドリアの苦しみ。
それぞれの想いが複雑に絡み合い、物語はさらに深くなっていきます。
また、ララの成長も重要なポイントです。
彼女はただ守られる存在ではなく、自分の意志で人を導く存在になりつつあります。
そして裏では、カエロンの支配とアレスの行方。
すべてが静かに動き続けています。
次回は再び大きな動きが訪れるかもしれません。
ぜひお楽しみに!




