『黒き天使』 シーズン6 第228話 「最後の息まで」
ここまで『黒き天使(Anjo Negro)』を読んでくださり、本当にありがとうございます。
今回のエピソードでは、仲間たちの絆と覚悟が試される極限の戦いが描かれます。
圧倒的な王・アレスに対し、レニ、ナンド、リウが命を懸けて立ち向かいます。 力だけでは届かない相手に、彼らが選んだのは――信頼と連携でした。
どうか最後まで見届けていただけたら嬉しいです。
もはや戦場の面影はなかった。
大地は裂け、無数のクレーターが広がる。
炎。 瓦礫。 空気を震わせる膨大なエネルギー。
その中心に、アレスは立っていた。
荒い呼吸。 燃え盛る赤い炎。
だが、その巨体には確かな疲労が刻まれていた。
そして彼の前に並ぶのは――。
レニ。 ナンド。 リウ。
三人は言葉を交わさない。
必要なかった。
ただ、互いを信じている。
レニが低く呟く。
「行くぞ」
次の瞬間、三人の姿が消えた。
風を裂く音。
まず動いたのはリウだった。
無数の緑の鎖が地面から、空中から、一斉に伸びる。
腕。 脚。 首。
アレスの動きを封じるように絡みついていく。
「今だ!」
その隙を逃さず、ナンドが突っ込む。
常人では視認できない速度。
拳に込められた膨大な力が、アレスの腹部を打ち抜いた。
轟音。
アレスの身体がわずかに揺らぐ。
その瞬間――。
黒炎が空を裂いた。
レニが上空から一直線に落ちてくる。
「はあああああっ!!」
胸部への直撃。
衝撃波が周囲を吹き飛ばし、大地がさらに砕け散る。
アレスは後方へ押し込まれた。
王が、押されている。
アレスは歯を食いしばりながら、苦笑した。
「……なるほど」
「ようやく、チームらしくなってきたな」
三人は止まらない。
リウの鎖が軌道を変え、死角を作る。
ナンドが横から突進し、肩で吹き飛ばす。
その直後、レニの黒炎が隕石のように降り注ぐ。
大爆発。
閃光が戦場を包んだ。
遠くで、その光景を見ていたXprian兵たちは息を呑む。
「まさか……」
「アレスを、押してる……?」
信じられない光景だった。
一方、基地では。
キラがモニターを見つめていた。
震える手。
それでも視線は逸らさない。
「……追い込んでる」
隣で、ラウラが涙を浮かべる。
「お願い……」
「誰も死なないで……」
ドリアも、息を詰めたまま呟く。
「もう、普通の戦争の域じゃない……」
キラは一瞬だけ目を閉じた。
「もし私が妊娠してなかったら……」
その言葉を、ジュンが静かに受け止める。
「でも、今は信じるしかない」
再び戦場。
轟音と共に、アレスの炎が爆ぜた。
巨大な爆発が起こり、三人を一斉に吹き飛ばす。
レニ。 ナンド。 リウ。
それぞれ地面に叩きつけられ、血を流す。
しかし――。
誰一人、倒れない。
アレスは荒く息を吐いていた。
肩で呼吸し、額から汗が流れる。
初めてだった。
王が、明確に疲弊している。
「お前たち……」
低く、重い声。
「少しずつ……俺を苛立たせてきたな」
それでも、三人は立ち上がる。
レニが黒炎を灯す。
「止まるな」
ナンドが拳を握る。
「当たり前だ」
リウが鎖を構える。
「最後までだ」
三人は再び駆け出した。
さらに速く。 さらに鋭く。 さらに強く。
連携は、極限を超えていた。
鎖が動きを封じる。
ナンドが防御を崩す。
レニの黒炎が傷を広げる。
アレスも応戦する。
だが、明らかに動きが鈍っていた。
重い。 遅い。 疲れている。
その姿に、周囲の兵士たちの心が変わる。
一人のエージェントが前へ出る。
「俺たちは、見てるだけじゃない」
別の者が武器を構える。
「そうだ」
「三人だけに背負わせるな!」
次々と声が上がる。
「命を懸けても止める!」
「アレスをここで止めるんだ!」
恐怖を超えて、勇気が広がっていく。
その時――。
アレスが動きを止めた。
荒い呼吸。
口元から流れる血。
それでもなお、王の威厳は消えない。
彼はゆっくりと顔を上げる。
「お前たち……」
「本当に、あと少しだった」
静寂。
その瞬間――。
鋭い金属音が響いた。
一筋の光。
刹那。
一本の剣が、アレスの胸を背後から貫いた。
時間が止まる。
アレスの目が見開かれる。
口元から血が零れる。
彼は、信じられないというように胸元を見下ろした。
己を貫く刃。
膝が崩れる。
戦場が、完全に静まり返る。
誰も動けない。
誰も理解できない。
ただ、絶対王者が膝をつく姿だけが、そこにあった。
そして――。
闇のような沈黙の中、幕は下りる。
続く――
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
今回のエピソードでは、仲間たちの絆と覚悟を中心に描きました。 それぞれの力だけでは届かなかった相手に、信頼と連携で挑む姿は、この物語の大きなテーマのひとつです。
そしてラスト――。 まさかの展開で、次回はさらに大きく物語が動いていきます。
誰が剣を突き立てたのか。 その真意は何なのか。
次の更新も、ぜひ楽しみにしていてください!




