表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

天の呼び声

この宇宙には、

人には知ることのできない戦争がある。

それは剣や兵器だけの争いではない。

光と闇、信仰と反逆、

そして――「選択」の物語だ。

なぜ人は生まれるのか。

なぜ苦しみは終わらないのか。

そして、なぜ“選ばれる者”が存在するのか。

これは、

何者でもなかった一人の少年が、

世界の終わりと希望の狭間に立たされる物語。

運命に抗い、

恐れと向き合い、

それでも前に進む者の――

呼び声の物語である。

第1話 ― 召命しょうめい

学校生活、最後の日が訪れていた。

教室には笑い声と椅子を引く音が響き、夕焼けの光が窓から差し込んでいた。多くの生徒にとって、それは自由と未来の始まりを意味していた。

だが、レオンにとっては違った。

(今日で終わりなのに……)

(俺は、これから何をすればいいんだ……)

(何もかもが、意味を失っている気がする)

クラスメイトたちは別れを惜しみ、連絡を取り合う約束を交わしていた。レオンも微笑みはしたが、それは作り笑いだった。心の奥には、言葉にできない虚しさが広がっていた。

夜、卒業パーティーの会場は明るい音楽と笑顔で満ちていた。若者たちは踊り、写真を撮り、未来を疑うことなく楽しんでいる。

その中で、レオンだけが取り残されたように立っていた。

次第に、周囲の音が遠のいていく。

笑い声も音楽も消え、残ったのは重苦しい沈黙だけだった。

その夜、レオンは自分の部屋に戻った。テレビからは、戦争、暴力、腐敗――終わりのない悲劇のニュースが流れている。

(もう……同じ悲劇ばかり聞きたくない……)

彼はテレビを消し、深く息を吐いてベッドに横になった。

部屋は静まり返り、枕元のデジタル時計の音だけが響く。

02:59。

数字が切り替わる。

03:00。

その瞬間、部屋がまばゆい白い光に包まれた。

レオンは驚いて起き上がる。だが、その光は目を焼くものではなかった。

温かく、包み込むような光だった。

光の中心から、一つの存在が現れる。

「レオン……こちらへ来なさい。見せたいものがある」

その声は穏やかで、しかし逆らえない力を持っていた。

次の瞬間、レオンの意識は肉体を離れ、光の中へと引き寄せられていった。

彼が辿り着いたのは、星々と光に満ちた広大な次元だった。

惑星が生まれ、宇宙が形作られ、天の存在たちが調和の中で動いている。

声が再び響く。

――すべての創造は、自由意志と共に生まれた。

だが、影響によって、多くの被造物は創造主に背いた。

罪は宇宙に広がり、父なる神は深く悲しまれた。

空が裂け、天使たちが堕ちていく光景が浮かぶ。

ルシファーが反逆の軍勢を率いていた。

――それでも、父は新たな存在を創られた。

――特別な力を持たぬ、脆く、弱い存在……人間だ。

エデンの園、蛇、そして堕落。

――人類は創造主を無視し、自らの起源を否定した。

空気が重くなる。

――父は、創造を終わらせる決断をされた。

――だが、天使たちが嘆願し、私は介入した。

その存在――イエスは、レオンをまっすぐに見つめた。

「君の中に、純粋さを見た」

「だから、君を導こう」

レオンの胸が強く震える。

「君に、古き力を託す」

「だが、それを支配するのは容易ではない」

「今はただ……私を信じなさい」

光が消えた。

レオンは、自分の部屋で目を覚ました。朝の光が窓から差し込んでいる。

最後に、声が響いた。

「目覚めたら、両親に旅に出ると伝えなさい」

「毎月、仕送りをすること」

「準備期間は二日だ」

レオンは天井を見つめ、静かに決意した。

その後、台所で両親を抱きしめ、スーツケースの横で告げる。

「奨学金をもらったんだ……日本へ行く」

「でも、必ず毎月お金は送るよ」

両親は何も問わず、彼を祝福した。

その夜、再び光の扉が現れる。

イエスが立っていた。

「準備はいいか?」

レオンはうなずき、光の中へ足を踏み出した。

次に目を開いた時、彼は赤い空の下、岩だらけの地面に膝をついていた。

巨大な山々と古代の遺跡が広がる異世界。

(……ここは……どこだ?)

風が、不気味な音を立てて吹き抜ける。

こうして――

レオンの「召命」は始まった。

✨ 第1話・完

はるか昔――

宇宙がまだ静かだった時代。

すべては調和の中にあった。

創造主の意志のもと、

星も、命も、時間さえも意味を持って存在していた。

しかし、

与えられた「自由」は、

やがて欲望へと変わった。

崇拝は妬みに変わり、

疑問は反逆へと堕ちていく。

天は裂かれ、

光は分かれ、

戦争が始まった。

そして長い時を経て――

地球という、

最も弱く、最も未熟な星に、

一人の少年が生まれる。

彼はまだ知らない。

自分の中に眠るものを。

そして――

自分が歩むことになる、

“逆らう道”を。

これは、

選ばれし英雄の物語ではない。

これは、

恐れを抱えながらも、

それでも光を選ぶ者の物語だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ