2-物語:昔々…呪いがあった。
呪いとは何か:この世界の人々は、呪いを「魔女によって引き起こされた災い」だと信じている。何世紀にもわたって、人々に魔女への恐怖を植えつけるために語られてきた物語だ。だが真実はこうだ──呪いとは魔女が持つ力そのものだ。呪いは魔女が一生背負う鎖のようなものであり、彼女たちの最も深い在り方を映し出し、隠された「自己」を表へ引きずり出す。自分でも知らなかった「お前自身」、最も強く暗い願いを映すその性格だ。人は生まれつき呪いを帯びることもあれば、外的要因で得ることもある。しかし一般の人々は呪いを主に魔女に結びつけ、呪いを背負って生きる存在として魔女を見ている。
「太陽が眩しすぎる。」
僕の名前はアキ。十五歳で、母とふたりで首都から離れた村に暮らしている。僕には魔力がなく、理由もなく人々に軽蔑されてきた。僕を蔑まないのは、働きづめの母と親友のリュウガだけだ。僕はずっと臆病者だったが、リュウガはそう思っていない。ある日、祭りに来ていた英雄が僕らの村を訪れ、リュウガに自分の弟子となって英雄の称号を継ぐよう申し出た。それは国で最も名高い魔法学園に入ることを意味し、過去の生活を捨てることでもある。しかし驚いたことに、リュウガは英雄の申し出を断った。理由は、僕を置いて行きたくなかったからだ。同じ日に魔女が村を襲い、予想通りリュウガは人々や英雄を助けに向かった。英雄は僕に、リュウガとは距離を置いて縁を断てと助言した。僕はその言葉を受け入れて家へ帰ったが、道中で負傷した魔女を見つけ、家へ連れて帰って手持ちの救急キットで手当てした。どうやら、もう一人の魔女は英雄の追跡をかわしていて、救った魔女を捕らえるために僕たちを追ってきていた。僕の家の前で魔女同士の戦いが始まり、「ディスコ」という名の魔女が救った魔女に不思議な剣を突き立てようとしたとき、僕は身を呈して止めた。剣は僕の胸を貫き、僕は倒れた。死ぬと思ったが、それは僕の呪われた人生が始まる序章に過ぎなかった…。
朝になり、僕は目を覚まして自問した。
アキ:「あれは夢だったのか?」
浴室で物音がして確認に行くと、驚くべき光景があった。――大きな乳房が僕のシャワーにいたのだ。
魔女:「私の入浴を見るつもり?思春期の変態ね。」
アキ:「ご、ごめんなさい!!」
魔女:「気にするな。今一番気にするべきは、お前がどう見えるかだ。」
アキ:「え?」
魔女:「隣の鏡を見ろ。」
振り向いて鏡を見ると、さらに驚いた。
アキ:「なんだこれ!?化け物みたいだ。これ、疫病用の仮面か?それとも頭の一部なのか?」
魔女:「昨日のことを思い出せないのか?」
アキ:「昨日は…火の魔女が来て、胸を奇妙な剣で刺したんだ。他のことは頭がぐるぐるしてる。」
魔女:「そうか…」
魔女は、僕がその姿になった後に起きたことを話してくれた。突然この姿になって素早く立ち上がり、ディスコが僕を攻撃したが僕はすべての攻撃をかわし、蹴りで倒して遠くへ吹き飛ばしたと。そこから僕はその日残りの時間を失神して過ごし、彼女が介抱してくれたという。
アキ:「本当にありがとう、魔女さん。」
魔女:「もう“魔女”って呼ぶのはやめて。名前があるの。私はローズよ。」
アキ:「ローズ?」
ローズ:「そうよ。裸をじっと見るのはやめて。」
アキ:「ご、ごめんなさい!!」
ローズ:「変態ね。」
遠く離れた場所で――
ある組織の面々が集まり、状況を話し合っていた。組織の各員は呪いを持っており、つまり魔女や魔術師だった。
魔術師1:「ディスコは任務に失敗した。」
魔女2:「彼女はせっかちだし、魔力のない者に敗れた。」
魔術師3:「魔力のないあの者が呪いを得た。だから我々の仲間になったのだ。捕まえて調べるべきだ。」
魔術師4:「いつも捕らえた対象を研究したがるのはお前だ。」
魔術師1:「黙れ。我らの主が命じたのは、薔薇の魔女を生け捕りにすることだ。それが最優先だ。そして“カラスの少年”は将来的な厄介者になる。早急に対処せよ。」
そのとき、謎の人物が部屋に現れた。
謎の人物:「では、そなたたちは我が部隊に任せよ。」
魔女2:「J.F.だ!」
J.F.:「そうだ、私だ。皆の下僕となろう。」
魔術師:「J.F.」
魔術師3:「ここに何の用だ、J.F.?」
J.F.:「主の命だ。ディスコの失敗に主は失望しており、私に無能な者どもの過ちを正すよう命じたのだ。」
魔術師4:「よくもそんな侮辱を!」
J.F.:「落ち着け、マダム。私と我が部隊が生きたままあの娘を見つけ出す。主は私を右腕に任命したのだ。」
魔術師1:「主の直命なら我らは従おう。ただし、失敗するな。」
J.F.:「我が部隊はお前らのような愚か者の寄せ集めではない。安心せよ。“スターシップ・コーポレーション”に任せよ。」
アキの家に戻って――
アキ:「この姿で食べるのは難しいな。」
ローズ:「食べさせようか?」
アキ:「い、いいよ!」
アキは非常に恥ずかしがった。
ローズ:「変態ね。」
アキ:「ところで、どうするつもり?」
ローズ:「何をだ?」
アキ:「さっきの件だよ。あの魔女は君を捕まえようとしていた。」
ローズ:「で?」
アキ:「君は随分と呑気だね。」
ローズ:「今は別のことを優先している。この村は静かで人目につかない。しばらくここに隠れておくつもりだ。」
アキ:「もし他の魔女が来て君を捕まえに来たら?」
ローズ: 私は力の大部分を取り戻したから、彼女たちの相手は大した問題じゃないわ。
アキ: それでも、どうやって元に戻ればいいんだ?母さんかリュウガに今の姿を見られたら、おそらく人生最大の驚きを与えるぞ。呪われた者は王都の守衛に通報されるし、何が起きるか誰にも分からない。
ローズ: 落ち着きなさい、ガキ。
突然、誰かがドアをノックした。リュウガだ、アキに会いに来たのだ。
リュウガ: アキ!家にいるか?ちょっと話があるんだ!
リュウガは魔女の襲撃のときに僕が逃げたことを責めに来たのだろうと思っていた。ドアを開けるために準備したが、今の姿を見られるわけにはいかない。だから変装をしてローズを隠してからリュウガにドアを開けた。
リュウガ: おい、何を着てるんだ?
アキ: 風邪を引いたみたいで、誰かにうつさないようにすっぽり隠してるんだ。
リュウガ: 今はよく喋るな。普段は恥ずかしがりで無口なのに。
アキ: 変わろうとしてるんだよ。
リュウガ: うわ、何てばかげた変装だ!
リュウガは笑いを堪えきれなかった。家に上がった彼に飲み物を出す。
リュウガ: なんて美味いお茶だ。
アキ: 母さんの畑のハーブで作ったんだ。
リュウガ: お前の母さんはいいハーブを育てるな。
アキ: そうなんだ。
リュウガ: 英雄に聞いたんだが、魔女が襲ったときお前は臆病者のように逃げて、尿を漏らしたって本当か?
アキ: ああ、本当だ。
僕はリュウガにローズのことや昨日起きたことを話せなかった。英雄の言葉で彼が僕との縁を切りに来たのだろうが、僕はリュウガに自分を卑下してほしいとは思わない。彼が英雄になる夢を諦めるよりは、僕がただの臆病者だと思われる方がましだ。
リュウガ: 俺は最低な友達だ。
アキ: え?
リュウガ: いつもお前に無理をさせてしまう。でもそれはお前のことを信じているからだ。昨日は危険だと分かってて無理に一緒に来させてしまった。ごめんな、アキ。
リュウガは自分が村へ行くように仕向けたことを後悔しているようだった。しかしもし僕が行かなかったら、ローズに何が起きていたか分からない。だから僕は言わなければならなかった。
アキ: リュウガ、許さない。
リュウガ: やっぱりな。
アキ: でも、許さないのはお前を責めたいからじゃない。村に着いていったことは後悔していない。俺はいつもお前のそばにいる。
リュウガ: アキ…。
アキ: いつもお前が言ってくれるだろ?今度は俺の番だ。お前は俺の親友だ。
リュウガ: ありがとう、アキ。
その瞬間、たぶん人生で初めて、ありったけの勇気を振り絞ってそう言った。
リュウガ: ところで、その変装を取らないか?
アキ: 言っただろ、風邪ひいてるしお前にうつしたくないんだ。
リュウガ: なんだか隠し事があるだろ、見せてみろよ。
アキ: いま見たら風邪うつるぞ。
リュウガ: 行けよ、アキくん!
リュウガは布を引き剥がした。彼は僕が何になったのか見ようとしたが、驚くべきことが起きた。
リュウガ: アキ…髪が伸びてる!
アキ: え?
リュウガ: 髪が白と黒で半々だ。左右対称で、白い部分がずっと目立ってる。
そばの壺に映った自分を見た。見た目は以前の僕に戻っているように見えたが、首に何か付いているのに気づいた。ローズの仕業だろうか。
アキ: 最近床屋に行くの忘れててさ。
ローズ: ハサミでも取ってきて自分で切りなさい。
ローズは隠していた場所から出てきた。
リュウガ: アキ…この美しい女性は誰だ?
アキ: あ…えっと。
ローズ: 私はローズよ。昨日お前の友達に命を救われたの。
リュウガ: え、アキ、本当にこんな美人の命を助けたのか?!
リュウガは興奮している。彼は可愛い子を見るといつもこうなる。
アキ: えっと…大したことじゃないんだ。
ローズ: アキくんにとっては小さなことでも、私にとっては大きなことよ。責任を持って欲しい。
リュウガ: アキ、お前はどうやってこんな美女を手に入れたんだ!
アキ: あ…まあね…。
僕は完全に動揺していた。
ローズ: 女性は控えめであるべきよ。なのにお前は私の体をむさぼるように見て、我慢できなかった。
なんて言い草だ。裸で見ただけなのに、確かに少し欲情したけど…
ローズ: アキ、お前は野獣のようだったわ…
なんでそんな挑発的に言うんだ?
リュウガ: アキ、そろそろ行くよ。邪魔したくないからな。
リュウガは信じたのか?
リュウガ: 前よりお前のことを尊敬してる。じゃあな、相棒、頑張れよ。
リュウガは親指を立てて去っていった。
アキ: ローズ…あんたは本当に魔女だな。
ローズ: まあ当然でしょ。お腹が空いたわ、冷蔵庫に何があるか見てくる。
ここから僕の人生は変わっていった。
つづく…




