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おとぎ話  作者: ノラキツネStrayfox2024


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12/12

10-物語:王団子

「王」が現れる……


僕の名前はシノウ。僕の夢は王になること――それも、誰よりも偉大な王になることだ。幼い頃から、僕は偉大な存在になる運命を背負っていた。そして、これまでずっと、その期待を疑うことなく応え続けてきた。今、姫が危険な目に遭っている。ならば、輝く鎧をまとった王子として、彼女を救い出すのが僕の使命だ。


シノウ:

「よく聞け! 今すぐ姫を解放しろ! 至高の未来の王であるこの僕が命じる!」


J.F.:

「はいはい」


J.F.:

「正直、もう飽きたんだよね。それに、君の能力については知っている。今頃、僕の周囲を軍隊で取り囲んでいる可能性もある。そう考えると、撤退するのが一番安全だろう。意味もなく体力を使うのは好きじゃないからね」


(J.F.はローズを解放し、逃げようとする。しかし、シノウが素早く「剣」で斬りかかった。それでもJ.F.は、どういうわけかすべての攻撃をかわし、そのまま逃走してしまった。)


シノウ:

「逃げられてしまったか……。だが、少なくとも姫は無事だ」


(シノウはアキを横目で見て、声を荒らげる。)


シノウ:

「おい! お前は姫を守る役目だったはずだろう!? 人に呆れられることしかできない、役立たずめ!」


アキ:

「うん。分かってる」


……………………


(再びアキの語りに戻る。)


とにかく、戦闘を避けられたのは幸いだった。あいつは……強い。そう感じ取ることができた。僕は恐怖で、ほとんど身動きすら取れなかった。以前、何かを怖いと感じたときは、もっと人間らしい感情に近かった。けれど、今回の恐怖はそれとは違った。まるで、生き残るための本能そのものだった。これも僕の「呪い」の一部なのだろうか。そういえば、最近の僕は少しだけ感情を表に出すようになった気がする。ここしばらくはローズと何度も言い争っているし、誰かと一緒に紅茶を飲むことを楽しむことさえできた。それは呪いの影響なのか。それとも、この数か月の間に経験した出来事が、僕の性格を変えたのだろうか。


シノウ:

「いつまで語っているつもりだ! さっさと掃除を手伝え!」


アキ:

「ごめん」


シノウ:

「本当に役立たずだな。僕――未来の王――がずっとお前を監視していたから助かったものの、いまだにお前を完全には信用していない。そして、今日の様子を見て、その判断は正しかったと確信した。お前は姫を守るという、自分自身で誓った義務を果たすどころか、敵かもしれない女に見とれていたではないか。それに、お前の母親と姫の傷が治療可能なものだったのも幸運だった。認めてやろう。お前の庭にある植物は、傷の治療や回復薬の調合にかなり役立つようだな」


アキ:

「そうだね」


シノウ:

「それから、お前の母親の記憶も消しておいた。あの出来事は、ただの悪夢だったと思うだろう」


アキ:

「それも助かったよ……。ねえ、団子を食べる? 冷蔵庫にいくつか残っていたと思うけど」


シノウ:

「……ああ。ありがたくいただこう」


「魔法学園」


名付け親の妖精:

「J.F.は任務に失敗しました」


英雄:

「彼のことだから、そうなると思っていたよ。僕に忠実だと言ってはいるけれど、実際には好き勝手に行動しているからね」


「今日はずいぶん落ち着いていますね」


英雄:

「定期的に投与されている薬の効果だよ。あの魔女の能力には、かなり驚かされた」


名付け親の妖精:

「では、学生たちとあなたの保護対象であるリュウガの様子を見てきます」


英雄:

「好きにすればいい。君はいつもそうしているだろう」


名付け親の妖精:

「分かりました」


(語り手が名付け親の妖精に変わる。)


あの「英雄」も、私が豚の糞溜めの中で見つけた頃から比べれば、ずいぶん成長したものだ。彼は英雄――それも、童話に登場するような英雄――になりたがっていた。だから私は、彼の願いを叶えてやった。そして、彼のために学園を設立した。そこに通うのは、大量生産される物語の中に登場する、「ありきたりなキャラクター」になりたがっている者たちばかりだ。その中でも最たる存在が、あの少年、リュウガだ。彼は非常に高い魔力を持っている。それだけでなく、この世界では極めて珍しい光魔法まで使える。そういえば、いつからこの世界では、「魔法がすべてを支配している」などという茶番が始まったのだろう。古代世界は、魔法などなくても十分に繁栄していた。想像を絶する能力を持った人々が社会を発展させ、それは何千年もの間、続いていたのだ。だが、ある危機が訪れ、人類は絶滅寸前まで追い込まれた。そして、その危機の後に魔法が生まれた。人間というものは、本当に愚かだ。苦しい時代から救ってくれるものなら、どんな出鱈目な現象でも「奇跡」と呼ぶ。魔法は奇跡どころか、社会を大きく後退させた元凶だった。さらに、新たに生まれた世代が重要な歴史的事実を否定するようになったことも、その後退に拍車をかけた。奴隷制度、王政、社会的不平等――何千年も前に消滅したはずのものが、無知な新世代によって再び蘇り、今もなお悪化し続けている。魔法は生活をあまりにも便利にした。そのせいで、人々は怠惰にもなった。それだけではない。かつて本やテレビの中にしか存在しなかった怪物たちまで現実に呼び出してしまい、この世界は昔よりも危険になった。この世界は、もう「普通」とは呼べない。かつての世界の正常さを残しているのは、魔法を持たない人々だけだ。だが、彼らは社会の底辺に追いやられ、まるで屑のように扱われている。そして、「呪い」と呼ばれる能力を持つ者たちもいる。何かが存在する限り、「呪い」もまた存在し続ける。呪いを根絶しようとする者たちは、そのためなら、存在するものも、これから存在するはずのものも、すべて「破壊」しなければならないと考えている。私は少しだけ、未来と過去を見ることができる。そのせいで、時々ひどく退屈に感じることもある。けれど、あの少年――アキには、かなり驚かされている。私が予知できた彼の未来は、彼がカラスに変身する能力を手に入れたところまでだった。それ以降、彼の未来を見ようとすると、いつも一つの言葉しか見えない。――「死神の心臓が、あなたの求めるものへと導くだろう」。私が求めているものは、この世界に「正常さ」を取り戻すこと。かつての世界……「おとぎ話」を、もう一度取り戻すことだ。さて、もう下校の鐘が鳴っている。生徒たちは皆、それぞれの寮へ戻っていくようだ。ただし、特別クラスの生徒たちは訓練場に残っている。


リュウガ:

「サンダー・ダブル・スラッシュ!」


リュウガのファンたち:

「すごいよ、リュウガ君!」


リュウガの猫耳のクラスメイト:

「リュウガお兄ちゃん、最高!」


リュウガについている妖精:

「リュウガ様なら、できると信じていました!」


あのリュウガという少年は、学園に来てからずいぶんと人気者になった。今では、彼の後ろにはすでにハーレムまでできている。まあ、学園の図書室にあった小説で、すでに見たことのある展開だけれど。さて、私はずいぶん歩いた。そろそろ、愛しい「モスキート」と一緒にゲームでもしよう。新作の『戦隊ライダー・ゼロス』が発売されたばかりなのだ。プレイするのがとても楽しみだ。果たして、どちらが勝つのだろう。「魔法の奇跡」か、それとも「呪いの正常さ」か。


アキの家


シノウ:

「この団子は実に美味いな」


アキ:

「母さんは、冷蔵庫にあるものをいろいろ加えて味付けするんだ。裏庭にある薬草を使うこともあるよ。料理にも使えるものがあるからね」


シノウ:

「団子には、使われている調味料や、添えられているものによって、それぞれ名前が付けられることを知っているか?」


アキ:

「知ってるよ。でも、この団子には普通の団子に使われるような調味料も、季節ごとに使われる調味料も入っていない。こういう団子には、どんな名前を付ければいいと思う?」


シノウ:

「そうだな……王団子というのはどうだ? 偉大なる未来の王である僕が認めた団子だからな」


アキ:

「まだそれを言ってるの? ローズなんて、君のことを見向きもしていないじゃないか。というか、たぶん君のことを好きですらないと思うよ」


シノウ:

「お前は引き寄せの法則を知らないのか? 前向きなことを考えていれば、良いことが起きる。僕がいつか王になると願い続ければ、いつか本当にそうなるんだ」


アキ:

「ずいぶん現実味のない話だね」


シノウ:

「お前が後ろ向きだから、悪いことばかり起きるのだ」


アキ:

「僕のことを信用していないんじゃなかったのか? どうしてこんなに普通の会話をしているんだよ」


シノウ:

「正直に言うと、僕はお前のことが好きではない。だが、どうやら僕たちはこれから長い間、一緒に行動することになりそうだ。それに、上司からも『お前たち二人は、もっと仲良くなるべきだ』と言われている。だから、お前を観察して、少しでもお前への印象が変わるか確かめることにした。今のところ、まだお前を信用してはいない。だが、こうして美味い団子を分け合い、人間らしく会話をしている。この時間があれば、少なくともお前に対する僕の印象も、多少は良くなるかもしれない。……まあ、姫の一件が片付くまでの話だがな」


アキ:

「なるほど。じゃあ、僕がもう少し前向きになれば、人生も良くなると思う?」


シノウ:

「いや、奇跡でも起きない限り無理だな」


アキ:

「ひどい!」


シノウ:

「だが、少なくとも朝、ベッドから起き上がる理由くらいはできるだろう」


アキ:

「ねえ、どうして王になりたいの?」


シノウ:

「なりたいからだ。それが僕の夢だからな。ただそれだけだ。隠された過去も、悲劇的な理由もない。ただ、王になったら格好いいと思ったんだ。どんな王になるかは、実際に王になってから考えるつもりだ。……お前も同じだ。どうして普通の生活を送りたい?」


アキ:

「それが本当に僕の夢なのか、もう分からなくなってきた。よく考えてみると、前の人生も、ある程度の基準から見れば普通だったのかもしれない。ただ、それ以上のものを手に入れられないと思っていたから、不満を口にしなかっただけなのかもしれない。それでも、今の人生よりは、少なくとももう少し良い生活を送りたいと思っている。たとえ、それを邪魔する人が大勢いたとしてもね」


シノウ:

「もし、そのために悪いことをしなければならなくなったら、どうする?」


アキ:

「分からない。たぶん、そのまま前に進み続けると思う。それで僕は悪い人間になるのかな?」


シノウ:

「そうとは限らない。誰だって、心の中に悪を抱えている。人間が百パーセント善良な存在だと考えるほうが馬鹿げている。魔法使いは『悪い奴ら』だと思われているが、だからといって、魔法使いが全員本当に邪悪なわけではない。『呪い』を持つ者の中には、その能力を使って、世間的には『悪い』と見なされることをする者もいる。だが、呪いを持つ者が全員悪人というわけではない。魔法を持つ者たちも同じだ。誰の中にも存在する一定の『悪』が、時には目標を達成するための原動力になる。それこそが、僕たちを人間たらしめているものだ」


アキ:

「でも、誰かを傷つけなければならないと思うと怖い。僕は本当に、誰も傷つけたくないんだ。それなのに、誰かを守るという言い訳をして、僕はもう戦い、他の人間を傷つけてしまった。そんな僕は、いったいどんな『英雄』なんだろう?」


シノウ:

「『人間の英雄』ということになるな。……いや、単に思春期の勢いで面倒事に首を突っ込んだ馬鹿かもしれん」


こうして、僕たちは午後の時間を過ごした。僕は「人間の英雄」。自分の中に「悪」が存在していても、それでもなお他者を守ろうとする者。その言葉は何世紀も前から存在していたが、時代とともに失われていったらしい。それを聞いて、僕は考えた。――もしかすると、あの英雄も、ただの「人間の英雄」なのではないだろうか。確かに、彼は悪いことをしてきた。けれど、同時に良いこともしてきたはずだ。悪は、誰の中にも存在している。それこそが、僕たちを人間たらしめている。そう考えると、彼と僕の間には、それほど大きな違いはない。僕たちは二人とも、自分の目的を果たすために、他人を傷つけてきた。少なくとも、僕に残されているものがあるとすれば、それは、まだ他人を哀れむことができるということだ。そして、誰かを傷つけたり、その人生を完全に壊したりすることを楽しんではいない。何かを守るために行動している――そう思いたい。……けれど、それも結局は言い訳にすぎないのかもしれない。僕はいったい、どんな人間になってしまうのだろう。今の僕には、まだ分からない。やがて眠る時間になった。ローズと話をすると、彼女は謝ってくれた。こうして、すべては元通りになった。その後、僕は眠りについた。そして、奇妙な夢を見た。そこは荒れ果てた荒野だった。僕は、見たこともない奇妙な怪物たちに襲われていた。そのとき、死神がどこからともなく現れた。死神は、奇妙なバイクに乗っていた。そして、バイクから跳び上がると、怪物たちに向かって飛び蹴りを繰り出した。


死神:

「レイヴンキック!」


死神の蹴りによって、怪物たちは倒された。たぶん、昔のテレビ番組か何かのパロディなのだろう。しかし、死神は僕の正面に立つと、問いかけてきた。


死神:

「本当に、それがお前の夢なのか?」


そこで、僕は目を覚ました。もう朝だった。そして、ローズが着替えているところだった。こういうラブコメのような展開も、ずいぶん久しぶりだ。彼女は僕に気づいた。だが、特に気にする様子もなく、そのまま着替えを続けている。どうやら僕たちは、そこまで気を許し合える関係になったらしい。ともかく、僕たちは朝食を食べに行った。すると、リュウガから手紙が届いた。


アキ:

「リュウガが、僕に魔法学園へ来てほしいって?」


アキの母親:

「そうよ。学園の生徒たちによる公開実演があるんですって。それで、親友であるあなたに応援に来てほしいそうよ」


魔法学園。そこは、いわば敵地だ。それでも、リュウガを応援しに行きたいという気持ちは本物だった。僕はいったい、どうすればいいのだろう?


つづく……



団子には様々な種類があり、添える調味料によって名前が付けられることが多いです。


あんこ:一般的には(甘くした)小豆餡として知られていますが、小豆以外の材料が使われることもあります。


ぼっちゃん団子:三色団子。小豆餡、卵餡、抹茶餡の3色です。


茶団子:抹茶餡の団子。


ちち団子:甘さ控えめで、デザートとして食べられることが多いです。


花見団子:こちらも三色団子で、桜の季節に作られるのが伝統です。そのため「花見」という名前が付けられました。


ごま:ごまがまぶしてあり、甘みと塩味があります。


きな粉:炒った大豆粉。


栗団子:栗餡をまぶした団子。


串団子:串に刺した団子。みたらし:醤油、砂糖、でんぷんを混ぜて作ったシロップをかけた団子。笹団子:新潟県を中心に生産・消費されている団子。あんこを詰めた「おんな団子」と、きんぴらを詰めた「おとこ団子」の2種類がある。保存のため笹の葉で包まれている。


鉄板焼き:団子を串に刺し、鉄板焼きの風味をつけた料理。


たこ団子:タコなどの具材を使ったタレをかけた、オレンジ色をした団子。

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