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第13機動部隊 プログレッサー  作者: 藤沢マサト
第一章 終わりの見えぬ戦い
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第7話 鉱物輸送船を守れ

 6月10日、ドラギウス帝国軍はロードブレイダーMk-Ⅱの戦闘データから新型機の開発を行っており、“DEF-201”と呼ばれている。

この機体はロードブレイダーMk-Ⅱ同様可変機構を持ったマルチフレームを採用している。


「やぁ、ボギー。計画の進行は順調かね?」


上司のサイモンは、ボギーの表情を窺う。


「はい…、おかげさまで順調です。開発に関しては二か月ほどかかるとは思いますが、より集中すれば開発期間をさらに縮めることが出来るでしょう」

「そうか。なら安心だな」

サイモンはニヤリと笑みを浮かべた。

「ボギー、そこの部品を取ってくれ!」

「分かった」


部下達が忙しそうにしていることを察したサイモンはそのまま整備ドックを後にした。


 

 帝国軍クラッシャー隊所属ののエルドラドは、何としてもロードブレイダーMk-Ⅱを撃墜するため、いつも以上に必死に大型射撃場で訓練を行っていた。彼の精神は闘志に燃えており、部下たちも入る隙が全く無い。そのため、誰もエルドラドに話しかけようとしなかった。


「エルドラド隊長、凄い顔ですね…。とても話しかけられないくらい必死で何て言ったらいいのやら…」


メルダはその様子を見て思わず血の気が引く。


「メルダも隊長のようにもっと訓練に精を出すんだな」

「言われなくても分かってますよ、セルバード中尉」


そんな二人をよそにヴィラーガもまた、ひたすら射撃訓練を続けていた。

彼もまた、より強くなりたいという思いを胸に秘めていたのだ。


「俺も大尉のようになれれば…、さらなる戦果を挙げられる…。必ず…」


彼は冷静な顔を装っていたが、実際には戦いへの情熱を密かに燃やしていた。



 一方、共和国軍内ではとある作戦についての会議が行われていた。

その内容は、アステロイドベルトからの鉱物輸送船団を護衛するというものである。

また、この作戦ではプログレッサー隊やストライカー隊が参加することになっている。


「今回の作戦で指揮を取るのは、ロバートに任せる。頼んだぞ」

「はい!」


ロバートは自信に満ちた表情で敬礼をする。


「今回、指揮を任せたのはロバートのことを十分に期待しているからだ」

「ありがとうございます。トーラス司令官」


こうして、ロバートの指揮の下で作戦が練られることとなった。


「今回の作戦では、このような輸送船が6隻来るという。

先端は丸く、簡単に言えばロケット状の形状をしている。

俺たちはこの輸送船を囲うような陣形…、まぁ、ざっくり言うと楕円状の陣形で戦闘を行うわけだ」

「ロバート大尉、陣形は分かったのですが、往復時や武装についてはどうするんです?

途中で必ず木星の大気圏を突破する訳ですから…」

「大丈夫だ、フランク。そのために退避用の輸送艦も手配してあるから安心してくれ。あと、武装に関してはいつも通りで行くつもりだ。まぁ、俺のロードブレイダーMk-Ⅱは単独で大気圏突入及び離脱が出来るから、最悪時間内に艦に入れなくても大丈夫だけどな…。なんか、嫌味に聞こえてしまったら申し訳ないが…」

「いえ、そんなことは無いです。それより、大尉の機体が大気圏突破可能というのは初めて聞いたのですが…。そのような機能もあるんですね…」

「あぁ、そのことについてはバンさんから聞いたんだよ」

「そうでしたか。分かりました」


フランクは軽く頷いた。


「とりあえず、今回の作戦で大気圏を突破する際は必ず輸送艦に乗るように!それと、作戦実行日は三日後だ。それまでに準備はしておけよ」

「了解!」


こうして、作戦会議は予定より早く終わった。



 会議が終わり、プログレッサー隊の四人は食堂で夕食を味わっていた。

そんな中でも、ロバートは三日後の作戦について不安な心情になっていた。


「あぁ…、もし失敗したら…、いや、そんなことは考えない方がいいな」

「どうしたんですか、大尉」


フランクはブツブツと独り言を言うロバートに違和感を隠せずにいた。


「いや、気にしないでくれ」


ロバートは冷や汗を掻いており、明らかにいつもと雰囲気が違ったのだ。

食べるペースも不自然なくらいに遅く、普段のロバートと何か違うとすぐに判断できるほどである。


「そう言われてもこっちは心配ですよ。大尉、悩みがあるんだったら話してくださいよ」


そして、ロバートは自分の苦悩について話した。

作戦が上手くいくかどうか、はたまた失敗してしまうか。

それを打ち明けた時の彼の表情は、普段の優しさを取り戻していた。


「なるほど。大尉の不安についてはよく分かりました。

でも、安心してください。私たちがしっかりサポートするので…」


ヘレンは穏健な表情を見せた。


「ありがとう…。何としても今回の作戦は成功させよう」

「はい」

そして、ロバート達は食事を続けた。



 一方で、ドラギウス帝国軍のクラッシャー隊は作戦を練っており、その作戦というのが、鉱物輸送船団の殲滅をするというものである。

輸送船団がやって来るという情報は、軍の諜報部隊経由で手に入れた。


「さて、今回の作戦だが…。ひとまずビームバズーカやライフルなどを使って攻撃し、破壊することにしよう。もし共和国軍の護衛部隊がいたら、敵を包囲した上で集中砲火を浴びせて撃墜する。何か他に意見がある者はいないか?」


エルドラドは周りを見渡した。すると、ヴィラーガが挙手した。彼の顔からして、かなりいい考えではないかとエルドラドは察する。


「ヴィラーガ、お前の意見を聞かせてくれ」

「はい。今回はただひたすら撃つだけでは護衛部隊にやられてしまうと思いまして…。そこで、本作戦では大型粒子砲を用意すべきかと…。これなら効率よく敵艦を一発で沈めることが出来るでしょう。また、今回は木星の分厚い大気圏を突破する訳ですから、輸送艦に乗って待機すべきでしょう」

「うむ、悪くないな」

「さらに、今回はメタルユニット攻撃班、輸送船攻撃班に分けようと思いましてね」

「なるほど。それは面白い…。とりあえず俺とヴィラーガはメタルユニットを、セルバードとメルダが輸送船を攻撃するということにしよう。他に考えがある者は?」


その後は異議を唱える者はいなかったため、作戦会議はそのまま終了した。



 それから三日後、ついに輸送船団が共和国軍に来る日が来たのだ。

ロバート達は既に身構えており、いつ何が来ようと大丈夫なほど万全な状態であった。


「大尉、今回は重要な作戦ですね…」


カイルは少し身震いしながらも、どこか涼し気な表情をしていた。


「もちろんそうだとも。もしこの作戦に失敗したら、自分達の首を絞めることになるからな」

「自分は、いつ敵が来ても大丈夫です」

「それは頼もしいな、フランク。頼んだぞ」


ロバートは、優しく微笑んだ。


「はい、分かりました」


現在、共和国軍は木星の大気圏を突破し、アステロイドベルトの鉱物輸送船団と合流しようとしていた。

そして、唐突に輸送船団側から通信が入った。


“こちらアステロイドベルト鉱物輸送船団。ジュピトリア共和国軍、応答願います”

「はい、こちらはジュピトリア共和国軍輸送艦であります。

万が一の時は護衛するのでご安心を」

“了解”


こうして双方は合流し、漆黒の宇宙の中で数々のメタルユニットが発進して持ち場に就く。


「ロバート大尉、こちらもポジションに就きました」

“分かった、ルーガン。ストライカー隊は、確か四番艦の護衛をするんだったな。

任せたぞ。俺たちも信頼しているからな”

「分かりました」


そして、ルーガンは通信を切った。

ついに作戦は動き出し始めたのだ。



 アステロイドベルトからかなり離れた宙域から、このまま数週間かけて木星の共和国軍基地へと向かおうとしていた輸送船団だったが、ここでトラブルが発生する。

ついに帝国軍の巡洋艦がこちらへと接近していることが判明したのだ。

また、この巡洋艦にはクラッシャー隊が待機しており、いつでも攻撃出来る状態になっていた。


「ようやくお出ましになったみたいですね…」


メルダは大胆不敵にニヤリと笑う。


「しかし、あれだけ手薄な戦力であれば、簡単に殲滅できそうですね。そう思いませんか? エルドラド大尉」

「セルバード、油断は禁物だぞ。例えあの程度の戦力だったとしても、強力な戦闘力の持ち主が乗る機体がいるかもしれん…」

「はっ、はい…」


セルバードは僅かに恐れおののく。


「だからこそ、こちらも身構えんとな!」


エルドラドは機銃を構えて巡洋艦のカタパルトから出撃した。

さらに後に続いて、部下も敵軍のいる方へと向かう。


 こうして始まったこの戦い。ロバートは帝国軍の部隊を輸送船団からなるべく遠ざけるべく、パワードキャノンで敵を牽制することにした。


「喰らえェェッ!!」


凄まじい稲妻のような光線が、漆黒の宇宙空間に轟く。


「何だッ!? ウワアァァァッ!!」


帝国軍の一部の機動部隊は撃墜され、エルドラドはこの光線を放ったのがロードブレイダーMk-Ⅱだと直ぐに気付いた。これを受け、クラッシャー隊を筆頭に一斉掃射が始められた。

共和国軍の部隊はなるべく輸送船団に敵の攻撃が届かない範囲で攻撃を仕掛けた。

ロバートやルーガンよりも若い兵士が率いる部隊は、万が一のために周囲を囲いながら宇宙船を守る。


「なんとしても守って見せるんだ! この輸送船団をッ!!」


若き兵士達はひたすらビームライフルを連射し、接近してくる敵を次々に撃墜していく。

しかし、エルドラド達はその攻撃を上手く回避して斬りかかる。


「落ちろォッ!!」

「うっ、うわあァァァッ!」


その時、若い兵士を攻撃しようとしたエルドラドの背後に、ロバートの放った光線が直撃した。


「させるかよォッ! 例え何があろうとこの輸送船団は守る!」

“大尉、私たちも…”

「ヘレン! 援護頼むぞ!」

“了解!”


彼女は上手く間合いを取りながらビームライフルで牽制する。


「くっ…、厄介な奴め…。セルバード、このガントレックを撃墜しろ! 輸送船団を攻撃するのはその次だ!」

“分かりました! やってみせますよ、必ず!”


セルバードは、ヘレンと激しい撃ち合いを行う。

この事態に見かねたカイルは、フランクと援護射撃をしようと試みる。


「コイツめ! ヘレンの邪魔はさせない! 何としてもな!」

「俺も…、カイル少尉に続いてみせる!」


二人の放った光線は、セルバードの機体各関節部を破壊して行動不能にする。


「メルダ、戦闘がもう不可能になった…。俺の機体を回収してくれないか?」

“分かりました…。中尉もまだまだですこと…”

「情けなくてすまん…。これでは部下に示しが付かんな…」

“とにかく、早いところ艦に戻りましょう…”


メルダはセルバードの機体を抱えて味方艦の中へと帰っていった。



 そして、残ったエルドラドとヴィラーガやその他の敵部隊はビームバズーカを構えて攻撃し、ロバート達を妨害する。

エルドラド達からしたら想定外の出来事だったにも関わらず、彼らの連携プレーは強力で、なかなか攻撃する隙が生まれず、苦戦していた。

しかし、そこにストライカー隊が合流し、どうにか互角以上の攻撃力となり十分な戦いができるようになる。


「このォ!」


ルーガンはビームライフルで敵を狙い撃ち、エルドラドの僚機を撃墜していく。

ロバートもこの勢いに乗ってエルドラド達を窮地に陥れる。


「これ以上は思うようにはさせないぜ!」


カイルの放った光線がヴィラーガに直撃。

これにより、ヴィラーガは戦闘不能に陥り彼はそのまま戦地を去っていった。

ロバートとエルドラドは銃撃戦でまずは様子を見ながら戦い、互いの機銃のエネルギーが尽きた時に二人は接近戦を行うことをやむなく覚悟した。


「よし…、仕方あるまい…。これで…、斬るッ!!」

「来い! Mk-Ⅱ! 墜として見せる!」


二人が握る剣の刃は互いにぶつかり合うが、どちらも一歩も譲らない。


「喰らえェッ!」


彼の素早い動きに一瞬惑わされたエルドラドは、機体右腕部を斬り落とされる。


「しまった…!! くっ…、諦めるか…」


その後、帝国軍艦隊は輸送船団襲撃を完全に諦め、基地へと戻っていった。

こうして、護衛作戦は無事に成功したのだ。



 それから三日後、ジュピトリア共和国軍基地へと帰還したロバート達だったが、疲労のあまり談話室のソファーで寝そうになっていた。特に、カイルはあまりにもだらしのなさそうな顔をしており、ヘレンはそれを見て思わず引く。


「中尉、せめて自分の部屋で眠りましょうよ…」


ヘレンはカイルの肩をさすって起こす。これでは部下に示しが付かないと思い、目を覚ましたカイルは、恥ずかしそうに自分の部屋へと向かっていった。


「ああ、恥ずかしい…。ヘレンにあんな無様な様子見せちまって…。どうしよ…」


そして、カイルは妙に絡まった思いを胸に秘めながらベッドで眠りについた。


 一方、帝国軍では今なお新型可変MUの開発が行われていた。そこに居合わせていたサロアは、その見た目に圧巻されていた。

「す…、凄い…。これが可変MUか…。完成が待ち遠しい…」

「サロア中尉、この機体は必ず終戦の切り札にしてみせますよ!」

ボギーは意気揚々と話す。

「あぁ、是非そうしてくれ…」

果たして、この新型機が今後どのような形でこの国家間戦争に干渉してくるのだろうか。



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