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第十話夢はいつか実現するために存在する

十年後。


真理奈が香津美のもとを去って

十年余りの歳月が過ぎていった・・・・。



誰もがレストラン アフリカと

真理奈の存在を忘れてしまった。



今でも覚えているのは香津美ただ一人。

高校生だった香津美も

すっかり大人になって成長した。



今の香津美ならあの時の真理奈のことを

受け止められたかもしれない。



好きだというだけでは

大人の世界では通用しない。



あれから香津美は

ずっと真理奈のことを行方を捜している。



街で真理奈に似ている女性を見かけると

香津美は何もかも忘れてその後を追った。



その女性が振り向いて

顔を見せてくれるまで後を追った。



振り向くといつだって別人で人違いだった。


だけど6年前、

一度だけ真理奈にそっくりな女性を見た。



英国に旅行をして

新たなビジネスのヒントを

模索していた時のことだった。



新店舗の目玉になる商品の雑貨品を

買い付けに行った時のこと。



その場所はビートルズのメンバーが

買い物に立ち寄って

店を貸切にした事で有名にもなった

英国の某有名デパート。



何気なく陳列棚に並んでいる商品を

手にして香津美が品定めをしている時のことだった。



反対側の通路を歩いて通り過ぎる女性がいた。

その女性の横顔を見た。



間違いなく真理奈だった。

香津美が愛する人の顔を見間違えるわけなどない。


香津美は真理奈を見たとたん驚いて動けなくなった。

大人になった真理奈にはどこか昔の面影があった。



すぐに後を追ったが

人込みの中で姿を見失ってしまった。



こんな所で真理奈に出会うなんて

夢にも思わなかった。

そう思う香津美だったが


英国に滞在している

残された時間 

真理奈の行方を捜してみたが

ダメだった。



どうしても真理奈の

手掛かりを見つけることができなかった。



生きてさえいればいつかきっと会える。

信じてさえいればいつの日かこの愛は 

真理奈に届く。


きっといつかは

真理奈と同じ道に出くわす。


また巡り会える。

そう信じて香津美は英国を後にしたのだった。



飛行機から見た英国は寂しいことばかり。

あれ以来香津美の思いは募ってゆくばかりだった。



香津美は思っていた、

あれはきっと真理奈に違いないと・・・。



「真理奈はどこへ行ってしまったのだろう。」

香津美はいつもその胸の奥で

真理奈に対する熱い思いを忘れられずにいた。



そしてまた月日は過ぎた。

大人になった香津美は

今では母の後を継ぎ、

大グループの社長を任されていた。



香津美は高校を卒業すると

同時に米国に渡った。



米国に留学して

大学では経営学を専攻して

豊富な知識をグループに持ち帰った。



持ち前の明るい性格から

従業員たちから香津美は信頼されていた。



香津美のその先を読んだ視線で

時代の最先端を突き進む

テクノロジーを手に入れた。



ありとあらゆるビジネスの世界で香津美は成功した。

その結果、グループの株の値段はどんどん上がり続けた。



香津美はホテル経営の他に

米国流の車で行ける商業施設も次々に手掛けていった。



ビジネス界での成功が

マスコミでも話題となり

香津美はテレビにも出演した。



雑誌や新聞にも

連日 香津美のインタビューや

写真が掲載されていた。



新聞雑誌に香津美が載ってない日が

なかったくらいだ。



そんな香津美を巷では

日本一忙しいイケメン社長と呼んでいた。



真理奈が一目見れば香津美だと分かるように

有名になろうと努力した。



結果は政財界で香津美を知らない人はいなかった。

だけどいつまでたっても

真理奈は香津美の前に現れようとしなかった。



いつしか香津美の髪にも

白いものが見え始め、

額には皺も刻まれ

気が付けば

年齢も歳も29歳になっていた。



香津美は大グループの優秀な人材を育てて、

母れい子の手助けをするように経営を任せた。



自らは社長の座から会長の座に交代した。



「これからの世の中は新しい若者たちに

すべて任せよう。

グループは未来ある後輩たちに委ねよう。」



「僕のこれからの残された時間は

じっくりとやりたいことだけをやっていこう。」



「今まで十分会社のために尽くしてきたのだから。」

そう言って香津美はあっさり社長の座を降りたのだった。



誰の力も借りず、

裸一貫で自らの可能性を信じて

新しい物に取り組もうとしていた。



グループの名も使わず、

コマーシャル的なことも取り除いて

あくまでもひっそりと地道に進めていった。



香津美のやりたいこととは何だったのだろう?


それは長年 香津美が心の中に

思い描いていたものだった。



夢はいつか実現するために存在する。



しかし、自分が動いて

道を開かねば夢は叶わない。





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