敷居の高い門
「ここが、王立学園…」
背の高さの3倍はありそうな真っ白い塀に囲まれた広い園庭に大きな正門。そこから真っ直ぐにのびた道の中央には優雅な噴水が爽やかなマイナスイオンを発生させながらキラキラとひかり、虹を生み出していた。
その道を中心として見事なシンメトリーに作られた緑の
庭園には、彩るように花々が咲き乱れている。誰が文句をつけられるのかというほど美しい。
美しいだけでは無い。この塀の内側には、幾重にも張られた防御壁、魔法無効エリアの魔法陣も組み込まれているとのこと。入学資料で知っていたけど、実際に見ると圧巻だ。国の中枢人物となっていく子女達の集まりなのだ。どんな暴漢や災害からでも守れるよう、安全性はばっちりだ。もちろん、1部エリア(魔法エリアや保健室など)は別で、そこでは魔法無効などの結界はないらしい。
※生徒心得より
そもそも学園は、王都にある。
王城をぐるりと囲む貴族のシーズンオフの館を越えた逆側に位置し、貴族の子女が自宅からでも通えるようになっている。
学園には寮も完備されており、通学も寮に入るのも自由に選択出来る。私はもちろん、寮一択だ。王都に館なんてないし、ウチの領地は王都まで2週間かかる程遠い。通学時間往復で1ヶ月とか、ひと月が終わっちゃうもん。選択の余地なんてなかった。
ただ、その寮もランクが色々あり、ランクが高いほど高額となる。そのため平民用の2人部屋を選んだ。どんな子と同室になるのか、ドキドキ過ぎて1週間前に前乗りしてしまったくらいだ。ちなみに寮は、学園の門塀の外にまた別にあるのだから驚きだ。どれだけ広いのだろう。把握し切れる気がしない。
というわけで、今日はいよいよ入学式。
他の生徒達はゾロゾロと躊躇なく門をくぐって行く。
近くの街で仕立てたオーソドックスな制服に身を包んだ私は門をくぐるにはどう考えても場違いに浮いていたけど、もう行くしかないと腹をくくり、えいやっ!と1歩を踏み出した。
━━━途端。
舞い上がる薔薇の花びら。
流れる軽快で心ときめく音楽。
それに合わせて流れる歌と歌詞。
どこかで会ったことがあるイケメン4人が微笑みながら、私を取り囲んでくるくると回っている
まるでj-popのような…POP!?嘘だろ!?今世で!!??
と、いう幻聴&幻覚をみた。
驚きすぎて目をパチクリさせて、大きな瞳をより大きく見開き、パチパチとさせても、目をゴシゴシ擦っても、舞い上がっていたバラの花びらはほかの幻覚とともに跡形もなく消え、立派な噴水が規則正しく水を拭きあげていた。
「私、入学初日から、疲れてるのかな…緊張、しすぎたからかな…」
パンパンと、軽く頬を叩き、気を引き締め直して他の生徒と歩みを同じくすべく歩きだした。
が、どうしても他の生徒の視線が気になる。なぜか、わたしを見ている。そんな気がする。
自意識過剰よくない!と思うものの、どーしても見られている気がするのだ。正直、あまり気分の良いものでは無い。なんだ。なにか文句があるのか。こちとら『悪役令嬢』様だぞ!受けて立つぞ!なんて言えるはずもなく、精一杯の虚勢で背筋を伸ばして歩いた。
誰が思うのだろう。
他の生徒たちの視線は、わたしを見ているのではなく、私の後ろの茂み、正確には茂みに隠れる男子4人を見ていたなんて。
男子たちに気がついてさえいれば、私だってガン見していただろう。
誰が思うのだ。王国の王太子、公爵子息含む男子4人が仲良く息を潜め、コソコソとバレないように三流の探偵のように私を尾行しているとは。間違いなく不審者である。警備の人たちでさえ、ほら対応に困って目を逸らしてる。
かくして好奇の目に晒された私と、私にバレないよう、後をつけてくる不審な男子4人と、それを、好奇の目で見る人、目をそらす人、気が付かない人、などなどがどんどんと校舎に入っていくのであった。
主人公がみた幻聴&幻覚は、乙女ゲームのオープニングをイメージしてみました。
伝わりましたらイイネください
(*vд人)オネガイシマス
次回から、攻略対象たちの出番です。
笑ってやってください。