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レーマンの冒険者ギルドに着くと、タルツが情報を集めてくれていた。
ギルドが提供する情報だけでなく、冒険者からも西方面に行った者にどのような状況か聞いてくれていた。
「タルツ、ありがとう助かる。」
「子供は助けられたんですね。」
「あぁ。知り合いの子供がレッドボアに襲われそうになっていたが、間に合ったよ。タルツは索敵も使えるのか?」
「えぇ。それほど遠くまでは使えませんが、1キロくらいなら。」
「そうか。優秀なんだな。」
「いえ、私など大したことありません。」
「そんなことはない。大したことない者がAランクになどなれないからな。自信を持て。」
「はい。」
タルツの調べによると、やはりレーマンの森から西に向かった魔獣が何体かいるようだ。
見つけられれば討伐することを決め、私たちはレーマンに馬を置いて森へ向かった。
より強い魔獣から逃れるために西へ向かった魔獣がいるのだろう。
「とりあえず森に入ってそこから西に向かおう。」
「はい。」
「もうあと数時間もすれば日が暮れる。急ぐぞ。私が身体強化をかけるが、タルツならすぐに馴染むだろう。
不安なら剣を振り回したり飛んだりしながら向かってもいい。」
「分かりました。」
「私は索敵を西方面に広げながら、強そうな魔獣の元に向かうから着いてきてくれ。」
「はい。」
「行くぞ。」
「はい。グッ、これは・・・。」
「いけそうか?このままスピードを上げるぞ。」
「はい。問題ありません。いけます。」
やはりタルツは優秀だな。タルツを連れてきて良かった。
かなりいるな。ブラックウルフの群が40匹ほど、こちらに気づいて向かってきた。もう少し行ったら迎え撃つ準備をするか。
するとタルツが私の前に出た。
迎え撃つつもりだったが、タルツは身体強化で上げたスピードのままウルフの群に突っ込んでいった。
私はタルツが駆け回りながらウルフを倒していくのを眺めつつ、氷の矢で援護した。
「タルツ、やはりお前は強いな。」
「いえ、領主様の身体強化と援護のおかげです。私だけではこれほどの短時間で倒せなかったでしょう。」
「タルツを手放すなど、伯爵は何を考えていたんだろうな?これほどの実力を発揮できる者はそういない。ルスカートでもトップクラスの実力なんじゃないか?」
「いえ、私には勿体無い言葉です。」
タルツが抜けた穴を考えると、タルツを罠に嵌めて処刑しようとした伯爵家は衰退の一途を辿っているのではないかと思った。
「そうか。さぁ、西へ進むぞ。索敵を広げているが、かなり魔獣が西に流れているようだ。」
「はい。急ぎましょう。」
私たちは再び西に向かって駆け出した。
その後も、タルツと共にワイルドベアやトロール、レッドボア、などを見つけ次第討伐していった。
もちろんそんな大量の魔獣を持ち帰るわけにはいかないし、私もタルツもAランクなので成果を上げたところでランクを上げられるわけでもない。
素材など売れるものもあるだろうが、今はそれをわざわざ切り取って回収する時間も惜しい。
勿体無いとは思うが、全てその場で灰にして西へ進んだ。
もうそろそろ西側は一掃できただろうか。
「タルツ、肉は好きか?」
「え?はい。好きです。」
「そうか。いいお土産ができたぞ。ミノタウロスの番がいる。恐らくこれで最後だろう。ミノタウロスは村に少し渡して、残りは持ち帰ろう。治安部隊の皆で食べてもいいし、ファルトの店にも一部渡すか。」
「はい。皆喜ぶと思います。」
「決まりだな。締めに一体ずつ倒すか。」
「はい。」
まぁそうだよな。そうなるよな。
私は風の槍で頭を一気に貫き、タルツは一瞬で間合いを詰めると一撃で頭を切り落とした。
・・・締め、一瞬で終わったな。
私は流動で2体のミノタウロスの血抜きを済ますと、重力操作をかけて、タルツと共に1体ずつ担いで、レーマンの西に位置する岩山の麓にあるケーゼ村へ向かった。
「村長、レーマンから西側に移動していた魔獣の討伐が終わった。これで山に入っても魔獣に襲われることはないと思うが、また何かあれば知らせてくれ。
これはさっき狩ったものだが、村の皆で分けてくれ。」
「ありがとうございます。よろしいのですか?」
「もちろんだ。これほどの量を領都まで持ち帰るのは大変だからな。
解体するために少し場所を借りてもいいか?」
「どうぞどうぞ、いくらでも使っていただいて構いません。」
「タルツ、解体はできるか?」
「はい。できます。」
「では解体を頼む。私はレーマンに残してきた馬たちを引き取りに行ってくるから、タルツは解体を進めておいてくれ。持ち帰るための袋も買ってこよう。」
「畏まりました。」
私は村にタルツを残し、レーマンへ走った。
フロイは頭がいいから単独で並走できるが、私が他の馬に乗ると拗ねるだろう。
タルツが乗ってきた馬は単独で並走できるか分からないため、仕方なく私は2頭の馬の間に立って手綱を握り、私も馬と一緒に走ることにした。
「今から西にあるケーゼ村まで走るが、ちゃんと走ってくれよ。いけるか?」
暴れずに走ってくれるといいのだが・・・。
ブルルル
ブルルルル
ん?馬同士で話し合っているのか?
私の言葉を理解している様子のフロイが、馬に馬語?で説明しているんだろうか?
分からないが、とにかく村まで大人しく走ってくれればいい。
「頼んだよ。」
私は2頭の馬の首筋を撫で、走り出した。
馬は暴れることなく村まで走りきり、水を与えて村の入り口に繋いだ。
タルツの元まで向かうと、長老だけでなく村のみんなが集まっていた。
「タルツ、待たせたな。」
「いえ。解体は終わっています。」
「ありがとう。持ち帰る分はこの袋に入れてくれ。凍らせて重力操作をかけて背負っていこう。」
「はい。」
「長老、場所を貸してくれてありがとう。村の皆、また何か困ったことがあったらいつでも知らせてくれ。」
「領主様、お肉ありがとう。」
「また来てね。」
「ありがとうございました。」
「あぁ、また来よう。タルツ、帰るぞ。」
「はい。」
村のみんなは馬を繋いでいる村の入り口まで総出で送ってくれ、馬に乗ると手を振って見送ってくれた。
誰1人として魔獣の被害に遭うことなく、みんなを守れて良かった。
「タルツ、夜目は効くか?いや、やはりどこかで一泊するか。」
「夜目は効きますが、このままクンストまで走らせるには馬に負担が・・・。」
「そうだよな。セモリナまで行けるか?もうそろそろ馬が無理か・・・。
仕方ない。この辺りで夜を明かすか。」
回復をかけたとしても体への負担が減るわけではない。
私たちは街道を横に逸れ、馬から降りた。
「野営道具を持ってきていませんが大丈夫ですか?夜は私が寝ずの番をしますのでご安心下さい。」
「いや、それは必要ない。結界を張っておけば大丈夫だ。ちゃんとタルツの分も張るから安心しろ。」
「自分だけでなく他人にも結界を張ることができるんですね。早く知りたかった。」
「タルツはファルトを守りながらここまで来たんだもんな。結界を使わずに守り切るのは凄いことだ。何かの時に必要になるかもしれない。今から練習してもいいんじゃないか?」
「はい。ぜひ習得したいです。」
「タルツは真面目だな。魔術のことで知りたいことがある時には、ミランを訪ねるといい。あいつは魔術については私より詳しいからな。」
「はい。ありがとうございます。」
「火は焚いておこう。夜中や明け方には寒くなるだろう。」
「すぐに焚き火の準備をします。領主様はこちらでお待ちください。」
「1人で全てやろうとしなくてもいい。私も小枝を集めよう。」
「領主様が小枝を・・・?」
「私は騎士団に勤めているからな。野営は慣れているんだ。」
「しかし・・・。」
「そんなに気負わなくていい。
私は貴族らしくないと言われるから、大変だと思うが・・・。そこはすまない。」
「私は・・・領主様に再び騎士としての仕事をいただいて、感謝しています。
誇り高き騎士でいたいと思っていましたが、伯爵家では使い潰される未来が見えていました。ここは違う。なぜですか?領主様ほどの地位と力があれば、人を意のままに動かすこともできるのに。」
「人を意のままに動かして、それのどこに幸せがあるんだ?
人にはそれぞれ思い描く幸せがあると思うが、私の幸せは領民が平穏で幸せな日常を送ることや、部下が成長したり、友人と楽しく飲んだり、そういうことに幸せを感じる。
それに、領民が幸せに暮らせるようにすることが領主の務めだろう?
まぁ、私1人で何でもできるわけではない。皆に協力してもらうことは多々ある。私は領民とも、騎士団の隊員とも、邸の使用人やタルツたち治安部隊とも、協力してもらえるような関係を築きたい。おかしいか?」
「いえ。凄いと思いました。」
「凄くはない。まだ私は未熟者だからな。これから先、間違うこともあるだろうし、全て私の言ったことに従う必要はない。私が間違っていれば間違っていると言ってほしい。」
「分かりました。私はあなたのような主君に仕えることができて幸せです。」
「では、これからもタルツにそう言ってもらえるよう精進しないとな。」
朝起きると、タルツは火を焚いて馬にブラシをかけていた。
あいつ、絶対寝てないな。
まぁ、真面目な彼のことだ。仕える主人の隣でなど寝れないか・・・。
悪いことをしたな。気付かない振りをしておくか。
今日と明日は休みを取らせよう。
戦闘では器用に何でもこなすが、こういった部分では不器用なんだな。
少し私に似ているように思えて親近感が湧いた。
閲覧ありがとうございます。




