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拾われた戦争孤児が魔術師として幸せになるまで  作者: 武天 しあん
変化する日常

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>>>別の日


王都の近くで一度冒険者活動をしてみたが、その後はまた領地の村を回ったり、芸術家の寮の増設などの調整もあって、なかなか冒険者ギルドには来れなかった。



もうすぐセモリナ村の隣に作っているパスタ工場と製粉所が出来上がる。

去年から、村に戻ってきた人もいたり、知り合いの知り合いというような繋がりで移住した者もいる。

麦畑は少し広がって、収穫ももう終わる頃か。

そして脱穀して干して、いよいよ製粉所とパスタ工場が稼働する。


来週は収穫祭と、製粉所とパスタ工場の完成記念のお祝いに行くから、冒険者ギルドにはしばらく来れないだろうと思い、今日はまた王都の冒険者ギルドに来ている。




「ウィル、待っていた。俺と共闘してくれないか?」


先日ウルフの群の討伐をした際に荷車を運ぶのを手伝ってくれた冒険者が声をかけてきた。


「ん?構わないが、私を待っていたのか?」



何か約束をしていただろうか?イースとグラとは次回の約束をしたが・・・。

イースは今日はいないな。グラはしばらく自主練すると言っていたし、いないか。



「あぁ。どうしても会いたいと思って待っていたが、なかなか現れないからもう別の街に移動しちまったのかと思った。」

「私は王都に住んでいるし、王都で仕事をしているから今のところ他の街に移動することはない。」


「Aランクなのに他に仕事があるのか?」

「あぁ、冒険者は副業だな。」



「マジかーそれでなかなかギルドに来なかったのか。

しかし副業なのにその若さでAランクまで上り詰めるなんて、スゲェな。」

「君は・・・名前を聞いていただろうか?忘れていたらすまない。」


「あぁ、俺はCランクのジーゲルだ。名乗ってはいないな。」

「そうか。それでジーゲル、共闘するために私を待っていたのか?理由を聞いても?」



「そりゃあな。この前参加した全員がランクアップして、しかも顔つきまで変わってみんな成長していたら気になるだろ。

最近伸び悩んでいてな、俺も変われるなら変わりたい。」

「そうか。みんな成長していたか。私としては課題が残る討伐だったんだがな。

今からでもいいなら行ってもいいぞ。いいのがいるか見てみるか。」



私は索敵を広げていった。

王都周辺にはCランクが成長するのに良さそうなのは・・・いないな。



「今、王都周辺には適当な魔獣はいないようだ。王都から1時間ほど馬で駆けたところに湖があるのは知っているか?そこで以前ワイルドベアに遭ったんだが行ってみるか?

いい魔獣がいるという保証はないが。」

「俺は馬は持っていないし乗る自信がない。」



「馬は使わない。私が身体強化をかけるから走っていくんだ。

ちゃんと回復もかけてやるから心配するな。」

「マジか・・・これがAランクか・・・。

いや、でもこんなチャンスはもう無いかもしれない。俺は行く。」



「自分も一緒に行ってもいいっすか?」

「お前は今日もいたのか。」


前回ウルフ討伐に参加した騎士団の戦士が声をかけてきた。


「シャームっす。ウィルさんは俺の憧れなんす。」

「私は戦士じゃないんだがな。まぁいいか。2人ともCランクだしな。ジーゲル、シャームも一緒でいいか?」

「あぁ。」



「あの、俺も連れて行ってもらえませんか?」

「ん?君は?」


翡翠色の目か。線も細いし魔術師か?



「俺はヤードっていいます。Dランクの魔術師なんですが、ダメですか?」

「いいんじゃないか?2人はどうだ?」

「いいっすよ。」

「俺も構わない。」



「よし、決まりだな。すぐに出発しよう。」

「「「はい。」」」


強くなりたいと、頼ってくれる者がいるなら協力してやるのもAランクの務めだろう。




「うわぁ!なんだこれ!?」

「凄い・・・」

「ウィルさんの身体強化はいつも凄いっす!」

「ジーゲルとヤードは誰かに身体強化をかけてもらうのは初めてか?」


「初めてです。」

「あぁ。これは確かに馬に乗る必要がないな。正直グレートソードを持って走るのは厳しいと思っていたが、これならいけそうだ。」

「そうだろう?一気に湖まで駆けるぞ。」


「「「はい!」」」



太陽が昇ってジリジリと肌を焼き始めた頃に私たちは湖に着いた。

以前フロイと来た時と変わらず、とても綺麗で静かな景色がそこにあった。

やはり森はいいな。真夏でも木陰は涼しいし、森の中を通る風は少し冷んやりとして、汗ばんだ首元を心地よく吹き抜けた。



「こんなところがあったのか。綺麗な景色なのに誰もいないんだな。」

「あぁ。前にワイルドベアが出たからな。魔獣が多く生息しているせいかもしれない。」

「へぇ、いい場所ですね。涼しい。」

「さすがウィルさんっすね。」



「誰も来ないなんてもったいないな。いや、人に荒らされないからこんなに綺麗なのか?」

「そうかもしれないな。

お、いいのが来たぞ。君らは運がいい。」



「ウルフの群かイーグルか?まさかワイルドベアか?」

「いや、リザードマンがこっちに向かっている。複数な。」



「リザードマン・・・。」

「リザードマンが複数・・・そ、そうか。ウィルも一緒に戦ってくれるんだよな?」

「いや、私は基本的に攻撃はしない。君たちだけでやってみろ。ジーゲルは戦闘までに武器を振り回して身体強化を馴染ませろ。」



「・・・分かった。覚悟を決める。俺がウィルに頼んだことだしな。

こんなところまで付き合ってくれたんだ。やってみる。」

「俺、今日死んだりしないよな?」

「自分はいつでもウィルさんに従うっす。」


「ヤードもジーゲルも心配するな。もし厳しいようなら援護するし、君らを死なせはしないから思いっきり戦ってみろ。」

「自分にはないんすか〜?」


「シャームは言わなくても分かっているだろう?」

「はい!分かってますっ!」


「はははは、シャームは緊張感がないな。」



「やった。ウィルさんの輝く笑顔を見れただけで今日は最高な日っす!」

「確かに、なんかいいことがありそうな気がしてきました。」

「だな。」



「・・・いや、それはおかしいだろ。まぁ、変な力が抜けたなら良かったが。」


なんだか複雑な気分だが、まぁそれはそれとして今日はしっかり成長させてやらないとな。

ジーゲルとシャームは軽く手合わせを始めた。



「ヤードはどんな魔術が得意なんだ?」

「俺は・・・、火と水です。誰かにかけるのはヒールと回復くらいしか・・・。」


「おぉ、ヒールが使えるなんて重宝されるんじゃないか?

今日は回復と身体強化は私が全員に適宜かけるから、攻撃メインでいくか?」

「はい。支援は苦手なのでその方がいいです。ヒールはあまり精度に自信がありません。」


「心配するな。私なんかヒールを使えないしな。使えるものや得意なものを伸ばしていけばいい。余裕ができたら苦手なものにも挑戦してみればいい。

今日は戦士が引くタイミングや、空いている個体に向けて火を中心に撃つ感じでいけるか?リザードマンは熱に弱いからな、逆に水だと効果が薄れるかもしれない。」

「はい。やってみます。」



「必要に応じて指示を出すから大丈夫だ。」

「はい。」



「俺たちは?なんかアドバイスとか無いのか?」

「うーん、私は戦士じゃないからな。必要なら指示は出すが、まぁリザードマンは熱や火に弱いから、ヤードが攻撃した箇所を中心に攻めると良い。

身体強化と回復は適宜かけるから、スタミナ切れは心配せず最初から全力で行け。

アドバイスはそれくらいだな。」



「ジーゲル、ウィルさんがついているんだ。心配ない。ウィルさんは戦士のこともちゃんと見てくれるし、戦士が力を発揮できるよう動いてくれる。」

「そうか。ウィルさんと親しそうなシャームが言うんだから本当なんだろう。」


「俺、ウィルさんと親しいかな?親しく見えるかな?なんか嬉しいな。なんか力が湧いてきた!」


シャームは変な奴だな。



閲覧ありがとうございます。

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