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第五話

図らずもポッキーの日に投稿。いや全く全然これっぽっちも関係ないんですけどね?



――満開の花が咲いた。



 声にならない歓声をあげながら、小さな口をめいっぱい広げてクレープにかぶりつく彼女の笑顔は、そう形容するに相応しい。


 しかし、対面に座り、冷たいコーヒーを啜る俺の顔は真反対に荒んでいた。





「まだ気にしてんの? 翔太くんにからかわれたこと」


「……」


「あんた、体は大きいのに心が狭いわよね。

 冗談なんだから、気にせず許してあげればいいじゃん」


「お前は、自分の与える影響の強さを知るべきだ」


「あんたにだけは言われたくはないけどね」




 言葉に詰まってしまう。自分自身が与える影響の強さは、つい最近思い知ったばかりだ。

 シャープペンシルを落としただけでそれが発揮されるのだから、まったく嫌になる。


 しかし小町もまた、口を尖らせている様子から察するに自分の影響力の強さを否定は出来ないでいるのだろう。

 校内でアイドル扱いされ、神聖化され、あまつさえ新興宗教を作るのではないかと危ぶまれているのに今更かとは思ってしまうが。




「また小町を愛護する団体を自称する奴らに絡まれるくらいだとは思うが、それが原因でクラスメイトの間で悪い噂でも起きないかと心配でな……」


「悪い噂なんて今更な心配する必要ある? でも、あいつらに関しては同感ね……」




 自称、小町を愛護するために集結した団体。


 名前は忘れたが、名乗りを上げて俺に対して宣戦布告してきたことは記憶に新しい。

 そのときからまだ一年も経っていない。


 愛護する対象から恐怖されている時点で破綻しきっている気がするのだが、本人たちは気が付いていないらしい。




「……まあ、必ずしも嗅ぎつけると決まった訳でもないしな。

 それに、たとえ絡んできたとしても相手にしなければ良いだけの話だ」



 暗く重い雰囲気になってしまったので、適度にフォローしておく。フォローになっているかは謎だが。



「……そうね。それにあいつらのこと考えながら食べたら、美味しいクレープも不味くなっちゃうし。

 せっかくの奢りなんだから、しっかり味わわないとね?」


「ああ、せっかくの奢りなんだから、美味しく食べてもらわないと困る」




 再び笑顔でクレープを食べ始めた小町を眺めつつ、俺はコーヒーを啜った。

 コーヒーはすっかり温くなっていたが、今の俺にはちょうどよかった。





――「そうそう、今日あんたを呼びつけたのには、ちゃんとした理由があったのよ」



「ちゃんとした理由?」



「ちょっと相談というか、頼みたいことがあって」




 小町がこういう言い方をするのは、珍しい。いつもであれば、頼みごとがしたい、などという婉曲で此方を窺う言い方はせずに、~して、とか~しなさい、とかそういった言い方をすることが多い。


 俺が怪訝な表情をしているのに気が付いたのか、小町は慌てて言い繕った。




「わ、私らしくないことを言っているのは分かっているわよ! でも、流石に頼みづらいことだから、遠慮してしまっているというか……」



「遠慮とか頼みづらいとか、それこそ今更じゃないか? 俺相手に遠慮なんてするなら、今日教室にずけずけと来たりしないだろう」


「あんた本当に心狭くてねちっこいわよね。そんな些細な事をどれだけ気にしてんの?

 ……なんか、確かに気にしているのが馬鹿らしくなったわ」


「お前はそれでこそ、だろう。変に遠慮されても気持ちが悪いだけだ。

 俺に出来ることならしてやるし、さっさと言ったらどうだ?」



「あんたは本当に一言余計よね。気持ち悪いとか可愛い女の子に言うことじゃないわよ?」


「お前が可愛い女の子であることは認めてやるが、それとこれとは話が別だろう。

 お前らしくないのは慣れないし、気持ちが悪い」



「……まあ、良いわ。じゃあ、言うけど」




 小町は姿勢を正して、しっかりとこちらを見据えた。

 大きくてつぶらな瞳に、俺の呆れた顔が映っている。





――そして、その俺の顔が驚愕に染まっていくのが、見えた。





――「私と、付き合ってくれないかしら」




幼馴染に恋をするなんて(ry

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