意識外の会話
カナメの夢の中に人間の女が現れた。
バレリーナの格好でクルクルと回っている。
その女が消えたと思ったら、今度は自分の隣に寝かされて、『助けて! 助けて!』と、悲痛な叫びを上げた。
(誰だ?)
カナメはその女の顔をどこかで見たような気がするが、思い出せない。
女がこちらを見た。
『ねえ、ヒーローさん、私を助けてくれるんでしょう?』
頼られても、こちらも身動きが取れない。
再び意識が遠く。
次に意識が戻った時も、まだ朦朧として夢の中のように思えた。
男女の会話が、壊れかけのラジオのように途切れ途切れでカナメの耳に届く。
男の声『××××をどうし××か?』(このものをどうしますか?)
女の声『××の×を××切り落とせ』(左手の指を全部切り落とせ)
男の声『×だけですか?』(指だけですか?)
女の声『そうだ』
男の声『×り落とした×は?』(切り落とした後は?)
女の声『拘×して××に××り×んで××』(拘束して部屋に放り込んでおけ)
男の声『××しま×た』(承知しました)
カナメは、ぼんやりとそれを聞いていた。
(これは夢か現か?)
誰が会話しているのだろうと周囲を見ようとしたが、目隠しをされているようで何も見えない。
(……ここは……どこだ? 私は……どうなっている?)
口はテープのようなもので塞がれている。
背中に当たるクッション具合から、手術台のようなものの上であおむけに寝かされているようだ。
胴体と手足はベルトで固定されている。身をよじることすらできない。
(誰に何をされているんだ?)
これから何をされようとしているのか、どうしてこんな目に遭っているのか、さっぱり状況が掴めない。
敵を確認することはできなかったが、モンスもこのように襲われたのだろうと推測できた。
「処置を始める」
男の声と共に、左手小指の付け根がヒヤリとした。冷たいナイフの刃が当てられたようだ。
(何⁉)
容赦なく一気に圧力を掛けられて、カナメの小指はザクリと切り落とされた。
(ウグ……)
反射的に身悶えたが、がっちりと固定された手足は逃れられない。
(やめろ! やめろお!)
口を塞がれて声は出せない。
カナメの様子に男が気付いた。
男の声「動いている。意識が戻ったようです。麻酔を掛けますか?」
女の声「いらない。続けて」
一本では終わらなかった。
薬指、中指、人差し指と、切り落とされていく。
その都度、カナメは必死に抵抗したが何の影響も与えない。
(どうして、こんなことを……)
左半身はクローン臓器なので、痛覚がない。激しい痛みはないが、違和感はある。
このまま右手指を切り落とされたら、失神するかもしれない。
(誰がどうしてこのようなことを?)
実験なのか、それともただの残酷な遊びなのか。
男の声「激しく動いていますね」
女の声「眠らせて」
女の指示で鼻にマスクを充てられた。
麻酔ガスを嗅がせられたのか、カナメの意識は遠のいた。
動かなくなったカナメを見た女は、作戦を実行することにした。
女「私を縛って、同じ部屋に置いて」
男「縛るんですか?」
女「そうよ。一緒に捕まった振りで信頼を得るの」
男「危険です」
女「これがあるから大丈夫」
女は、折り畳み式ナイフと拳銃を見せた。




