64.(エクストラ)閉じ込められたダンジョンマスター達の一日
・幽閉されたダンジョンマスターの1人視点
彼は7人のダンジョンマスターと共に閉じ込められていた。
どうして俺はこんな場所に居るんだ、俺が何をした、と彼は思う。
「配下は使い物にならなくなってますね~」
他のダンジョンマスターが呑気に呟く。
ダンジョンを乗っ取られた。
配下を奪われた。
アイテムの使用権とDPの使用権を奪われた。
彼は無力となった。
何もかも奪われた彼は、どうすることも出来ない自分に嫌気がさして、下を向いている。
いや、こんな状況、例え誰だろうと覆すことは不可能だ。
彼はそう考える。
「おら! 聞こえてるんだろ階位1位!
さっさとここから所から出せ!」
「そうよ! こんな汚い奴らと一緒なんて嫌よ!
せめて個室を用意しなさいよ!」
「ああ?!」
「何よ!」
牢獄の外に叫んでいるダンジョンマスターも居る。
叫んだところで何が変わるわけでもないのに、馬鹿な奴らだ。
いや、何もしないで俯いている自分も同類か、と彼は思う。
部屋に現れたテレビには、他の牢獄の様子も映し出している。
どこも同じような感じだ。
怒って叫ぶか、床に無気力に転がっているか、どちらかだ。
おそらく自分達は、このままずっと閉じ込められているのだろう。
いや、今はともかく、今後さらに劣悪な待遇を受けないとも限らない。
彼はそう考えた。
「おい! 何寝てんだてめー!」
叫んでいたダンジョンマスターが、寝転んでいるダンジョンマスターを蹴り飛ばす。
今は喧嘩している場合ではないだろうに。
「ちょっと! 何してんのよ!」
「るせぇ!」
程度の違いこそあれ、どの牢獄内でも嫌な雰囲気になっていた。
ただ、21番の牢獄の連中は全員寝転がっているみたいだが。
……ん? 海賊船ダンジョンの彼女まで大人しくなっているのか。
彼女は賢いから、体力を温存しているのか。
彼はそう思った。
◇ ◇ ◇ ◇
・21番牢獄の様子
ここは21番牢獄。
今日は食い倒れに調査を任せ、命達はトランプゲームに興じることにした。
「次はブラックジャックをするとしようか」
「外科医でござる?」
「ツギハギの無免許医じゃないぞ。
ルールは簡単だ。
カードを21点に近付くまで順番に1枚ずつめくる。21点か、それに近い点の奴が勝者だ。
絵札は10点、Aは1点か11点、他は数字通りの点数。
21点より大きくなったらバーストで失格。
プレイヤーはバーストになる前にスタンド宣言し、めくるのを終了する。
始めての奴らが多いから、賭けは無し。
賭け無しだから、当然ダブルやスプリット、インシュランスも無しだ」
「俺ァルール知ってるから、賭け金ありでもいいぜ?」
「面白そうでござる」
「手加減してくれたまえ」
「興味ないの」
「同じ奴が3回連続で勝ったら、景品をやろう」
「……やっぱり参加するの。金魚を買ってもらうの」
「よし、全員参加だな。
俺がディーラーだ。
いくぞ」
21番牢獄の連中は他の牢獄が険悪な空気になっていることなど知らず、呑気にゲームしていた。
書き溜めはここまでとなります。




