俺と幼馴染みは偵察する
嗚呼、悲しきかな、俺の流されやすい性格(榊限定)。
手を引かれて、腕を引かれてやってきましたはデパート。思い出されるは忌々しき思い出の一つ、大声で格好つけて啖呵を切るという、特急列車並のスピードで黒歴史行きが出発したあの日である。
今、思い返してみるとあれは酷いとしか言いようがない。普段の俺ならば、あそこまで熱くならないのに、あのときだけはスポコンの主人公並に熱かった気がする。普段の俺を知っている人からすれば、何か道に落ちているものでも食ったのではないかと勘ぐられるだろう。実際はそんなことはないのだが。
六月の後期の方ともなると、外は日で照らされており熱いため、クーラーの効いたデパートがとても涼しく感じる。現在は朝の11時なので、外の気温はこれから熱くなると言ったところだ。というわけで、今日はデパートで1日過ごしたい。外熱いし。帰るタイミング逃したし。
「さて、何処に行こうか?」
「行先決めてねぇのかよ……。俺は別にどこでもいいぜ」
「むー。どこでもいいって言うのが一番困るんだけだなぁー」
自由度が高すぎると逆に何したらいいかよくわからなくなるやつだな。俺は、彼女の言葉にそう続け、取り合えず目に入ったアクセサリーショップに入る。榊は腕に胸を当ててこようとするが、それを甘んじる俺ではない。そろそろ、ショートの髪型の榊にも美形耐性がついてきた。大体、榊は学校一位二位を争う美少女である。そのレベルまで行くと、もうなんか観賞する気しか起きてこない。幸崎も同様に美形なので、女子生徒が告白出来ないのはそのためである。あいつが鈍感だというのも多分に含むが。そして、俺はアクセサリーショップに足を踏み入れたのだが。
「あれ、どうしたの神座。急に外に店の外に出てきて。早く入ろうよ?」
「スマン、俺は自分の遭遇運をここまで恨んだ事はない」
「ん?何々どういうこと……?あぁ、そういうことね」
俺が足を踏み入れたアクセサリーショップ。
そこにはなんと、幸崎が居ましたー。当然、一人ではなく取り巻きと一緒にである。数人の女子と来るとかマジあり得ん。
予定調和とか、ご都合主義とかそんなもんじゃ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。とか言っちゃうぐらい、俺は今自分のこのデパートでの幸崎との遭遇率の高さに驚いている。2分の2、つまり100%なんだぜ……?
100%ってどう言うことだよ……。この世に絶対はないとかいってるやつに今の俺の状況を見せたいもんだな。それで、腹いせにざまぁみろって思いっきり笑ってやりたい気分である。
久しぶりに無音回転を使用としたら後ろ襟を捕まれた。ぐぇ。仕方がないので榊に尋ねる。
「どうするんだ?榊」
「……。ばれないように観察しよう」
「お前、観察しようって……」
「最近、メンバーが増えたって友達に聞いたんだよねー」
「……」
「人の恋路って気にならない?」
「い、いやぁー気にならないなー」
「棒読みだし、目が泳いでるよ」
榊に指摘され、確かに目線が彼女に合っていないことに気がつく。無意識って怖いね。幸崎の恋路は気にならないと言えば嘘になるだろう。たとえ本人の預かり知らぬ所で、間接的だったにせよ榊を危害を加える真似をした男なんだから。そんな男が一体どうやって、人を幸せにするというのか。俺の逆恨みも兼ねて、あそこでヘラヘラ笑っている幸崎が俺はやはり好きになれない。
「……怖い顔してるね神座。やっぱり、サッカーを止めたのとか関係しちゃったりしてるのかな?」
いつの間にか、幸崎の方を睨んでいたのか、榊が俺に話しかけてくる。何処から、俺がサッカーを辞めた事と繋がったのか分からない。まぁ、鎌をかけられたと思ってスルーしておこう。ほら、俺ってそういう人間だし。
「うわぁ、スルー?ま、話したくない事だってあるよね」
無言を貫く俺の心情を察したのか、素直に引き下がる榊。榊が引き下がるの何て珍しいし、正直しつこく聞かれるのを危惧していた俺からすれば、拍子抜けだ。勿論、良いことではあるはずなんだが。
「ところで、私の仕入れた情報によると、幸崎くんの横にいるあの子が新メンバーらしいよ?」
「あーっと、あの金髪蒼眼でお人形みたいと称されてそうな女の子の事か?」
「そうそう、その通り。つまり、私と一緒だね!」
榊が新メンバーと称した幸崎の横に一人で居る少女は俺が述べた通り、金髪蒼眼で肌が白い。俺の言葉で一番伝わり安く言えば、ライトノベルで表紙張れるほどの美少女。幸崎の周りにはそれレベルの美少女が沢山いるので今更という感じだが。念のために言っておくと、榊の方が数倍可愛い。当然だがな。
「つーか、二人きりか?ライバルが居ない状態って幸崎ハーレムに限ってあり得ねぇだろ」
「確かに、変だね」
そう言って、首を傾げる榊。
ちなみに、俺と榊は既にアクセサリーショップに足を踏み入れており、アクセサリーの飾られている棚なんかに隠れている。つまり、岩影からちらっと体を出しているような、顔文と同じような状況だな。……あれ?あれってアスキアートだっけ?素人が例えで使うものじゃ無かったな。
「でも、何も知らない私たちが考えたところで答えなんて出るわけないでしょ?」
「ま、それもそうだな」
「というわけで、偵察続行!」
「……人の恋路を邪魔する馬鹿は馬に蹴られて死ぬって言葉を知らないのか?」
「偵察だから、邪魔してる訳じゃないもん」
棚から顔を出して見ている俺の上から顔を出している榊に訴えかけるが、俺の意見が聞き届けられることはない。別にいいし、無視されるのには慣れてるし。むしろ、あえて無視されにいくスタイルだから。別に、全然スルーされたこととか気にしないタイプの人間ですし、俺。
「へいへい、そうですか」
俺がそう答えると、むすっとした雰囲気を醸し出す榊。これは俺の持論だがある一定以上の美少女になると、自らの感情が、雰囲気と何ら遜色のないレベルまで発せられると思う。つまり、榊はとてつもなく美少女。
「全く。神座は素っ気ないんにゃ!」
「うっおっい!」
急に背中に加わる質量。榊が可愛らしい噛み方をしているが、テープレコーダー持ってないし、そもそもそんな余裕がない俺は、右足を全力で踏みつけることのよってなんとか背中に加わった衝撃を逃がし、地面との接吻をなんとか避ける。超焦った。
「大丈夫か!?榊」
いまだに上に乗った状態なので不安が俺を襲う。さっきの力の加わり方は、俺の背中に伝わる質量から一度も離れていな榊には無理。つまり、外部から力を加えられたことが考えられる。報復してやろうと思ったが榊がやめてというので止めておく。
「あ、うん。だ、大丈夫だよ。……もう、穹ちゃん!いきなり何するの!?」
「はっはっは、ゴメンゴメン。ちょっと飛び込みたくなってね」
「危なかったんだからね。で、どうしてここにいるの?」
榊は穹ちゃんと呼んだ少女に、何故ここにいるのかを尋ねる。
尋ねられた少女は、ない胸を張り、ドヤ顔を張り付け、俺達に宣言する。
「何でって。そんなものは至極当然、単純明快!幸崎光輝がここにいる。それ以外に僕、空谷穹がここにいる理由なんて存在しない!」
大声で、自分がここにいる理由を証明したその僕と名乗る少女は幸崎の幼馴染みにして、かつて俺が現代日本においていまだに拡散が足りとないと考えていた、ボーイッシュ僕っ娘系少女――空谷穹だった。
第三十一話。
ついに、空谷さん登場!
誰か分からない方は九話参照でお願いします。
次回の投稿は、二週間いないが目標です。




