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俺と幼馴染みの賭け

「テスト、全然勉強してないよー」

「……彗ちゃん?」

「あ、いえ。なんでもないですっ!」


テスト前の数十分、俺は榊達と一緒に居た。隣では、諏佐原と楔が夫婦漫才している。ハイハイ、バカップル、バカップル。言ってやろうかと思ったが、楔の頭は俺よりもいいし、諏佐原がなんかキレてきそうな気がしたので止めといた。最近の若者はキレ易いらしいし。キレ易いらしいし。大事なことだから二回言ったが、最近の若者はマジでキレ易いらしい。確かに、幸崎に理不尽な理由でキレられた覚えしかない。つまり、幸崎は典型的なキレる十代。イケメン信者の論破完了。幸崎の取り巻きだって(権力に頼るから)もう怖くない。この世で一番強いのはやはり権力。今日も今日とて、俺の証明理論は絶好調。


「神座がまたロクでもないこと考えてるよ……」

「ロクでもないとは失礼な。俺だって、ロクでもあることを考えたりはするぜ?」

「へー、屁理屈はどうでもいいから。何考えてたの?」

「あいつは桔梗に謝るべきだなーと」

「なるほど。で、本音は?」

「ちょっかい出してきたら権力ですり潰せるのになーと」

「駄目だこの幼馴染み、早く何とかしないと!!」


それは既に手遅れの奴に使う台詞だ。

という台詞を心の中に止めておく。というか、俺の一体どこが手遅れなのだろうか。むしろ早すぎたレベル。何時に成ったら、時代は俺に追い付くのだろうか。遅いなぁ、時代。


「というか、神座。建前と本音が全然違くない?」

「……細かいことは気にすんなよ」


俺らが話している隣では、いつの間にか諏佐原が正座をして楔から説教を受けている。一体、何がってそんなことになったのか気になるが、そんなことよりも相変わらず幼馴染みには容赦ないな楔。


「だいたい、彗ちゃんは僕に勉強を教わったんだから、自信をもってよね。テスト勉強全然やってないって台詞は、失敗したときの為の自己弁護だよ。頑張った自分の努力を否定するような行動はやめようよ。彗ちゃん、頑張ったんだからさ!」


楔がイケメンすぐる。

何あのイケメン。顔立ちは中性的というか可愛い系の顔立ちやなのに、なんて男前。俺が女だったら確実に惚れてる――とはいえ、もし俺が女だったとしても諏佐原という楔の幼馴染み相手では勝ち目はないだろうが。この台詞をほざいたのが俺だったら、榊にぼこぼこにされる。


「ねぇ、神座。このテスト私と賭けしない?」

「こ、と、わ、る!」

「そんなあからさまに拒否らなくても……」

「俺は、勝てない勝負はしない主義だ!!少年漫画のように、僅かしかない確率に賭けるようなこと俺には出来ない!」

「うわぁ、知ってたけど、超保身的だ!?」


榊からの提案がそれこそロクなものであるはずがない。もはや俺はそう確信してるね。ゴールデンウィークといい、遠足といい、酷い目にあっているからな。主に俺が。というわけで、榊からの提案に俺が乗るはずもない。例え、世の男性諸君が羨むような条件、何でも好きなことを一つ叶えるなんて条件でも俺は乗らない。俺は基本、ローリスクローリターンに忠実である。会社に入社してもそうする心積もりであります。


「いいじゃん、やろうよ神座。私と賭けで勝負しようよ!」

「ええい、今日はやけにしつこいな榊!」

「条件は、全教科の合計得点で、賭けは新しく駅前にできたカフェでパフェを奢るで!」

「……それぐらい、父親に奢ってもらえ!!」


珍しく張り上げた声の理由が、パフェの奢るか奢らないかって話というのは、なんとも言い難い気持ちになった。え?俺が勝つ確率?

そうだなぁ、初期レベルの勇者がラスボスに勝つぐらいだろうか。




そして来ました、テストの返却日。

生徒達は、そのテストの出来に思いを馳せ、落ち込んだり嬉しがったりと反応は様々だ。ちなみに、行きすぎた例として、号泣しているやつも数人いる。かく言う俺の隣の生徒も、嬉しそうに抱き合ったりしているのだが。


「やったね彗ちゃん!校内13位だよ! 」

「う、うん!私、頑張った!!」


楔に抱きつく諏佐原の耳が真っ赤なのは、嬉しくて泣いているからだろうか。それとも、何か別の理由でもあるのだろうか。色々と、邪推してしまうが、勿論声には出さない。何故ならば俺は、空気にすらなれる男、簪神座だからだ。諏佐原の順位は聞いたことないが、それでも三桁はあったはずなので、軽く百人抜きを達成したことになる。凄いのは得点を獲得した諏佐原か、得点を底上げした楔か。


「神座は何位だった?」

「……黙秘権を行使する」


例え、榊であろうとこれだけは譲れない。

俺は一言たりとも賭けに参加するなんて言ってないが、榊の中では俺は確実に賭けに参加していることになっているからだ。こういうときに榊が強引なのは、今までの経験から分かっている。隙を見せればやられる。それが榊。


「じゃあ、私の順位教えてあげるからさー!」

「お前の点数を知っても俺にはなんのメリットもない」


全く、お前は他人のテストの結果が見たくてしょうがない女子か。……いや、それはその通りではあるのだが、なんと言うか違和感があるのだ。今まで、こういう賭け事みたいなことは余りやってこなかった訳だし。


「神座、見せてー」

「断る」

「見せてよー!」

「断る」


榊の言った言葉を全て却下する。

それでも榊はめげずに俺のテストの順位を見ようとする。見たい榊と、見せたくない俺。何時までたっても平行線であり、埒が空かないのは明白だった。


「ふっ!隙あり!」

「あっ!榊俺のテスト結果のプリント拉致んな!」

「……なるほど、五位か……。確かに凄いけど、超中途半端……」

「何!?俺なんか悪いことした!?」


榊の言いぐさが酷い。そもそも、俺は中途半端に定評のある男である。この濁りきっていない、微妙なハイライトの瞳と俺の意思に反して僅かにしか動かない表情筋が証拠な。というか、順位公開とか俺のプライバシー保護はどこいった。訴えたら勝てるんじゃないか。まぁ、しないけど。


「そういうお前は何位だったんだよ?」

「ふっ、私かい?私は一位さ!」

「おい、楔お前は!?」

「え?ぼ、僕?僕はい、一位だけど……?」


焦った風に楔に答えを促すと、戸惑ったように順位を答えてくれた。ワンツーフィニッシュを受けた気分だぜ……。何故だろう、俺が全然凄くないみたいじゃないか。周りが優秀だと、自分の能力の無さを見せつけられるようで、悔しい。


「じゃあ、私の勝ちだねー。さてとパフェ、パフェ」

「……!! そうだ、総合順位で負けていても、俺が勝っている教科だってあるはずだ!」

「……結局私が奢ってもらう結果に変わりは無いけど?」

「榊のパフェを何口かもらう」

「う、うん。いいけど」


俺がそういうと榊は何故か頬を赤く染めた。一体、どうしたというのだろうか。とりあえず、俺もパフェを食べれそうで良かった。なんせ、俺は甘いもの好きだからな!!

第二十七話

ちょっと、会話文が多くなってしまいました

最近、文化祭の準備で忙しく、遅れてしまいました。

とりあえず、次回は二週間以内に投稿したいです!

合計十万PV突破!ありがとうございます!

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