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第8話【テラ編】勇者様が直接〝お叱り(物理)〟に伺います

【第8話:勇者様が直接〝お叱り(物理)〟に伺います】



「……なんだあの、見るだけで目がチカチカする下品な成金趣味の馬車は」


街道をゆくテラの豪華な馬車が、前方の広場で起きている騒ぎに気づいて速度を落とした。

そこには、眩しいほどの金色の装飾が施されたキャラバンの馬車が数台停まっている。


「あれは勇者様の紋章を無断で使用し、派手な装飾で目を引こうとする偽装キャラバンですね」


御者台のセレネが冷ややかな視線を向けたまま、車内で眉をひそめるテラに答えた。


「テラ様の肖像権およびブランドイメージを傷つけています。後で〝名誉毀損による解決の必要性あり〟と報告書に書いておきます」


『セレネは相変わらず手厳しいな。おいテラ、あっちを見てみろ。偽者が何か言ってるぞ』


キャラバンの前では、頭にターバンを巻いた詐欺師たちが声を張り上げ、目を輝かせた村の少女たちを集めていた。


「さあさあ、チャンスだお嬢さん方!我々は勇者テラ様直属の〝特別スカウト団〟だ!勇者様の身の回りのお世話をする侍女になれば、国からの報酬は思いのままだぞ!」


「本当ですか!?私、テラ様みたいに強くてかっこいい女性に憧れてるんです!」


少女の一人が身を乗り出すと、詐欺師の頭は下卑た笑みを浮かべた。


「ああ、もちろんだ!さあ、この契約書にサインをして、手付金の銀貨を……」


「……スカウト?私がそんな面倒なことを許可した覚えはないな。っていうか、私の侍女は横にいるこの〝記録魔〟一人で手一杯だ」


テラは苛立ちを隠さず馬車から飛び降りると、聖剣を肩に担いで少女たちの輪に割り込んだ。


「なんだ貴様、邪魔だ……。え、その剣……ま、まさか本物!?」


「偽者の分際で、本物の聖剣に見とれてる暇があるのか?」


テラは剣を抜きもせず、襲いかかってきた野盗たちを次々と軽くいなしていく。腕を掴んで投げ飛ばし、槍を奪って束ねて放り投げる。


「私の名前を使うなら、もっとマシなことに使え!夢を見てる女の子を売って金にするようなゴミが、私を名乗るんじゃない!」


仕上げに、テラが金ピカの馬車の車輪を力任せに蹴り上げた。


――メキメキッ、ドォォォン!!


凄まじい音と共にキャラバンが横転し、隠されていた少女を運ぶための檻が露わになった。

詐欺師たちは腰を抜かし、あわてて森へと逃げ出していく。

残されたのは、騙されていたことに気づいて立ち尽くす少女たちだった。

テラはため息をつき、気まずそうにセレネを振り返る。


「おい、セレネ。なんか適当に、この子たちが二度と変な男に騙されないようなモン、持ってないか?」


「……仕方ありませんね。これを。勇者様の直筆(代筆)入りの〝魔除けの誓約書〟です」


セレネが少女たちに渡したのは、物騒な文言が並んだ立派な公文書だった。


「政府の公印を勝手に拝借して押しておきました。これを持っていれば、この近隣の役人は〝勇者の逆鱗に触れる〟ことを恐れて、お嬢さん方を全力で保護するでしょう。テラ様の〝凶暴さ〟を逆手に取った安全保障です」


「……テラ様。私、やっぱりあなたについていきたいです!」


「馬鹿を言うな。お前の居場所はここだ。……強くなりたきゃ、自分自身が誰かに憧れられるような女になりな。……じゃあな」


テラは乱暴に青い髪をかき上げると、豪華な馬車へと戻っていった。


『また女の子を泣かせたな。……いい意味で、だが』


「うるさい。……おいセレネ、さっきの書類、なんて書いたんだ?」


「〝この書類の持ち主に手出しした者は、勇者様が直接お叱り(物理)に伺います〟と記載しました」


「おい」


「事実、テラ様ならそうされますよね?記録に間違いはありません。さあ、目的地へ加速します。舌を噛まないようお気をつけください」


「私の行動を不穏なニュアンスで予約するなよ!」


不機嫌そうに叫ぶテラを乗せて、馬車は少女たちの歓声の中を爆走していった。






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