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貿易国家サーティアス

 朝食を済ませた俺はラフワールに連れられて商業施設帯に来ていた。

 「ホントすげーな。イースティアには博物館くらいしか見所が無かったからな。」

 「当たり前でしょう?サンレイドの時代からこの辺り一帯は貿易都市だったのよ。いくら三つに分断されたと言ったって施設は殆ど無傷で残っていたのよ。それならできる限り再利用しない手は無いでしょ。」

 ラフワールは上機嫌に言う。

 「それで、ウェステリアやイースティアとは国交はあるのか?」

 「勿論あるわ。ただ、私としても困っているのよね。」

 「何がだ?」

 「どうも国民同士の小競り合いは絶えないし、国境での犯罪の取り締まり方は決められないし、前途多難なのよね。」

 ラフワールはため息をつく。

 「ラフワールは今何歳なんだ?」

 「あら、女性に年齢を尋ねるなんて、随分と無神経なのね。」

 「こっちの世界でも、年齢を尋ねるのは失礼なことなんだな。」

 「当然でしょ?ま、一応年齢は18よ。」

 「18でそれだけのことを考えているとは、結構頑張っているんだな。」

 「そうね。私は覇王になるためにエンペテックを学んでいたからね。」

 また聞き慣れない単語が出てくる。

 「なんだ?そのエンペテックって?」

 「分かりやすく言うなら上に立つ王として必要な判断力や政治学、知識の全般を纏めた学術のことね。」

 「なんだ、帝王学のことか。」

 「もしかして、帝王学の方が分かりやすかったかしら?」

 「まあな。それにしても、帝王学がこっちにもあったことは驚きだな。」

 「そうね。ベガレストって国には帝がいるから、そこから入ってきた文化ね。私も、10年前に始めて帝王学に関する本を読んで王を志すようになったのよ。」

 「俺には理解できない世界だな。」

 それにしても、ラフワールは8歳の頃には帝王学について勉強しようとしていたのか。俺にとっては理解できない世界だな。

 「ふふっ、噂をしていたら、ベガレスト文化の中で一番発展している賭博場が見えてきたわ。」

 ラフワールが指を指した先には巨大なカジノ場があった。

 「随分とまた大きな施設だな。」

 「機材やテーブルを入れたり、チップの保管庫を作ると、どうしても大きくなってしまったわ。幸い、土地だけは広いから助かったんだけどね。それより、あれなんてどうかしら?貿易商の間では人気の施設よ。」

 ラフワールが案内した先にあったものは俺の世界でもよく見かけた煙突に、建物には桶と三本の湯気のマーク。

 「ここって…」

 「そうよ。入浴施設よ。運搬に大型運搬車が使われるようになったけど、疲れは溜まるから、みんな喜んで使うわ。ここは宿泊施設も併設されているわ。レイの住んでいた世界のことも個人的に聞きたいし、今日はここに泊まりましょう?」

 ラフワールは誇らしそうに言う。

 「因みに、拒否権は?」

 「あるとでも思うのかしら?」

 ですよねー。

 「だったら、その風呂は混浴か?」

 俺は一縷の望みを賭けて質問する。すると、後ろから誰かが俺の肩を掴んだ。

 「んな訳あるか!」

 「お前は、俺達と一緒だ!」

 俺が振り返ると、後ろにはウィンドとグランドがいた。

 「ちょっ、引きずるな!」

 「いいから来い!」

 「ラフワール様のお手を煩わせるな!」

 ウィンドとグランドは二人で俺の腕を掴んで引きずっていく。

 「い~や~だ~!俺はサーティアスの美女を舐め回すように見て回りたいんだよ~!」

 そんな俺の願いも虚しく、俺は二人に連れられて男湯に連れて行かれた。

 「さ、男同士、裸の付き合いとでも行こうか!」

 グランドはノリノリで服を脱いでいく。

 「兄さん、ここは店舗なんだから何時もの悪い癖はやめてよね。」

 ウィンドも落ち着きながら服を脱いでいく。

 「俺は女の子と入りたかったのに…」

 俺も渋々服を脱いでいる。すると、

 「なに、男同士じゃないと出来ない話だってあるんだ!くよくよするなよ!」

 俺が服を脱ぎ終わるやいなや、グランドは俺を掴んで浴場へ連れて行った。

 「レイは、こういう所は始めてか?」

 「来たのは初めてだけど、ルールは知っている。」

 俺は体を洗う。

 「だよな!んじゃ、洗ったらさっさと湯に浸かるぞ!」

 グランドはいつの間にか体を洗い終わっていて浴槽に飛び入る。

 「だから兄さん、ここはラフワール様の城とは違うんだから、飛び込み禁止なの!」

 ウィンドはグランドを叱る。すると、

 「いいじゃねぇか!若いもんは元気があってなんぼだ!」

 「おうおう!にいちゃん達も入ってこいな!」

 先に入っていたじいさん達はケラケラと笑いながら言っていた。

 「どれ、後は若いもんでゆっくり浸かりな。わしら老いぼれはそろそろのぼせるからでていくよ!」

 俺とウィンドが入ると、じいさん達は笑いながら出て行った。

 「さて、どんな話がしたい?」

 「俺達で出来ることなら、可能な限り話してやる。」

 二人は浴槽内に人がいないことを確認すると質問を受け付ける姿勢を見せる。

 「んじゃ~まず、お名前と年齢、ご職業からお願いしますね。」

 俺は巫山戯ながら質問する。

 「俺の名前は…って、なんだその質問!男のビデオの出だしかよ!」

 グランドは乗っかりそうになるが、途中で切り返す。

 「あ、こっちにもそういう文化はあるんだ。」

 俺は冗談だったことを説明する。

 「そりゃあ、そういうのが在る方が犯罪も減るし。専門の事務所もあるし。なんだったら、いつか案内してやろうか?」

 「マジでいいの?!って冗談はさておき、俺が一番気になっているのは、バンのことだ。」

 俺は話の本題に舵を切る。

 「なんだ?お前ああいう毒舌家の見下し系が好みなのか?」

 「ウィンド、それは違う!そういう話じゃなくて、なんであそこまでラフワール以外に嫌悪感を見せているのか。なんか見ていて母親が取られるのをごねている子供みたいに見えて、それでいながら彼氏に依存している少女にも見えて、異様に思っていた。」

 「なんだ、そういうことか。」

 「バンは、ラフワール様が始めてご自身の手籠めになされた子だ。」

 「バンは、父親に乱暴されそうになっていた所をラフワール様に助けて貰って、その恩義もあるんだ。」

 ウィンドとグランドは交互に話していく。

 「で、バンの父親ってそんなにやばい奴だったのか?」

 「いや、俺達も知ってはいたが、元々は普通の貿易商だったんだけどな…」

 「どうもヤバい薬の密輸入に手を染めていたらしくて、自身でもそれを服用していたらしいんだ。」

 「なるほど、薬で脳内がイかれていたのか。」

 「そういうことだ。だから、バンにとってラフワール様は白馬の王子様で唯一の心の拠り所なんだ。」

 「なるほど、どうしようも無い奴は、何処の世界にもいるもんだな。」

 俺は改めてこの世界が俺の住んでいた世界に近いことを実感した。

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