影のある青年
交響祭も残すところ後三日になったある日、俺達が歩いていると、ルストと誰かが話しているのが見える。話の相手は俺より少し若い程度か?
「そろそろ準備はできましたか?」
「君の要望に答えるのはかなり苦労したけど、この詩と楽譜なら満足の行くものになると思うよ。」
男はルストから何枚かの紙の束を渡される。話からして、歌詞カードと楽譜か。大事な勝負を全部他人任せとは、こいつに勝つ気はあるのか?
「では、俺はこれで失礼するよ。俺も忙しいからな。」
ルストは男の前から去っていく。
「これさえあれば、あの人を、僕のものに…」
男はほくそ笑んでいる。何を考えているのかわからないが、話してみないことには始まらないか。
「ちょっと悪い。あんたも交響祭の参加者?」
「あなたは、噂の救世主ですか。」
男はルストにしていたときと同じ口調で話す。
「そ。それで、あんたの名前は?」
「僕ですか?シンラって言います。」
男、シンラは自己紹介をしてくれた。
「そうか。それでシンラに聞きたいけど、ルストが交響祭に参加することは知っているのか?」
「知っていますよ。それに、この祭の裏側も。」
シンラは素っ気無い態度で答えるが、自分がどれだけ重大なことを言っているのか、理解しているのか?
「じゃあ、最初から裏で悪事をしている奴から絶対に勝たせてもらえるように歌詞から何から全部用意してもらったんか。」
「そうですよ。この国の住民として残るって言ってね。」
「なんとしても結婚したい相手なんだろ?それなのになんでそんなことができるんだ?」
「馬鹿ですか?そんなの、最初から守るわけないじゃないですか。僕のほうが最初にあの人を好きになったんだ。ぽっと出の幼馴染が付き合っていい人じゃない。」
なんだ、このシンラって奴。ストーカー気質の持ち主か?
「つまり、勝ったらそのまま約束を破って国外へ逃亡するってことか。」
「ええ。こんなのに参加するゴミ達にあの人は渡さない。僕があの人を守るんだ。」
「姫巫女をゴミから守るためにそのゴミ達の中に入っていったら意味ないんじゃないか?」
「僕は違う。僕はあいつらから守る側。奪おうとする奴らとは違う。」
こりゃ、関わり合いにならないほうがいいな。
「そうかい。なら頑張れよ。」
流石にあいつの話を長々聞いていたら、俺達のほうがおかしくなっちまう。ここはすぐに離れるとしよう。
「…ってことがあったんだよ、シュク。お前はシンラって奴を知っているか?」
俺達はあの後すぐにシュクのところへ行き、今日の出来事を離す。
「それ、本当か⁉シンラは以前、つきまとい行為で逮捕されたことがある奴だ!よりにもよって、交響祭の制度を利用するなんて。」
これ、思った以上に厄介なことに巻き込まれていないか?




