そろそろみんなを集めないと
俺達は近くの原っぱで寝転がっていた。
「それにしても、ホントにコイツらのほっぺたは柔らかいなぁ。」
俺はマフルのほっぺたをムニムニしている。
「だよな!それにこの幸せそうな顔!」
フリルの言うようにマフルはもっとやれと言わんばかりに幸せそうな顔をしていた。
「それからこれな!」
俺はマフルの喉を撫でる。当然、マフルは機嫌が良さそうにゴロゴロと喉を鳴らす。
「そうそう!マフル様は全ての行動が最高に可愛いんだよな!」
「それな!コイツらは遊んでもらっていると上機嫌になるからな。」
俺はマフルの肩を持って振動させるように揺さぶる。
「にゃわわわわわ!」
マフルは初めてのことにビックリしている。
「おい!マフル様に何をする!」
「ほら、ちゃんと見ていろ。」
俺は揺さぶるのをピタッと止める。最初こそマフルは何が起きたか解らず、キョロキョロしていたが、直ぐに他のマフル達もやってもらいたそうに俺を見る。
「ほらな。コイツらは遊んでもらっていると思っているんだ。」
「おお~。俺の知らないことまで知っているとは、やるな。」
「だろ~。」
俺は子マフルの首の皮を持って緩やかに揺れる振り子みたいに揺らしてやり、子マフルは安心しきって眠ってしまう。それを見た親マフルは眠った子マフルを咥えて去ってしまう。
「うん、これは本当の救世主だって認めてやるべきだな。マフル様が好きな奴に悪い奴はいないしな。」
フリルはなんとか納得してくれたみたいだけど、
「そろそろみんなを集めないとな。」
俺は立ち上がる。
「んぉ?どしたん?」
フリルは不思議そうな顔で俺を見つめる。
「フルールとラフワールは俺をウェステリアから連れ出すためにここに来ただろ?てことは、イースティアの局長とサーティアスの覇王、そしてウェステリアの国王が集まっている状況なんだ。なら、さっさと会談を開かせてどういう方針で国を纏めるか決めようって思ったんだ。」
「はぁ?そんなん、ウェステリアに全て統合させるってお前が言えば終わる話だろ。」
「そんな簡単な話な訳無いだろ。第一、救世主が肩入れしたから全て決定しましたって不公平だろ。もしそんなことが罷り通るようになったら何処も彼処も見せかけの機嫌取りをするか、ウェステリアみたいに武力で脅して事を有利に運ぼうとするかになるだろ。それで出た答えで、みんな納得するか?」
「確かに、そう言われると嫌だな。」
「それに、三ヶ国とも国家体制が全然違うんだ。その意見をかみ合わせないと理解し合えなくてまた内紛が起きる。だから俺は会議の場を作るのと、意見を纏めることはする。ただ、必要な会議は三人でやってもらうことにした。」
俺はすぐにフルールとラフワール、そしてグラッドに連絡を取り、国境にある国立科学局跡地に集めた。
集まってもらったはいいけど、いや、良くないか。グラッドはフルールの顔を見るなり、
「よぉ局長さん。この間はよくも国境の壁をホーンワームで破壊してくれたな。まずはあれの修繕費用を払ってもらおうか?」
この調子だもんな。まあ、グラッドの言い分も解らないわけじゃないんだけど、その原因が自分たちが仕掛けた武力での脅迫による救世主誘拐がきっかけの所為で説得力が皆無どころか斜め下に埋もれていくだけだし、何より、
「あら?そんな戯言を言っていいなら救世主誘拐の時の空爆の件、複数の商業施設の立て直し費用をウェステリアに請求するわよ?」
ラフワールが話の腰を折るんだよな。
「お~い、話が逸れてないか?」
俺はなんとか軌道修正を計ろうとする。
「あら、失礼。それで、何の話だったかしら?」
ぜってぇ覚えているだろ。
「まずはそれぞれが保有する国営施設、商業施設、工場、農業地帯の種類と保有数の話だ。施設の保有状況で国家の財政も見えてくるだろうし、統一した際の中心にする国家の指標の一つにしたいんだ。」
俺の話を聞いて、各国家は電子レポートで纏めていたものを俺に渡す。案の定ウェステリアは農業地帯が数多くあり、工場も食品加工工場を建てて他国に輸出しているようで、サーティアスも輸出先の一つのようだ。他にも国土に合わせた数の警察署に消防署、病院とバランスは整っているな。ただ、役所が少ないのは不安点か。それに対してサーティアスは国家の大部分を商業施設にしているみたいだ。まあ、経済を効率よく回転させてそれを軍事費用に転換しているみたいだな。警察署の数は少ないが、その分病院と消防署に重きを置いているのは火災発生時の対策といった所か。まあ、ここまでは想定の範囲内だ。問題はイースティアだ。明らかに警察署と役所の数が多い。それに国立図書館の数も多い。まさかここまで国営施設が多いとは思わなかった。これは、思った以上に前途多難だな。