第90話 私、元の次元に戻る
いきなりの訪問での図々しい願いであるが、晶露様はともかく私にとっては切実な願いである。
またここに来る許可が下りたのも、異能の補強であるから、できれば叶えてもらいたいものである。
表向きはあくまでロウのであるがな!
ロウを見るに、祈らずとも、レベルアップしそうであるので、放っておく。
ロウにも祈りの言葉を覚えさせたのであるがな!
私と晶露様は存分に、祈りを捧げた後、立ち上がる。
そうして、上着を脱ぎ、日本の巫女が纏うことが多い舞衣の上だけを身につける。
これは本家にお願いして、作ってもらったものである。
本家には衣装を作る専門家もいるらしく、若君に相談したところ、私と晶露様の身体に合わせて作ってもらったのである。
こうして人払いしてもらえるとわかっていれば、上着だけでなく、全部を総着替えしたかった。
今更である。
「晶露様、よいですか?」
「はい」
私たち2人はこの日の為にみっちり、神に捧げる剣舞を練習してきたのである。
もちろん元ネタは私の前世の知識である。
この日本にある巫女舞のようなものが踊れればよかったのであるが、あいにく私の前世は男子であった。
男子の私にできるのは、剣舞ぐらいである。
しかし、この世界において、幼児が剣を持つことはできない。
その為本家の子分の松也さんにお願いして、子供用の木刀を用意してもらった。
私たちは木刀を左手に持ち、ゆりのきに一礼をする。
「これより、剣舞を捧げます」
周りに観光客などがいたら、できないかと思っていたが、人払いされているなら、練習の成果を存分に発揮できようものである。
私が知るのは優雅な舞ではない、剣舞。
前世で幼少の時、神殿に捧げるのに、覚えさせられた事があるもの。
それを晶露様にも教えたのである。
私と晶露様は木刀を剣に見立てて、舞った。
この地を守護してくれていることを、私たちを歓迎してくれていることに感謝をこめて。
まだ6歳と、4歳の身体である。
おまけに私は前世と全然違う作りの身体、なにせ、男から女になっているから、勝手が違う。
それでも覚えている限りの舞を丁寧に舞った。
それは時間にして5分もないものだ。それでも精一杯気持ちを込めた。
これからもよしなに、の気持ちもちょこっと込めた。これくらいの欲はいいだろう。
最後に一礼して舞を終える。
そして私たちは、「「はあ」」と大きく息をついた。
なかなかうまく舞えたと思う。
優雅ではない、無骨な男舞である。
でも気持ちが伝わったと思う。
そして私たちはお互いを称え合った。
「晶露様、素晴らしかったです」
「ねえさまも、すごくかっこうよかったです!」
がんばって練習したからね。
自画自賛の体であるが、いいだろう。
「すげえよかったぞ!」
飛んできたロウが晶露様の頭に乗って、飛び跳ねている。
ロウ、君も加わる筈だったのであるぞ?
すっかり忘れているみたいであるな。
その身の通り、鳥頭か?
そのお小言を言ってもしょうがない。もう舞は終わってしまったからな、代わりにため息1つで流す。
「さあ、祭壇を片付けてしまいましょうか?」
「はい」
そう言ったところで、ゆりのきの巨木からきらめく光が私たちの上に降り注いだ。
「ゆりのきからの祝福だな!」
ロウがはしゃいだ声をあげる!
「わあああああ!ねえさま、きれいです!」
晶露様も目を輝かせて見上げている。
「そうですね。ありがたいことです」
どうやら私たちの舞は気に入ってもらえたようである。
私たちの祈りは、ゆりのきの巨木の力にもなるのである。微々たるものであろうがな。
つまりは、ウインウインなのである。
そうしているうちに、私たちの周りに音が戻ってきた。
どうやら、人払いは解かれたようである。
私はそこではっと気づいた!
おお!ゆりのきから無事に祝福を受けられた!
ということはだ!上質な良気をたんと身体に受けたことになる!
問題はである!
さあ!私の力は増幅されたのであるか否か!である!
ゆりのきの祝福で、身体が温かくなったのは確かである!
しかしそれが力の増幅、あるいは何か新たにできるようになったのであるか否か!
ここですぐに自身の微少な力と練り込みたい。
が、できない!
周りには人がいる!
いますぐには無理か。
がっくりである。
しかしまだ時間はある!少し離れたところで、試すのだ!
結界外でもゆりのきの巨木からの清浄なる気はある。
それをもまとめて、力にするぞ!
さあ、やらねば!
楽しみである!
いつもお読みいただきありがとうございます!
少しでもおもしろいっと思っていただけましたら、ブクマ、評価をどうかよろしくお願い致します。
励みになります~。




