第82話 私、プレゼン終えて、若君の返事を待つ
私は、力説をした。
渾身のプレゼンである。
聞き終えて、若君が私の話を黙考しておられる。
お願いだ。許可を。
どうか、どうか!
私と晶露様はじっと若君を見つめる。
何分経ったのか。
やっと若君が口を開いた。
「雛鳥の新たな力の開発か」
「はい」
「それが晶露の力になると?」
「はい」
「こやつは先だってまで、晶露に不利益なことしか、してこなかったが?それが役立つ存在になるのか?」
ぐう!
それを指摘されると辛い。
が、負けぬ!
「ロウはこの短期間で、日本語を習得し、かつ日夜人間について学んでおります。そして何より晶露様を第一にと考えております。若君、是非とも名誉挽回をする力を得る為の機会をください」
「ふん」
若君は面白くなさそうに鼻を鳴らした。
これはだめか?だめなのか?
「にいさま、おねがいします」
晶露様がたまらずというように、懇願した。
若君は晶露様を見て、一つ小さな息をついてから呟いた。
「よかろう。やってみせろ」
「ありがとうございます!」
やった!やりきった!私は万感の思いで胸が熱くなった。
それに冷や水を浴びせたのは若君である。
「しかし、大海が行く必要があるか?」
敢えて私の同行の有意を出さなかったのがいけなかったか、若君からそんな言葉が飛び出した
なに!?ある!大ありなのである!むしろ私がメインであるのだからな!
ここから巻き返しを計る必要があるか?
「私も同行すれば、ロウへアドバイスができるかと存じます」
私は両手を組んで、目を瞑り、天井に顔を向けた。
どうであるか!天からの声を聞く乙女のようであろう!
私がちらりと目を開いて、若君を見る。
何であるか!その疑わしそうな目は!
心外である!
「にいさま!わたしもねえさまがいてくれたほうがこころづよいです!」
晶露様からそんなプッシュのお言葉が!ありがとう!晶露様!
「ああ、わかったわかった。おまけ1人ついたとて、たいした違いはなさそうだかな。晶露がそういうなら、ついていけ」
私はおまけではない!しかしここで口答えして、同行許可が撤回されても困る。
私は口を閉じる。ぐぬぬ。若君め!
「新宿御苑か」
私たちが選定したパワースポットを、若様が呟く。
そう、私たちが第一の目的地に定めたのは、天子の庭園である。
そこにあるシンボルツリーとされるゆりのきの巨木。そこがパワースポットである。
前世での世界樹までの力はないであろうが、インターネットで調べた感じからすると立派な巨木で、大地からの力を十分に蓄えていそうである。
その力を私にほんの少し分けて欲しいのである。
若君は最後に、こう質問を投げかけた。
「パワースポットへ向うの目的は理解した。しかしそれはそなたの独自の考えか?それとも、うちからの声か?」
私は即座に答えた。
「パワースポットなる場所の情報を聞いた時に、即座に行くべき場所と頭に浮かびました」
嘘はついてはいない。
私の前世の記憶から導き出した仮説であれば、内なる声からなるものと言えるであろう!
前世の友の声が聞こえる。
それは拡大解釈すぎるだろうと。
それで窮地に陥ったことが何度あったか忘れたかと。
なんの。これは窮地に陥りようがない。
友よ。心配するな。
私は力強く生きていく。
私は目に力を込めて若君を見つめた。
すると、しばしの沈黙のあと、若君が頷いてくれた。
「当主には私から話しておく。時期については追って知らせる」
「お願い致します!」
私は勝利の雄叫びを上げたくなったが、ぐっと我慢して一礼するにとどめた。
が、若君が退出された後、晶露さまとハイタッチをしたのは言うまでもない。
私はやりきったのである!
が、私はうれしさのあまり、若君の一言を聞き逃していたのである。
そう、さりげなく付け加えられた最後の一言が、最重要項目であったのだ!
大海、やはり詰めが甘かった。




