第56話 私、本家の提案を更に聞く
取り決め事はまだある。
筆頭許嫁候補しての若君との交流であるが、当分の間特別な対応はなしとのことである。
理由としては、私が弟君の晶露様と行動を共にすることが多くなると考えられる為、何かせずとも、若君との交流が持てるだろうとのこと。
これは少なからず、安堵のため息が漏れた。
うん。それについては私に意義なし!大変結構なことである。
本音としては、これ以上拘束されてたまるか!である。
できればである!
他の許嫁候補との交流もできればなしにしたい。
若君を交えた他の許嫁候補とのお茶会とかあった日には、絶対にいびられるだろう。
それはぜひ避けたい。
いじめられると心が折れるから?違うのである!
私はそんな柔な精神はしていないのである!
単に面倒だからである!
私を目の敵にしているお嬢様方と建設的なお話ができるとは思えないのである。
ならば、時間の無駄でもある。
筆頭の立場も私と同様今だけであると、他の許嫁候補のお嬢様方にも思っていただきたいのである。
繰り返しになるが、私の希望は、居たのって?くらい影薄くして、許嫁候補としては忘れられ、フェードアウトしたいのであるからな。
せっかく前世と違い、限りなく平民に生まれたのだから、貴族のような義務などに縛られたくはないのである。
大事な事なので、今一度言おう!
私は自由に自分の好奇心の赴くままに暮らしたいのである。
弟君、晶露様も少し落ち着かれたら、私からも離れていくだろう。
そうなれば、私の願いも叶う筈である。
長々と自身の希望を書き連ねた。
黙って見守ってくれた諸君には感謝の意をここに記しておこう。
本家からの提案は以上である。
我々にとって大変メリットの大きいものではある。
東京本社勤務、即ち栄転である。
私にはデメリットのほうが大きい。
最大のデメリットは幼稚園の友、ネイちゃんとの別れである。
今からそれを考えると涙が出そうである。
しかし今は泣く時ではない。
メリットデメリットを含め、私の生活環境はがらりと変わってしまう。
幸いなのは、長い目でみれば、それは私にとってはプラスになるだろうと予測できることか。
本家の生業も話だけでなく、直に知ることができるし、蔵書もたくさんありそうである。
それに私立の学校、きっと給食なるものも美味に違いない!学年が上がれば、学食なる場もあるやもしれぬ!
楽しみ以外の何物でもなかろう!
一時、自由度は極端に減るのが辛いが、仕方なかろう。
端から見たら、両親には栄転、私は本家覚えめでたきで、将来前途洋々と見えるだろう。
妬みもありそうである。
いや、確率的にはかなり低めだが、ない可能性もあるか?
なにせ、分家序列最下位の灰咲家である。妬む価値もないと思ってくれれば幸いである。
「そなたに話す事は以上だ」
前当主は話し終えた後、私が理解する間をとってくれていたようであるが、それも今の言葉で終わりを告げた。
またその短い言葉の裏に、これ以上面倒をかけるなとのニュアンスを感じ取る。
ほんとにどこまでも上からである。
人の人生を思い切り変化させておいて、なんの罪悪感も感じていないようである。
得てして権力者とはそのような者である。
わかっているのである。
これが年齢通り5歳の幼児であれば、一言も意見なかろう。
私は違うのである!
提案には従う!
しかし、条件をつけさせてもらう!
私のメリットをもっと増やすのだ!
私は幼稚園の友、ネイちゃんとの別れてこちらに来るのであるからな!
言い方を考える。要望とわがままは違うのある。
相手を納得させ、かつ私の利益になるものを希望するのだ!
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