第163話 私、揚々とした気分で若君を訪ねる
「はあ。やれやれ」
ピクニックがてら本家近隣のパワースポットへ向かったら、一族の不可抗力不手際案件に巻き込まれてしまった。
が。なんとか無事に事を収めることができたのである。
これは重畳であろう。
また、禍転じて福と成すであろうか、清めの儀式の打ち合わせの場において、細井川の術式陣、ひいては金の魚を含めての調査を、本家ご当主自ら許可をしてくれたのである!
ここ重要なので、もう一度言おう!ご当主自らの許可が、下りたのである!
これで私を、止められるものはいまい!
え?水音家から調査の応援要員が、来ることを忘れてないか?との諸君らの声が聞こえた気がする。
もちろん忘れてはいない!しかしそれは、些末なことである!
なにせ、調査許可イコール外出解禁続行を、意味するのであるからな!
ふはははは!
私はその気持ちの高ぶりのまま、清めの儀式が終わった、翌日曜日。
足取りも軽く、若君のお部屋へと向かった。
ノックをすると、三弥さんがドアを開けてくれた。
用向きを告げると、晶露様の部屋で待つように言われる。
待ちますとも!
ああ、いけない。いつもなら、本家子分の松也さんに先触れを頼むところ、直接来てしまった。
私、余程浮かれていたに違いない。
気を引き締めねば!
ふははは!
そうして待つことしばし。若君が、晶露様のお部屋にいらっしゃった。
「ようこそおいでくださいました!」
私は満面の笑みで出迎える。
そして、若君がソファに座ると、早速口を開く。
「先程は失礼致しました。つい気持ちが先に出てしまい、直接若君の部屋へと参ってしまいました」
私はそこで頭を下げる。
「昨日に引き続き、若君にお会いできましたこと、恐悦至極に存じます!」
私は、定型の挨拶をする。
ソファに座っていなければ、片膝をついての礼をしたいところである。
「挨拶はいい。本題に入れ。俺は忙しい」
若君が、いやそうに、むっすりと告げる。
「はは。かしこまりまして!」
若君の不機嫌など、今の私には、まったく堪えないのである!
なんと言っても、今からお願いすることは、断られることはないのであるからな!
「はい!では早速!本日は無理でございますが、来週の土日に、細井川の調査を始めたいと存じます。つきましてはその許可をいただきたく!」
これは形式上のお伺いである。だって、私は、本家当主、明臣様に許可をすでにいただいているのであるからな!
なのにである。
「何を言っている?外出は当面禁止だ」
若君様からの禁止令に、
「へ?」
と、思わず変な声が漏れた。
なぜであるか!
「当然だろう。晶露を危険に合わせたのであるからな」
「そ、それはそうでありますが!私は、直接、ご当主様から調査の許可を頂いております!」
忘れてもらっては困る!若君!
君の上から許可をもらっているのである!
その場に、君はいたであろう!
「当主は調査の時期までは言及されていなかった。ならば、その調査時期に対する許可は、私が判断する」
「そんな!」
目の前に褒美をぶら下げておいて、お預けするなんてひどいのである!!
「し、しかし!細井川の術式陣については、すぐにでも調査をした方がいいのではないでしょうか!!」
で、ある筈である!
「無論調査は早急に行う。考えてみろ。あの術式陣や金の魚等についての調査、そなたたちだけだと思っていたか?一族に関わる調査だぞ。当然お前たち以外の一族の者も、調査するに決まっている」
であるか!であるよな!ちょっと考えればわかったことである!
私は、がっくりと肩を落とした。
「ねえさま」
横に座る晶露様が、ぎゅっと手を握ってくれる。
慰め、ありがとう。
私の落胆が、あまりにもひどかったからか、若君が少し考えて、口を開いた。
「晶露はお前に従ったまでで、浚われたのは不可抗力だからな。お前の家への晶露の宿泊は、そのまま許可する」
「ありがとうございます!あにうえ!」
晶露様が嬉しそうに、そう返事をする。
「それだけですか!」
私はがばりと、顔を上げた。
「それだけでも十分だろう。晶露と土日も一緒にいられるのだ」
それは嬉しいですけれども!
「私!清めの儀式の打ち合わせの場でも、頑張りました!」
そうだ!水音家と土出家の連携させるのに、貢献したのである!
少しは私も、うまみが欲しいのである!
「それは金の魚に拐かされた失敗を帳消しにする働きだろう」
「そんな!」
「俺が許可するまで、外出は禁止だ。例え近隣でもな」
「そんなあ!」
今回私と晶露様が飛ばされたのは、不可抗力であったのに!!
元はといえば、一族の不手際が招いたことだったのに!!
また外出禁止であるか!?
納得できない!!
断固抗議する!!
大海、またも外出禁止を食らいましたw
そしてここで大きな一区切りになります。
ストックもなくなりました。
また少しお時間を頂きます。
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