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第152話 私、若君に願い事を話す

 聞き届けられるかはともかく、言うことが重要である。

 言わなければ、始まらないからな。

「なぜコワタミ様と我が一族との契約が不履行になったかはわかりました。今後の対応については、ご当主様や若君とで、お決めなさるのでしょう。お知らせありがとうございました」

「にいさま、ありがとうございました」

 私と晶露様が、頭を下げる。

「ああ」

 若君!私はともかく、晶露様には、もう少し言い方があるのではなかろうか!?

 もう!本当に不器用な方である。

 こんこんと問い詰めたいところであるが、私は、そのような立場にないからなあ。

 また思考がずれた。いけない、いけない。

「あの、この案件に対して、私から1つお願いがあるのですが、申し上げてよろしいでしょうか?」

「言ってみろ」

 うんうん。若君のよいところは、ちゃんと話をきいてくれるところである。

「ありがとうございます。実は1つ気にかかることがございまして。それはあの洞窟のご遺体を、警察に引き渡された後のことなのです」

「ほう。よく警察と連携していたとわかったな」

「それはわかります。もし、魂の浄化した後、ご遺体の処置をするなら、地元の警察に頼まなければならないでしょう。そうしなければ、法律違反になってしまいますから。おそらく定期的に地元の警察に引き渡していたんでしょう」

 一体だけならまだしも、複数体ならば、どうしたって、警察と連携が必要になろう。

「そうだ。自室に残っていた当主の手帳から、地元の警察と連絡を取っていたのがわかった」

 手帳に書き残していたのか。

「迂闊ですね」

「コワタミ様との契約については書かれていなかった。我らとて、お前から聞いてなければ、手帳を見ただけでは、判断できなかっただろう」

「なるほど」

 書き方に工夫をしていたのであるな。であるなら、不幸中に幸いか。

 かの地の水音家総代も、自身の頭のだけに、コワタミ様との約定を抱えているのは、不安であったのかもしれない。ふむ。その手帳、見てみたいのである。

 いや、見ぬが花かもしれない。

 むやみにその家の秘密を知るのは、危険である。

 私は(わきま)えているのである。

 ここで諸君は、疑問に思うかもしれない。

 遺体の処理を警察に任せるって、殺人犯として疑われなかったのかって?

 ふふふ。そこはそれ。我らが一族旧家であり、良くも悪くもお上とは昔からの繋がりがある筈である。

 ズブズブな関係とまでは行っていないことを、願いたいところであるが。

 コワタミ様とのお役目の代替わりの際に、ちゃんと引き継ぎをしているのだろう。

 警察としても、行方不明者の発見の一助は、ありがたいのであろうからな。

 持ちつ持たれつ、である。世の中、法律だけでは割り切れない事象が、わんさかあるのであるからな。

 だからこそ、我が一族の生業が廃業にならないのだろう。

「すでに、地元警察には連絡済みだ。そして代替わりしたあの地の水音家総代にもな」

「それでは一両日中には、かの洞窟は元の静かな姿に戻ると」

「であるな」

「しかし、それは表面上だけでありましょう」

 さて、ここからが私の願いに絡んでくる。

 かの洞窟内にあったご遺体、事故、自殺、他殺、どれにしても海で亡くなった人間のものであろう。

 どのケースにせよ、通常の亡くなり方ではない。

 その為、その者の念が、海に残りやすい。

 その念は、やがて意思を失い、(けが)れとなる。

 それをコワタミ様、は嫌うのであろう。

 ならば、我らは契約不履行の埋め合わせとして。

「あの洞窟にて、我ら一族の者で、地の清めの儀式を行ったほうがよいと具申致します」

 そう。契約不履行の間に浸透してしまった汚れを除く為に。

 ぜひとも必要であろう。

 これが私の願いである。

 


大海の願いは、自分の欲望からのものではありませんでした。

いつもお読みいただきありがとうございます!

少しでもおもしろいっと思っていただけましたら、ブクマ、評価をどうかよろしくお願い致します。

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