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第12話 強さとは何?

「乱れ撃ち!」


「アクセルスナイパー!」




術力を温存するためにカナが弓矢を使う。


全く狙いをつけているとは思えないほどの高速射撃だが、次々とインプやガーゴイルにヒットした。



続いて、アリス姫の放つ細剣による攻撃が、ガーゴイルの胴体を打ち抜いた。


元々、素早く正確な攻撃をするアリス姫だが、今の攻撃はいつも以上に早かった。



だがしかし、カナの攻撃もアリス姫の攻撃も、ガーゴイルにはあまり効いていないようだった。





全員が全員、今までより戦えている。




にも関わらず、トウマ達は再び手詰まりに陥っていた。



********



「マズイね」


ガーゴイルの攻撃を受け流しながら、肩で息をするユウリを流し見て、トウマの焦りはかなり募っていた。


先ほどから、ガーゴイルの攻撃を避け続けるトウマだったが、ガーゴイルもバカではなく、時々、ガーゴイルの視界に入ったトウマ以外も攻撃するようになってしまった。


トウマほどの回避能力がないほかの人たちは、ガーゴイルの一撃で一気に大ダメージを受けてしまし、その度にカナの回復魔法を受けることになる。


ユウリの槍技も、高速移動高速攻撃を伴うため、そう何発も打てる類の技ではなかった。


持続力のないトウマたちは、できれば短期決戦で終わらせたいのだが、所詮、村人であるトウマ達が、そう簡単に強敵をホイホイ倒せるほど、世の中は甘くないようだ。


このままじゃジリ貧どころか、ユウリやカナが力を使い果たした時点で、やられてしまう。







悩んだ末に、トウマが下した決断は撤退だった。



「みんな、一度、下がるよ。」


ユウリが、「まだやれるっ」っと叫んでいるが、強がりなのは明白だ。


「勘違いするなって。 あいつを倒すのは僕たちだ。 ただ、ちょっとあそこで暇そうになってきたお兄さんに手伝ってもらうよ。」




********


諦めの悪いユウリに、「じゃあ、置いていくよ。」とトウマが冷たく言い放ちながら後退すると、ユウリも渋々ながらも素早く撤退を開始した。


ガーゴイルは、突然の展開に判断がつかないのか、追いかけてはこなかった。


というより、指揮官という割には、いまいち頭の方が足りていないのかもしれない。


隊列を組んで攻め上がるというとこまでは、いままでのモンスターにはあまり見られなかった傾向だが、いざ戦闘になってみると、付け焼刃というか、誰かの指示の受け売りでしか無いように思えてきた。


あいつ自身の指揮官としての資質の低さは、目の前の事態の収拾のためには助かる話だが、その後ろに黒幕がいるのかと思うと、楽観視できることでは無い。


これから、モンスターの在り方が変わるかもしれないと思うと、頭の痛い話だが、トウマはひとまず目の前の事態に集中することにした。







トウマ達は、トイがいるところまで撤退すると、トイがアリス姫に声をかけた。


「アリス姫、どうしました? ご無事でしたか?」


心配する声には、意外なことに、あまり真剣味がなかった。


トイの目から見て、急いで救援に行かなくても大丈夫だと思われている程度には、優勢だと思われていたらしい。


「大丈夫よ。それより、いくら指揮官とはいえども、随分と楽をしているんじゃない?」


さきほどの会議から思っていたのだが、アリス姫はトイに対して、ずいぶんと強気に発言する気がする。


アリス姫とトイの関係は、王女と王の部下という上下関係というよりも、トイの方が10歳以上は歳上のはずだが、歳の離れた妹と、それに逆らえないお兄ちゃんのようだ。


「最初は、敵の多さに面倒な戦いになりそうだと思っていたのですが、これはお世辞ではなく、アリス様たちの健闘で、戦闘中のはずのインプがたびたび隊を乱してあの指揮官の方へと救援に向かうため、思った以上に優勢に進んでおります。


それよりも、せっかくそちらも優勢に戦っているように見受けられたのですが、撤退なさるとはどうなさいましたか?」


トイの疑問に、アリスの代わりにトウマが答える。


「確かに、作戦としては悪くなかったのですが、想像以上に頑丈な上にバカ力で、こちらの攻撃は通らないし、向こうの攻撃を喰らえばすぐに回復するしかなかったので、ジリ貧になる前に火力になる人物の力を借りにきました。」


「そういうことでしたら、助太刀いたします。


こちらは、トウマさんたちのお蔭で、特に問題はなさそうなので、もう指揮をとらなくても十分でしょう。


念のため、アリス様には私の代わりにここに残って指揮を取ってください。」




わずかな沈黙のあと、


「遠回しに、サルでもできる仕事を、近くにいるとうるさそうだからと厄介払いされた気がするのだけど?」


アリスが全く目が笑っていない笑顔でトイに言うと、トイは、一瞬、驚愕の表情になり「いやいやいやいや、そ、そんなことないよ」と慌てて答えるが、アリスの目を逸らしながら言うトイのセリフには、信憑性が全くなかった。


そもそも、敬語が抜けて、素になっている時点で語るに落ちている。


彼が兵たちから慕われているのは、ただ真面目なだけではなく、こんな<近所のお兄ちゃん>風なところなのかもしれない。


それにしても、トイもそうだが、アリス姫も、最初のイメージからずいぶん印象が変わってきた。


「とにかく。


俺が参加するからには、百人力。


あんなガーゴイル、ちゃっちゃとやっつけるよ。」


早くアリスのそばから離れたい意図が見え隠れし、もはや嘘の笑顔すらなくなってジト目でトイを見るアリスからの追撃は、次のトイの提案によってかき消された。


「せっかくだから、この薬を飲んでくれ。」


トイは全員に薬を配り、トイに渡された薬を飲むと、さっきのガーゴイル戦で使った力が戻ってくるようだった。


「おぉ、これは凄い。あいつと戦う前の力が戻ってきたみたいだ。」


ユウリがそう言うと、


「そうだろ、そうだろ。これは使った技や術の力を回復させる薬だからね。


アルト様に念のためにって貰っておいたんだ。」


と、満面の笑みでピースしながら答えるトイに、<憎めないお調子者の近所のお兄ちゃん>だなと、自分の中の情報を書き加えるのだった。




********




トウマ達が会話をしている間に、自分のやるべきことに気が付いたのか、ガーゴイルがこちらに向かってきた。


アリス姫が抜け、トイが加わったトウマ達は陣形を組みなおした。



トイとトウマを前衛の中心に置き、左右にユウリとエリー、後方に一人だけカナという陣形になった。



ガーゴイルの攻撃は、なるべくトイとトウマが引き受けることになった。


トウマは、剣だけではなく、今回は盾も装備している。


たまたま近くにいた兵士から、「それ、貸してくれ」と、トイが笑えるくらい軽やかにかっぱらっていたものを使わせて貰っている。




結果として、ガーゴイル戦はあっけなく終結することになる。


トイは、高速連続攻撃である2段突きなど、槍技の中では基本的な技しか使わないが、同じ技でも、槍の扱いに対する熟練度の違いなのか、ユウリとは破壊力に雲泥の差があった。


ハヤトの大技も破壊力があったが、安定的な攻撃力だったらトイの方がハヤトより上かもしれない。


スピードはハヤテの方が圧倒的に早かったが、ダメージに対する耐性だったり、相手の攻撃に対するカウンター技とその破壊力だったりと、防御においての安定感もやはりトイの方に軍配が上がりそうだ。


トウマは、戦闘中にも関わらず、強さというものにおいても色々とあるのだと考えていた。


そんなトイも、アリス姫には、全く敵う気配がない。 そんなことが、ほんの少し可笑しくなった。










ガーゴイル戦において、相手の隙をついてさく裂したエリーのジャイアントスイングに、トイが腹を抱えて大笑いをし、戦闘が終わった後に、笑われたことに腹を立てたエリーがトイの背中から思いっきりドロップキックを喰らわせた事を追記しておこうと思う。

ガーゴイル戦 終結です。

ここから先は、しばらく会話パートになります。

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