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裏裁判のサロゲート -心理戦ゲーム小説-  作者: 二兎追うものは三兎どころか5兎くらい得るよ
第一章『エレメンタル・カード ~光と闇の交錯~』
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第9話

「勝負が成立しました。


夏井様、『水』カード。


布川様、『草』カード。


よって布川様の勝利となります。


ライフポイントとして配布しておりますチップ10枚の内、


夏井様は1枚の提出をお願いします」


ユカは2度目の負け。


これで残りライフポイントであるチップ枚数はユカが8枚で布川は10枚…


どう考えても"わざと負けに動いた結果"にしか見えない…


(からかって遊んでいる…?)


蜂須は胸中でそう言いながら横目で花桐を見る。


場面は移りカードゲームルームでも布川が胸中で言葉を紡ぐ。


(なんなんだコイツら…?)


布川はユカを睨みながら言葉を胸中で続ける。


ユカは緊張して怯えながらずっとゲームを続けている…。


(なんでわざと負ける…?


わざと時間を引き延ばせて嫌がらせ…?


だってこれは"引き分けで終わるゲーム"なんでしょっ…!?


ここで9回この小娘が負けた所で最後は引き分けにできるんでしょっ…!?


そうだとしたら悪趣味すぎんでしょっ…!)



また場面は移りトリビュナルの所有ビルのモニタールーム…


「こりゃあ最後まで見届けた場合…


"めちゃくちゃ価値のある時間だった"か


"ゴミクズな時間だった"か


パッカリ分かれそうだな……」


少し嬉しそうな表情でそう言いながら薊(あざみ)はモニターに映る花桐を見る。


「まぁでも…


残念ながら、お前だけに時間は割いてられないんだけどな…」


そう言って操作してモニターに映る画面を切り替える。


ジャペンで同日同時刻に行われている裏裁判は多い。


何も薊(あざみ)は花桐とユカの裏裁判だけを監視している訳ではない…


「白門智也(はくもんともや)…。こいつもまぁ多少は面白い奴だな」


ユカ達とは違う場所、違う内容、で行われている裏裁判。


そこに立つサロゲートの"白門智也(はくもんともや)"


『白いスーツ』『白いネクタイ』『白縁メガネ』…


髪の毛はさすがに白髪ではなく黒髪だが………


「別に強いサロゲートとかそう言う奴じゃない。


なんか変なんだよなぁこいつ…?


"異様にカードゲームにこだわる"


"カードゲームの勝率は高い"


"それ以外のゲームは可もなく不可もなく"


"カードゲームでも負ける時は普通に負ける"


"そもそも本人が勝利にこだわっていないような素振りをよく見せる"


こう言う所が変だから余計に目立つ…」


いま白門(はくもん)がやっている裏裁判に関する資料を手に取る薊(あざみ)。


そして白門智也(はくもんともや)の詳細ページを開き顔写真に笑顔でデコピンする。


「ま、でもやっぱりなぁ~~~…


白門……………お前は今は置いといて…」


すぐに薊(あざみ)は資料を閉じてモニターを操作してユカと花桐の裏裁判の映像へ切り替える。


「花桐なんだよなぁぁ~………。


さっきカッコつけて


『お前だけに時間割いてられない(キリッ)』


とか言っちゃったけどさぁ~~…


おもしれぇ~男なんだよなぁ~~…


お前なぁ~…」


と言いながらスナック菓子を口に入れコーラを飲む…




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




――ゲームが開始してから、


花桐の『謎のコール』…


いわゆる負けている前提で勝負を受けた『コール』は現在2回発言している。


1度目の『謎のコール』の後は結局勝負は5回流れた。


そして今回の2度目の『謎のコール』の後も同じように"5回"の勝負が流れた。


(本当に何をやってるのよ小僧と小娘は…?)


カードゲームルームの布川が怒りを通り越して呆れて疲れて胸中でそう言っている…。


そして再び開始される最大1分のカード選択時間。


布川は溜め息をつき適当にカードを選び三大寺に選択完了の意志を伝える。


ユカも同じように伝えカードオープン。


(はいはい。私の勝ち)


とムスっとした表情でカードを見る。


ユカが『炎』で布川が『水』。


そして質疑応答。


先攻は蜂須でユカに質疑応答する。


ユカは


「ギンちゃんなんですけどねっ…!!」


とキャラプレゼンを力説する中で


布川は勝利の合図である咳をする…


そして30秒で切り上げ質疑応答は交代。


花桐は最初の蜂須の真似のようにしゃべらない。


それにあわせて布川もしゃべらない…。


30秒で質疑応答は終了…。


「それでは、勝負の有無を決めるフェーズへ移ります。


今回は蜂須様に先にお聞きします。


それでは蜂須様、宣言をお願いします」


勝負に乗る場合は『コール』。


勝負を降りる場合は『フォールド』。


「コール…」


布川の咳があったため当然コールを宣言…


「では花桐様…」


「コール」


それを聞き蜂須と布川は溜め息をついた。


3度目の『謎のコール』


「勝負が成立しました。


夏井様、『炎』カード。


布川様、『水』カード。


よって布川様の勝利となります。


ライフポイントとして配布しておりますチップ10枚の内、


夏井様は1枚の提出をお願いします」


これでユカのライフポイントは残り7…。


(いつまで続ける…)


蜂須は横目で花桐を見ながら再び溜め息をつく…


(またここから5回の試合を『フォールド』で無効にして引き延ばして、


そしてわざと『コール』して負けて無意味にゲーム時間を引き延ばす気か…?)






…しかし、その蜂須の予測はハズれた






それは次の試合の"質疑応答"の時…






この"質疑応答"はつまり…


ユカと布川がこのフェーズでカードを選択し終えた後の話だ…






先攻は蜂須。


ユカに質疑応答している時間に布川の咳の声が聞こえる。


つまりカードの勝利は決まっていると言う事。


蜂須はユカの「ギンちゃんがですねっ!!」と言う聞き飽きたプレゼンを


さえぎるように質疑応答を終わらせる……。






「では後攻の花桐様、1分間の質疑応答をお願いします…」


三大寺の合図とともに花桐が口を開く。


「布川さん、ユカちゃんがさっきから言ってるゴンちゃんギンちゃんて知ってる…?」


「は…?」


「招き猫は語らないってアニメらしいんだけどさ俺知らなかったんだよ」


「なんの話してんのよ…?」


「でもね…」


…花桐はまるであたかも


"超絶わざとらしく"


かつ


"意味があるような言い方"


で


こう言った。






「俺は、ギ・ン・ちゃ・ん…!が好き…!」






「…!」


と小さく反応するユカ…




しかしそれより、


「…!?」


大きく眉をしかめるリアクションをする布川、


および、


「…」


沈黙ながらも何かに気付き鋭い視線を花桐に向ける蜂須…


(なんだ花桐…?ブラフか…?)


と少し焦るがすぐに冷静に戻る。


(いや、待て。ブラフだとしてなんだ?


なんで私はこんな事で心が1ミリでも乱された?


全くなんの問題もない…


だって私と布川さんのやる事は一貫して変わらない…)


布川の咳があれば『コール』。


布川の咳がなければ『フォールド』。


この絶対ルールがまず勝利はなくとも敗北をなくしてくれる…


(いくらセオリーからハズれた行動で錯乱しようとしても無駄だ花桐…)


と蜂須は自信に基づいた溜め息をつく…


「布川さんっ!ギンちゃんてねっ!」


と花桐がまるでユカのモノマネをするようにアニメオタク女子っぽくしゃべり出す。


「ギンちゃんてカッコイイんですっ!!!」


「んだよ小僧っ…!?気持ち悪いぞっ…!?」






「ギンちゃんてねっ…!!!」


…とそこまでユカのモノマネのように言って花桐は普段の声のトーンに戻し…






「"瀬戸塩(せとじお)のせんべい"と"キャラメルマキアート"が大好物らしいんですよ…」






「は…?」


「…!!?」


蜂須は少し動揺した表情を見せる…。






――トリビュナルの自社ビルのモニタールーム。


"瀬戸塩(せとじお)のせんべい"と"キャラメルマキアート"ではなく


"スナック菓子"と"コーラ"を飲んでいる薊(あざみ)がモニターに食いつく。


「おい花桐ぃ……


そんな意味深な言い方ばっかで周りを翻弄するんだったら


俺を楽しませてくれんだろうなぁ~…?」


と言いながらスナック菓子の袋を持ち中身すべてを口に流し込み、


残りのコーラも全て口に入れて流し込む…


そして腕で口を拭い興奮した様子でモニターに向き直る…




――花桐の番の質疑応答は終わった。


「それでは、勝負の有無を決めるフェーズへ移ります」


『コール』か『フォールド』の選択。


先攻で聞かれるのは蜂須だ…


いま一度整理すると布川は今の試合で"咳の合図"をしていた。


つまりカードは布川が勝っている。


だから蜂須にとって『コール』一択となる…




そして今までの経緯をまとめて言うと、



『花桐わざと負けるコール』


↓


そのあと5回の勝負不成立


↓


『花桐わざと負けるコール(※2回目)』


↓


そのあと5回の勝負不成立


↓


『花桐わざと負けるコール(※3回目)』


↓


※今ここ



などと言うふざけた状況だ…。



今まで通りなら花桐はここからまた5回の勝負不成立を成し遂げるため『フォールド』を宣言する。



「先攻の蜂須様。宣言をお願いします」


「コール…」


「それでは花桐様…」


「こぉるっ♪」


とアニメオタク女子が言うような自分なりの可愛い声で言う花桐…。






――トリビュナルの自社ビルのモニタールーム…


そこにいる薊蓮真(あざみれんま)…


および…


花桐がいるこのビルの同室にいる蜂須恭介(はちすきょうすけ)…






花桐がいま言ったふざけた「こぉるっ♪」と言う可愛い声に向けて、


2人は全く違う表情ながらも胸中にて同じセリフを吐いた…






(なんなんだコイツっ……!?)






薊(あざみ)は完全なるワクワクや楽しみ…


そして蜂須は困惑と少しの怒り…


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