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おしゃべりな森の長


 カイの安否を心配するアリ達の前で輝いていた光が徐々に小さくなっていくが、状況が掴めないでいる彼等はそのことにも気付かず、歯痒い思いでただ立ち尽くしていた。

 張り詰めた空気に突如、零れ日が差し込み鳥たちの声がレイノルド達を包み込むと、気づかぬ間に巨大なポウナム石は消え去っており、その変わり顔を両手で覆い肩を上下させるカイが突っ立ていた。

「カイっ!」

 レイノルドはカイの名を叫ぶと駆け寄り、アリもそんなレイノルドに続いた。

 名を呼ばれたカイは、泣き腫らした顔を上げるが、まるで魂を抜き取られたような状態で、フラッとその場で倒れそうになるのを慌ててレイノルドが支えた。

「カイっ! 大丈夫?」

 レイノルドの両腕に抱えられたカイは、虚ろな目をレイノルドとアリに向けると徐々に意識を現実に戻していく。

「レイ、アリ・・」

 覇気のない声で彼等の名を呼ぶカイは、その場に父親の姿が見当たらい事に再び胸が苦しくなると唇を嚙んだ。

「カイ、大丈夫? 何があったの?」

 レイノルドは、自分の力だけで身体を支えようとするカイの背をサポートしながら声を掛ける。カイを心配する結月達も光が消えたため辺りの安全をキョロキョロと確認しながら早足でカイの元へ駆け寄った。

「カイ、何がどうなってたの?」

「顔色が悪いわ。大丈夫?」

 結月と凜が困惑した形相で、血色の悪い顔で朦朧とした状態のカイに優しく声を掛けるが、カイからの反応が得られない事が二人を憂慮させる。そんな中、鼻の下を長く伸ばした壮星が、カイの様子を気遣う結月達の間に顔を突っ込んだ。

「なぁカイ、そこの美しい金髪美女は誰だぁ? 痛っ!」

 空気の読めない馬鹿な弟の顔に軽い平手を食らわせた結月だが、カイの背後に立つ美女の存在に気付くと心がざわめき表情が硬くなった。


 「そこの坊やは、よう分ってるわ」

 綺麗な声がその場に居る全員の鼓膜に届くと、カイの安否に意識を集中していたレイノルドとアリも、ようやく見知らぬ美女の登場に気付き二人同時に驚きの表情を露にした。

「何やその態度。ホンマに失礼やな」

 カイも聞き覚えのある声の持ち主に視覚の焦点を合わせるが、見覚えのない姿に不可解な面持ちを向ける。

「え? 誰ですか?」

「あんたなぁ~ もうええ加減にしいや」

 眉をひそめる女性の天辺から足元まで凝視したカイは、アッと口を開くとある考えが頭に浮かんだ。

「もしかして、ウルタプ?」

 ウルタプは、反応の遅いカイを睨み付けるとフンっとそっぽを向く。

「ごめん。だってさっきとは髪の色とか全然違うし、それにその恰好」

 自分の頭を掻きながら悪びれる事なく言い訳をするカイに対して、ウルタプは更にそっぽを向いた。

 カイが指摘したように髪色が金髪になっており目の色も青く、またこれらに加えて服装も先程の精霊の様な格好ではなく、Tシャツにショートパンツ、足元にはカジュアルなショートブーツを履いており、人と変わらぬ容姿をしていたのだ。

「ねぇねぇ、その美人さんは誰だよ~ カイだけずるいぞ。紹介しろ」

 先程、結月に顔を叩かれた壮星だが懲りずに緩んだ顔でウルタプに近寄ろうとするが、Tシャツの首根っこを結月に摑まれる。


「カイ、その人は知合い?」

 壮星の足止めをしながら問い掛けてきた結月に、どう答えたらいいか分からず少し無言になったカイにウルタプは鼻息を荒げると腕組をした。

「あ、え―と、こちらは・・・ ウルタプさん。俺もさっき会ったとこで良く知らないだよな」

 眉間にシワを寄せ仁王立ちするウルタブの顔色を窺いながら、皆に彼女を紹介しようとするカイのまどろっこしさに、ウルタブは大きな溜息をついた。

「まぁええわ」

「ウルタプちゃんって言うの? 初めまして、俺、カイの従弟で壮星。よろしく」

 零れ落ちそうなほどの笑顔で壮星は再びウルタプに近づこうとするが、凛に服の裾を掴まれると同時に結月に平手打ちをくらう。

「いって!」

「全く、あんたは」

「ウルタプさんってもしかして・・・」

 ある考えが脳裏に浮かんだ凜だが、質問を飲み込むと口元を手で押さえた。そんな凜をチラリと見た結月は一歩カイに近づくと真面目な表情を見せる。

「カイのポウナム石から放たれていた光に導かれてここまで来た。さっきまでそこにあった大きな光が消えて今そこにウルタプさんがいる。ってことは・・」

「あああああっ! ってことはウルタプちゃんが俺等を呼んでくれたってことっ!? 嬉しいなぁ~」

「壮星っ! 煩いっ!」

 話の腰を折られ、尚且つ自分の言いたかった事を先に告げられた結月は今まで以上に力を込めて空手チョップを壮星の脳天にくらわす。

「いって! 姉ちゃん、暴力反対!」

 騒がしい姉弟を横目に凜が意を決してウルタプと視線を合わせると口を開く。 

「ウルタプさん、そのピアス、もしかしてカイ君が探しているポウナム石?」

 凜に指摘されたウルタプは髪をかき上げると耳から下がる渦巻状のポウナム石を揺らした。

「私のポウナムはKORU。森を司るモノよ」

 突拍子もないウルタプの発言に掴み合っていた結月と壮星が同時に顔をウルタプに向ける。

「森を司るだなんて漫画の世界じゃないんだから。アハハハ」

 結月の言葉にウルタプの眉間にシワができる。

「姉ちゃん失礼だろ。あんなに綺麗なんだから、何にでもなれそうじゃん」

 ウルタプの眉間のシワが深くなる。

「アニメだったらエルフみたいね。素敵」

 眉間のシワに加えてウルタプの目尻がつり上がっていく。

「だなぁ。他のポウナム石も探す度にドワーフやゴブリンが出て来たりしてな」

 ウルタプの肩が震えはじめたころ、彼女の動揺にカイがやっと気づく。

「ウルタプっ! だめだよっ! 皆にちゃんと説明するか・・・ら」

「ええ加減にしぃやっ!」

 堪忍袋の緒が切れたウルタプはフワリと宙に浮くと強烈な光を放ち、その場にいる全員の視覚を奪いとった。


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